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おっさんの魔法少女学  作者: ツナミ
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おっさんと『生き物』

おっさんに魔法少女ネタはどうか? というコント寄りのアイデアです

それは休日の朝だった。

 閑静な住宅街にある二階建ての小さなアパート『枯葉荘』。その202号室の呼び出し鈴が何度もなり続けていた。


「はいはい出ます出ます……」


 寝ていた202号室の住人はいかにも寝起き気味な気だるそうな声を出し布団から抜ける

 住人は寝起きの為か出るのに手間取り玄関へとのろのろと歩く。呼び出し鈴を鳴らす客人はしびれを切らしたように何度も何度も呼び出し鈴をコンマ間隔で押し続ける。


「……チッ、煩いんじゃボケぇ!」


 何度もしつこく呼び出し鈴を鳴らされとうとう我慢の限界が来た202号室の住人は怒鳴りながら勢い良く扉を開けた。だが扉を開けた先には誰もいなかった。


「……もう。嫌がらせか? なんやねんこんな朝っぱらから」


 202号室の住人、浜本 仁志。年齢33歳。職業コンビニ店員。親戚のつてを頼って関西から上京してきた独身。


 朝早くの呼び出し鈴を質の悪いイタズラと判断した仁志は頭をかきぶつぶつと文句を言いながらドアを閉める。昨日は夜勤だったせいかあまり寝れずにいた仁志はもう一眠りしようと居間に戻り敷いてある布団に潜ろうとする。


 しかしその時、またもや仁志の部屋に呼び出し鈴が鳴り響き仁志は今度は脱兎の勢いで扉へ走り乱暴に扉を開けた。


「何や朝っぱらから! ええ加減にせぇコラぁ!」


 チンピラもかくやという剣幕で呼び出し鈴よりも大きな声で怒鳴り散らす仁志だが、その視線の先にはまたもや誰も居なかった。


「ああもう何やねん! 腹立つ!」


「全く乱暴だなぁ今回の資格者は。お陰で二度も扉にぶつかったじゃないか」


 仁志がまた扉を閉めようとしたその時だった。甲高い男とも女ともつかない声が扉の裏側から聞こえてきた。仁志は202号室から出て開けた扉の裏側を見るとそこには白い一頭身の何とも形容し難い『生き物』が若干つぶれながらも浮いていた。


「……何やこれ? ガキのおもちゃか?」


 仁志はその白い生き物を両手で掴み横に引っ張ったり揉んでみたり叩いたりする。その感触はマシュマロのように柔らかく弄る度に『ふみゅふみゅ』と独特な鳴き声を出した。


「乱暴にしないでよ。僕の肌は結構デリケートなんだよ」


「何やその類いの玩具か。イジッたらしゃべる奴。お前何やねん、どこのガキの玩具や?」


「僕の名前は『メビィ』。君にお願いがあって来たんだ」


「ホゥ、ようできとる玩具やんけ。寝ていいか?」


 仁志は眠気もあるがメビィと名乗る白い生き物を完全に玩具と勘違いする。そしてパッと手を離すとメビィは宙に浮く。


「全く、僕は宙を浮いていると言うのに驚かないんだね?」


「そのマシュマロみたいな側の中身にドローン的な何かが入っててそれで浮いてるんやろ? 最近の玩具はスゴいからな」


「夢があるのか現実的なのか分からないね……」


「もうええやろ。何か言いたいことあるならパッと言え。聞いたあと寝るから……」


「君には素質があるんだ。『魔法少女』になりうる素質が。だからなってくれないかな? 魔法少女に」


「……はぁ?」


 仁志は自分の耳を疑った。目の前の玩具のような生きメビィは『魔法少女』と言った。

 仁志は33歳の良い歳したおっさんである。それは仁志自身充分に分かっている事である。頭の先から足の指の先までどこからどう見ても《《少女》》では無い。それは誰の目を見ても明らかである。


「何やこの玩具壊れてるんか? それともこれしか言えへんのか? わしの何処をどう見たら少女に見えんねん! 何言うとるんじゃボケ」


「あれ、言ってる意味が分からないのかい? 魔法少女になってくれって言ったんだよ」


「言うてる事は分かるわアホ! 何で『少女』呼びやねん!」


「ああ、基本的に僕がお願いしてるのは『少女』が多いから総じて魔法少女と呼んでるんだ。同じ人間だから多少の誤差だよ」


「おっさんと少女じゃエライ違いやぞ……お前の方が夢もリアルもへったくれも無いやんけ」


「最近人手が減ってね、色々困ってるんだ。君なら歳も重ねてるし知恵もあるだろうから調度良いと思うんだ。魔法少女というのはね」


「うっさいわボケ! 近所のガキにでも話せ! わし眠いねんどっか行け!」


 睡魔に負け話を聞くのもめんどくさくなったのか仁志は説明途中ののメビィを叩き落とし扉を閉める。叩き落とされたメビィはその場に顔を起こし202号室の扉を見た。


「……この強引さは役立つと思うんだけどなぁ」


 メビィがそう呟くと気でも変わったのか仁志は扉を開きメビィを見下ろし再び持ち上げる。


「お、話を聞いてくれる気になったかい仁志……」


 だが仁志はメビィを掴んだままお尻を向けるとプゥという音と共に放屁した。


「ナッハッハッハ!」


 そして高笑いと共にメビィを乱雑に放り投げ再び扉を閉める。放屁がよほど強烈だったのかメビィは目を回しながらアパートの二階から落ちていった。


「……なぜこんな人間に素質が……」


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