第二章 第二話 裏切り
マッドの伝書鳩が戻ってきたのは、空が白々と明け始めた辺りのことだった。私はスノウの事が気がかりだったため、ほかの兵士が皆テントの中に入っていくのを眺めながら人目につかぬ木の陰に座りこんでいた。この村に来てほどなくしてマッドの命令で信頼の置ける偵察隊が出動したのを見ていた。その偵察隊がまだこの時間でも戻って来ていない。マッドはテントから時折顔を覗かせてはイライラした表情で何かをいいながらまたテントの中に戻っていくという動作を繰り返していた。
しばらくして、ようやく偵察隊が戻ってきた。私の傍で安心したのか、はたまた疲労困憊状態だったためかぐっすり眠りこけているスノウをたたき起こし、二人でテントの中に入って行った。
テント内は人の熱気で暖かく、その奥でマッドが偵察隊の報告を聞いていた。他の兵士は皆、その報告を一言も聞き逃すまいと耳を欹てていた。
報告によると、村人の半数は戦いで死に、もう半数は捕らえられて別の場所に移動させられたらしい。目の前の敵陣に囚われているのは、敵陣近くにあった村の長ともうひとり、別の男だという。移動させられた村人達は、ここより東側の、沼に囲まれた場所付近に建てられた粗末な小屋に閉じ込められているということだった。報告を終え、偵察隊がマッドの傍から離れたとき、シンがマッドに話し掛けた。
「今回の作戦は、もしや本国の政治に関わることなのですか?」
マッドはシン以外の人間に聞かれぬよう、シンにしか聞こえないくらいの小さな声で囁いた。
「そうだ。軍事の指揮官でもある本国のガーランド様の直々の命令も来ている。だが、このことはあくまでも内密にな。シン。」
私は二人の会話を良く聞こうと、マッドとシンの傍近くに置いてあった飲み水用の瓶に水を取りに行くフリをして二人に気づかれぬように耳を欹てていた。私の心の中で、言い知れぬ恐怖感が黒く重く圧し掛かってくるのが解った。この作戦の裏には何かある。私が不安を抑えきれずに居ると、マッドはテントの外に向かって合図した。作戦開始の前のミーティングをするらしい。
瓶から離れ、一番入り口に近い場所を陣取ると、他のチームの者達はすでに意気揚揚と説明を聞く体制を取っていた。マッドが言った。
「今夜、作戦を遂行する。第一部隊がまずは正面から囮として向かう。そして第二部隊、第三部隊、第四部隊、第五部隊はそれぞれ敵の領地を囲むように配置し、第一部隊が突入すると同時に第二部隊、第三部隊が敵をかく乱させ、残る第四、第五部隊は捕虜を救出する。第六部隊以降の部隊はそれぞれ分かれて第一部隊から第五部隊に入り援護する。ようするに、1チームの人数は、ここに来るまでの人数よりも3倍の人数にはなるということだ。捕虜奪還した後、第一部隊は即座に退却し、沼地にいる捕虜救出に向い、残りの部隊は援護する。以上だ。質問は?」
他の村から来た、見たこともない顔の男が手を上げた。
「おいおい。第一部隊だけが、沼地に行くのか?こっちよりもあっちの方が捕虜の人数が多いのは解っていることだろう?これでは失敗が目に見えているじゃないか。」
マッドは表情を変えずに言った。
「突入後、役目を終えた部隊はそれぞれ分散して第一部隊を援護しに沼地に向かって構わない。ただし、我々の判断としては、沼地には人数を少なくしての突入の方が、敵の目をくらませやすいだろうと言う結論を下した。」
これは罠のにおいがする。私は直勘でそう思った。きな臭いにおいがすることは、他の兵士達も感じ取ったらしい。なにか裏があるのではないかという思いが私の胸を締め付けた。マッドが続けた。
「とにかく、第四、第五部隊は、目の前の敵陣に囚われている政府官を救出することが先決だ。救出した後、これより10キロ離れた場所に止めてある車に要人を乗せて欲しい。後は車の運転手に任せるが良い。おそらく囚われているのは、本国の政府官のマキシム殿だろう。抜かりなく行動してくれ。ほかになにか質問は?」
別の男が手を上げた。
「沼地にはいったい何人くらいが捕まってるんだ?やつらは無事なのか?俺達は死体を運ぶつもりはないぜ。」
「沼地には約20名ほどが捕まっているとの情報が入っている。あの村自体はさほどの人数がいたわけではないからな。ほかに質問が無ければ以上だ。」
マッドは、つっけんどんにそういうと、面倒な質問をしやがってとでもいうかのように、なにやら一人でブツブツ言っていた。私は胸騒ぎがして、それをガラドに報告したいという思いが強くなっていた。だが、この場所には無線機などない。唯一の連絡方法が伝書鳩なのだが、敵の目を引く事を防ぐ為にマッドだけが伝書鳩を持っていた為、私はどうすることも出来ず、ただ何とか連絡方法がないものかと必死に考えていた。
その時、私の思いを察するかのように、一羽のカラスと思しき鳥が私の傍に来ていた。この辺にはカラスはたくさん居る。人間のする不可解な事を見ているかのようにしてたたずんでいるのはごく当たり前のことだったが、なぜか私はそのカラスに惹かれ、目をじっと見つめていた。カラスも怯えて飛び立つ事もなく、私の目をじっと見ていた。不思議な感じだった。この鳥はもしや、私の言いたいことがわかるのか?まさか、そんなはずはない。そう思いながらも私は無意識の内に自分の指を食いちぎり、傍に落ちていた木の葉に血を滴らせ、それを丸めてカラスの足に結びつけようとした。しかしカラスは(当然のことなのだが)足に触られる事に抵抗し、その木の葉を私の手からもぎ取るかのように嘴に加えて飛び立ってしまった。カラスが飛び立った後、私の頭は急に冷静になり、なんと馬鹿な事をしたのだろうという思いで胸が一杯になった。自分のしたことの愚かさを自分の食いちぎった指の痛みで思い知らされたように、自分で自分を恥じていた。
夜も更けた頃、作戦は決行された。この時の私の胸の内は、村に残した母やガラド、その他大勢の罪もない人々を心配することで一杯だった。そしてカラスに対してやったことの愚かさを思い起こしては、訳のわからぬ胸騒ぎと混じっていた。この複雑な思いを振り切るかのように、作戦遂行に全神経を集中させようともがいていた。
そのとき、またしてもカラスが私の傍で私をじっと見つめていたのが解った。そのカラスは何やら嘴に光るものを咥えていた。私がカラスに気付くと、カラスは咥えている光るものを私の足元にポトリと落としてその場を去っていった。不思議なことがあるものだ、そう思いながらカラスの置き土産を拾い上げると、それは鎖の付いたペンダント型ロケットだった。ロケットの蓋には模様が彫られており、蓋を開けると中には女の人と、女の人に抱かれた子供の写真が入っていた。セピア色に染まったその写真の女性と子供は、私に向かってにこやかに笑いかけていた。私は蓋を閉め、ロケットを内ポケットにしまった。ロケットをポケットに入れたことに関しては別に他意は無かったが、ただ、事実としてはカラスがどこからとも無く持って来た物でも、敵が見咎めればきっと私達の存在を知ることになるだろうとの判断からだった。
ロケットをポケットにしまうと同時に作戦開始の合図がなされ、私たちは突撃した。入り口付近で私たちが囮になり、騒ぎを聞きつけて応戦する為に敵の村の兵士が皆こぞって入り口付近に集まった。敵の兵士が入り口に気を取られているうちに、塀を越え、木を乗り越えて第二部隊、第三部隊が突入した。敵の兵力は分散され、あちこちで戦闘が始まった。だが、思ったより味方陣が苦戦しているのが解った。この小さな村で、敵がこれほどの数を揃えて待っていたとは信じられないくらいの人数が、あちこちの家から飛び出して来ていた。これでは第四部隊、第五部隊が突入する機会を逃してしまう。私は自分の第一部隊に合図し、捕虜が囚われていそうな小屋の付近からなるべく離れて道を作り、第四部隊、第五部隊の突入を待った。この敵陣の近くに来るまでのチームより、今の作戦決行時の人数の方がはるかに多い人数でありながら、これほどまでに苦戦するのはどうしても納得のいかないところだった。だが、そんなことを考えるよりも今は私たちの部隊がどう動くか、それだけに全神経を集中させねばならない。私は胸に刺さっている針の傷みを振り切るかのように戦った。
ようやく、第四、第五部隊が突入した。そして捕虜奪還作戦が大詰めに来ていることを知り、私はチームのメンバーに合図をして、村の外に出た。追ってくる敵を尻目に、森の中に入り、スノウが逃げている途中ですばやく仕掛けた罠に見送られながら、もうひとつの捕虜収容場所の沼地へと足を進めた。その途中、小高い丘の上に差し掛かったとき、私は敵陣の村の様子を振り返って見ていた。すると敵陣の村から一筋の煙が立ち昇っているのが目についた。おかしい。銃火器を装備はしていたものの、捕虜奪還時にあれほどの煙を立ち上らせるような武器を使うことはまず無いと判断していたからだ。それに煙の色や、風に乗って鼻についた匂いは、まさしく小屋を焼き払ったときのものだと直感した。私はシンに詰め寄った。
「おい!あれはどういうことだ!なぜ小屋が焼かれている?あの焼かれた小屋はまさか、捕虜が収容されていた小屋なのではないだろうな!」
シンは胸倉に捕まれた私の手を振り解き、顔を赤らめてはいたが平静を装って答えた。
「敵の数が思ったよりも多かったからな。きっと小屋のひとつを焼き払って敵の目をくらませたのだろう。それよりも俺達はこっちの作戦を遂行するべきなんじゃないのか?」
小高い丘の反対側を見ると、1キロほど先に沼地が広がっているのが見えた。そしてその中央に大きめの小屋が建っていた。仕方なく私はその場を離れ、合図をして沼地へ向かった。私の胸にはすでに黒雲が充満しており、疲れのものとは思えぬほどの息苦しさを感じていた。敵陣の入り口に突入した時から比べて、1/2に減っていたメンバーを率い、沼地に程近い森の片隅でしばらく様子をうかがった。目の前の沼地と私たちのいる森との間には、なんの変哲もなさそうな平原が広がっており、捕虜を収容していると思われる沼地の中央の小屋は、不気味なほど静まり返っていた。見ると小屋の後ろ側は沼地と森が隣接している場所があった。私たちは森を通り、小屋の反対側の沼地と森が隣接した場所まで来た。そこで私は再び立ち止まり、みんなに言った。
「おかしいとは思わないか。ここまで来るのに敵が何も攻撃してこなかった。それどころか、罠らしきものも見つからなかった。それにこの場所に敵の気配がまるでない。まるで私たちにこの場所に来させるために野放しにしているかのようだ。これは罠かもしれん。」
第七部隊にいて、この作戦時だけ第一部隊である私の隊に入っていた偵察担当の一人の男が私に言った。
「俺が偵察に行って来よう。中の様子だけでも解ればこの先打つ手が見つかるんじゃないか?」
私はその男の言葉を信じ、彼を偵察に出した。シンとラックとアーニーはそれぞれひそひそと話しをしていた。辺りを警戒し、敵の気配を探り出そうとしたが、敵の気配は全く無かった。程なくして、偵察に出た男が帰って来た。
「沼はかなり深そうだぜ。あれを渡るのは至難の業だ。それに底なし沼の可能性もあるな。用心するに越したことはない。だがたいして大きな沼ではなさそうだから、橋を渡せばなんとか渡れるかもしれん。それと、ここから沼を越えた辺りの壁は脆そうだ。壊して中に入ることが出来そうだぞ。中の様子だと、報告の20人よりももう少し多い人数が居るみたいだ。人の気配はするのだが、なぜか静まり返っている。」
私の心は決まった。とにかく、中にいる人達を助け出すのが何よりも先だ。沼地を越え、その脆そうな壁を破って中に入り、そのうがった壁から捕虜を救出することにした。しかし言い知れぬ不安と闇が心をいまや完全に支配しており、息苦しさを通り越して空気を吸っているのかどうかもわからぬ状態になっていた。みんなに合図をして一旦その場を離れ、僅かに残っていた数本の木を切り倒し、持っていたロープや、橋を作るのに普通は不適切とも思えるようなものをなんとか使って、数枚の丈の長い板にしてそれを沼地に渡して橋にした。
ギシギシとうねりながら軋む木の板の橋を難なく渡り、小屋のすぐ後ろまで来ると、一ヶ所だけ壁に小さな穴がある場所を発見した。私とスノウと数人で壁を静かに崩した。ドロで固められてはいるものの、木を細く切って編みこんだような壁だった。捕虜には武器は当然持たせてはいないのだろうが、こんなに脆い壁で脱走を図ろうとする捕虜の事を考えに入れていなかったのだろうかと訝しく思った。とにかく今は穿った壁の穴から中に入り、捕虜を救出することだと思い直し、行動に移した。
中に入ると、捕虜が鮨詰め状態で居た。みんながみんな、疲労困憊の表情で私たちを空ろな目で見ていた。私たちの姿を見るやいなや数人の男達が突然大声を上げた。
「ここへ来ちゃいけない!逃げろ!今すぐここから逃げるんだ!!」
数人が一斉に大声を上げた途端、屋根や周りの壁から煙が上がっているのが見えた。私は急いで近くに居た捕虜を穿った壁の穴から引きずりだし、目の前の惨状を見た。私とスノウについて来ていた数人の兵士が血を流して倒れていた。その傍でシン・ラック・アーニーは血のついたナイフを握り締めて立っていた。傍には油が入っているらしき入れ物もあった。
「どういうことだこれは!説明しろ!」
私はシンに向かって怒鳴りながら質問した。シンは得意げな顔付きで静かに答えた。
「この作戦では最初から、お前達邪魔者は始末されることになっていたんだ。本国の政府官、ガーランド様の命令でな。冥土の土産に教えてやる。この作戦はすべて、本国に忠実なマッド隊長殿がガーランド様より直々に命を下され遂行されたものなんだ。向こうで火の手が上がったのは、隊長付きの信頼の置けるやつが、ガーランド様にとって邪魔なマキシムを始末するために小屋を焼き払ったものさ。お前達もここで死ぬんだ。もう火の手が小屋中に広がっているぞ。ざまあみろ!俺達はこれから本国に帰って凱旋さ!じゃ、あばよ!」
シンの言葉を飲み込めぬまま、私は茫然自失となっていた。そこへスノウが捕虜を抱えて私に向かって怒鳴って言った。
「キース!まだこの小屋の中までは火の手は来ていない!今の内に助けられるやつだけでも助けるんだ!」
私はその言葉を聞いて正気に戻った。そしてすぐさま壁を壊し、大きな穴を空けて中の捕虜を救出することに専念した。捕虜は皆、まともな食料も与えられず、閉じ込められたままだったため、立ち上がる気力も体力も底を付いていた。しかし皆一様に『生きる』事をまだ諦めてはおらず、最後の力を振り絞って私たちに付いてきた。中には女、子供も混じっており、女子供の中にはすでに事切れている者もいた。中は吐き気のするような匂いで満たされ、その匂いに壁を焦がす炎の煙の匂いと混じって、表現し難いほどの匂いになっていた。うだるような暑さの中で、捕虜全員(かろうじて生きているもの)を外に押し出すと、小屋は目の前で怒涛のごとく焼け落ちた。間一髪で私たちは助かったのだ。しかし周りにはその様子を待っていたかのように、敵が私たちを取り囲んでいた。もう逃げ道は無いに等しかった。取り囲んだ敵は皆、銃を構えており、私たちが一歩でも動けばその場で射殺できるような体制を取っていた。
見たこともない男が私たちを取り囲んでいる兵士の後から歩いて前に進んで来た。私たちの前で止まると、その男は冷酷な声で言った。
「ほう。この状況下でよくこれだけの人数の捕虜を助け出せたな。その手腕は認める。だが残念なことにお前達の命はここで終わる。本国を知らぬお前達は私たちにとってはただの捨て駒でしかないのだよ。考えても見てくれ。お前達のようなごくつぶしを本国の私たちが食わせてやっていたんだ。だが財政が困難になってしまった以上、今までのようにお前達を飼っていられなくなったというわけだ。まあ、恨むなら、この腐った世の中を恨むんだな。さて、君達にとって、最後の時が来たようだ。」
そうして私たちを取り囲んでいた兵士が一斉に銃口をこちらに向け、今にも引き金を引く体制になった。私たちの命はここで費えてしまうのか?そんな思いを抱えて空を見上げると、澄み切った空に真っ黒なカラスが一羽またしても私に向かって飛んで来た。それを合図にするかのように、銃を構えて私たちを撃ち殺そうとしていた敵兵の背後から、見たことも無いほどのカラスの大群が襲って来た。敵兵は面くらいながら、カラスに向かって四方八方に銃を乱射した。敵、味方お構いなしの殺しあいになっていた。その隙をついて、背後から誰かが忍び寄ってくるのが解り、私は持っていた銃を構えて後を振り向いた。
そこには私を可愛がってくれていたガラドが銃を持ち、勇ましい格好で立っていた。私は危うく銃を取り落としそうになりながらも、ガラドの背後に居る人たちに目をやった。ガラドの後ろには、私たちが暮らした村の女達が武器を持って援護していた。母もその中に居た。私はスノウやその他の元捕虜達に合図し、カラス軍団に応戦している敵兵を尻目にその場を離れた。背後から大きな怒鳴り声が響いた。
「おい!やつらが逃げるぞ!追え!早く追うんだ!」
敵兵はカラスに邪魔されて簡単には私たちを追うことは出来ずにいた。その隙を突いて私たちは一目散に逃げた。気が付くと私たちは敵からかなり離れた場所の砂漠の一端に出くわした。
敵兵から逃れ、ようやく人心地つける土地まで来た時、初めて私は安堵の気持ちで空を見上げていた。空は今まで見たことも無いほど澄み切っており、雲ひとつなく、髪を揺らすさわやかな風を顔に受けながら太陽のじりじりとした暑さをまるで生まれて初めて体験したかのように感触を楽しんでいた。母が私を抱きしめてくれ、ガラドが私ににこやかに近づいてきて言った。
「よくここまでやったな。あの状況でこれだけの捕虜を救出出来たのは奇跡としか思えん。いや、よく頑張った。」
ガラドの言葉に照れながら見やると、ガラドの後ろで蒼白な顔のあちこちに火傷を負った一人の男が居た。ガラドがその男と私を会わすかのように道を空けると、その男は私の手を取りながら言った。
「本当に君は立派なことをしたな。君達のおかげで私を始めとする多くの命が救われたのだ。君達には感謝の言葉も見つからない。ありがとう。」
小刻みに震えながら私と握手を交わすと、その男は自分の名前を名乗った。
「私は本国の政府官の一人、マキシムというものだ。君の名前を聞かせてくれないか。そうか。君はキースというのか。本国に無事に帰ることが出来たなら、君はきっと英雄になれるだろう。しかし私も君達も今は本国に帰るのは危険だ。しばらくはどこかでひっそりと暮らしながら策を練るしかあるまい。」
マキシムの一言で私たちのこれから取るべき道が見えたような気がした。だが今はまだ敵の目がどこにあるかわからない。とりあえず私たちはこの場を離れることにした。