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ガイア  作者: 知舘美衣
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第一章 第三話 生命の尊さ

 エミリーは14歳になった。学校は地域の学校から私立の学校へと変わり、楽しく通っているらしいが勉強は難しくなったようで、エミリーは以前のように私やジュニア達とはめったに遊ばなくなっていた。しかし時折、私に向かっていろいろと話掛けてくれていた。短い時間だけだが・・・


 私もこの世界について、いろいろと解ったことがあった。この世界が今、どうなっているのかや、遠くの国で戦争が起こっていることなどだ。以前よりは私の中での人間の地位は高まったものの、やはり愚かな行為をするものだと思った。


 オウルじいさんは、近頃特に物忘れが激しくなった。さっき聞いたことも、次の瞬間には忘れているといった風であった。仲間達は口を揃えて言った。

「じいさんの命はもう長くはない」

と。珍しいことに、オウルじいさんの場合は、体はまだキチンとしているのに、精神(魂)が老化してきていた。だが、仲間達が言うところによると、魂がどんなに老化していようとも、体がキチンとしているうちは、魂も解放されずにいるらしいのだ。これは人形たちにとってはとても苦痛なことだという。私は自分が生まれてから何年たっているのか解っておらず、しかも私の意識がはっきりしたのは、この家に持って来られたときだったので、自分がどのくらいの年を生きているのかさえ、解っていなかった。


あるとき、ママが言った。どうやら私の体には、生年月日が記されているらしい。そして、調べた結果、私はこの家に買われてくるまでの間、ショーウィンドウの中で3年を過ごしたらしい。その3年もの間、私は意識がないまま、ただ飾られていたらしいのだ。


何一つ、変わらぬ日常が大きく変化したのは、その年の秋のことだった。それは私が誕生した日でもあった。仲間達はみんなで私の誕生日を祝ってくれたが、そんな中、突然、ママが倒れた。このとき、私は前のエミリーのように風邪という名の病気なのではないかと楽観視していた。が、けたたましいサイレンと共に、しばらくの間この家の住人は居なくなった。仲間達は不安になった。何が起こったのか解らぬまま、時だけが過ぎていった。仲間達はみんな、これから起こることを予想だにしていなかった。


2・3日すると、エミリーがパパと二人で帰ってきた。二人とも、沈痛な面持ちで、ママの荷造りをしていた。エミリーが私に言った。

「ママ、結核なんですって。入院することになったの。私もしばらくしたらまたママのお見舞いに行くわ。そのときはあなたも一緒に行きましょう。」

私は『結核』の意味さえわからず、ただエミリーの言葉を聞いていただけであった。エミリーの表情から見ると、どうやらその『結核』というものは、病気の一種らしく、かなりの重い病気であるらしかった。エミリーがふたたび荷物を持って出かけると、バービーが口を開いた。

「結核・・・・。私の前のご主人が結核で亡くなったわ。今の医学ではどうすることもできない難病らしいの。私、結核で亡くなった前のご主人の傍にいることが多かったから、きっと私のどこかにまだ結核の病原菌が残っていたんだわ。」

バービーはそういうと、突然おろおろと泣き出した。ジュニアがバービーの傍に行き、慰めた。

「きっと違うよ。君のせいじゃない。だって君はサナトリウムから帰ってくるとき、全身を消毒されたんだろう?消毒臭いって、自分でそう言っていたじゃないか。元気だせよ。君のご主人が亡くなってからかなりの年月が経ってる。きっと今の医学では治る病気になってるはずさ。」

そんな励ましを言っていても、ジュニアにさえ、本当に現代の医学で結核が治るところまで来ているかどうかなど、解らなかった。しかし、そういって慰めるより他の方法が見つからない苛立ちが私にも伝わってきていた。オウルじいさんはぼんやりとした表情で窓の外を眺めていた。


次の日曜日、エミリーは私を連れて、サナトリウムに向かった。私はこのとき初めて外の景色と空気に触れた。空気は何処となくどんよりとしていて、今にも雨が降り出しそうだった。風は冷たく、もうすぐ冬になる気配がした。外を歩くとき、エミリーは私にしきりに話し掛けた。ママを心配する気持ちがどんどん募り、エミリー自身、どうすることも出来ないでいたようだった。そんな気持ちを抑えるかのように、私にいろいろと話しをした。私は黙って話しを聞いているだけだったが、初めて見る外の世界に気持ちが高揚していた。


サナトリウムに着いた。建物の中は消毒くさく、居心地の悪い場所だった。私の高揚とした気分は一瞬にしてふっとび、私はエミリーに抱かれ、ママの病室に向かった。受け付けを済ませると、私は服を脱がされ、エミリーは全身白ずくめの服を着、顔を覆うほどのマスクをし、帽子を被り、病室の中に入っていった。


ママの病室は、ガラスに隔たれ、直接話しをするのも近くにあるマイクを通してしか出来なかった。ママはやつれた様子でとても痛々しかった。ついさっき感じた高揚とした気分になった私自身を恥ずかしく思った。しかし、エミリーの顔を見るとママはとたんに顔に血の気が戻り、いつものように元気な話し方に変わった。エミリーもママの元気な姿に安堵したようだった。


 受け付けに戻り、私は全身を消毒され、服を着せられていた。エミリーはママへの着替えやらの届け物を渡し、私を来た時と同じように抱いて家路に向かった。途中、エミリーは私にまたしても話し掛けた。その話だと、ママはエミリーの前でだけ、気丈に振舞っているだけのようだった。なぜ、人間がそのようなことまでわかるのか、以前仲間達が話ししていた言葉が蘇ってきた。『人間は、人間同士では気持ちが通じ合うことがない』と。しかし、今現在見ている限りでは、エミリーとママの間には確かに気持ちが通じているように見える。それはきっと、心を許しあえた者同士だけが感じることが出来る直感というものだろうと、後にバービーが言っていた。


家に着くと、パパが仕事から帰って来ていた。外は夕暮れを過ぎ、段々暗くなっていた。エミリーは私を部屋に置き、その足で下に降り、手洗いとうがいをして食卓に着いた。


 私が帰ってくると、ジュニアがものめずらしそうに私を質問攻めにした。サナトリウムはどんなところか、外はどんな感じだったか、そしてママの様子はどうだったかをしつこく聞かれた。それを見て、バービーが痛々しそうに言った。

「サナトリウムなんて、行くもんじゃないわよ。でも、あたしが行ったところは、外の景色がきれいなところだったわ。それより、じいさんの様子がおかしいのよ。ママが倒れた日あたりから、突然訳のわからないことばかり口走るようになったわ。どうしちゃったのかしら。」

バービーがそういうと、みんな、オウルじいさんの方を見た。じいさんは相変わらず外を眺めていた。なにもしゃべらず、ただただ外を眺めていた。夜半過ぎ、オウルが突然しゃべり始めた。

「おお。そうか。もう長くはないのだな。わしもおまえさんと一緒に行きたいのう。人形の魂は、衰えるのが早いのでのう。人間ならまだまだ先が長いかもしれんが、わしらはそうもいかぬのでなぁ。おまえさんの元にわしも行こう。おまえさんと一緒に生涯を閉じるのもよかろう。これも運命じゃろうて。」

オウルがそういうと、突然バービーが我を忘れたように叫んだ。

「オウルじいさん!ダメだよ!行っちゃダメだよ!あんた、自分の命を粗末にするつもりかい?サナトリウムに行けば、あんたの体は焼かれる。もうここに戻って来られなくなるんだよ!あたしの以前の仲間もみんな焼かれたんだ!私は体が布で出来ていたわけじゃないから、消毒だけで済んだけど、じいさんは全身布で出来ている。正真正銘のぬいぐるみだ。あんたは絶対にここに戻っては来られなくなるんだよ!絶対行っちゃダメだよ!!」


 オウルじいさんはそれっきりひとこともしゃべらず、また、いつものように外を眺めているだけであった。


日に日にママが弱っていくのを私たちは感じた。ママに直接会わずとも、エミリーやパパの態度で解るし、ママの容態のことを二人で話し合っているのを耳にしたりもしていたからだ。私たちでさえ、気持ちが沈んでいくのが解った。オウルじいさんは、相変わらず時々発する言葉がまるでママと会話をしているような感じでいたし、言葉を発した後や発する前は無表情で外の景色を呆然と眺めているだけだった。オウルの態度でも、ママの容態がどんな風なのかがなんとなく私たちには解った。

やはり、この時代の医学では、結核というものは不治の病とされているらしい。ママは自分と同じサナトリウム内に居る人たちが次々と居なくなることにある種の恐怖を感じていた。私やエミリーが時々見舞いに行くと、涙を流して喜び、そして、悲しそうに未来の話をした。私もエミリーもその姿を見て、痛々しく思い、段々とエミリーでさえもママのいるサナトリウムに足が向かわなくなっていった。


あるとき、久しぶりにエミリーが寝ているときに私はエミリーの夢の中に入りたいという葛藤が生じ、光の中に身を投じた。

夢の中でのエミリーは、今までとは違い、とても悲しい雰囲気に包まれていた。私はエミリーの気持ちを察してはいたが、それよりもママの心配の方が大きく、しばらくママの所に行っていないエミリーを勇気付けるためにエミリーと話がしたかった。

夢の中でのエミリーもまた、悲嘆にくれていた。私はその姿を見たとき、エミリーにどうやって話し掛ければよいのか解らず、エミリーの傍で立ち尽くしていた。半ば、半狂乱になりかけていたエミリーをどうすれば勇気付けることが出来るのか、なにも考えられなくなってしまった。エミリーの夢の世界をゆっくり見回すと、最初に来た時には青々と茂っていた緑も、空も、なにもかもがよどんでしまっていた。私は心の中で強く念じた。前のような美しい世界を今一度ここで見られるようにと。するとあたりは急に明るくなり、よどんでいた空気も清浄化し、緑の色も空の色もたちまち美しい色に変わった。まるで魔法でも使ったかのように・・・・。


 美しい緑や空に囲まれ、エミリーは呆然としてあたりを見回した。そしてしばらくの間、エミリーは空を見上げたまま動かなかった。私はそのエミリーに、今ここで敢えて話掛けることはしなかった。エミリーの気持ちが次第に晴れていくのが解ったからだ。そして私はエミリーの夢の中から出た。自分の意志で・・・。人形に戻り、私はそのまま眠りについた。

 

次の日、エミリーが目覚めてみると、前の日とはうって変わって晴れ晴れとした表情に戻っていた。エミリーのいつもの表情である。顔は前の日とは明らかに違い、青白かった顔が赤みを帯び、目はきらきらと輝いていた。不安はまだ完全に取り除かれた訳ではないが、自分がうじうじしていても仕方がないと、ある種の覚悟を決めたようでもあった。そのエミリーの表情を見て勇気付けられたのはパパであり、私たち人形の方であったことは言うまでもない。ジュニアがからかうように私に言った。

「すげぇや。一体どんなまじないを掛けたんだ?」


エミリーは、また私を連れてサナトリウムに向かった。そしてママに会うと、ママは突然思い出したかのようにエミリーに言った。

「私のふくろうくんをどうか、ここに連れて来て欲しいの。」

と。エミリーは、ママの容態をパパから聞き、もう長くない命であることを知っていた。そのため、エミリーはこのママの申し出を快く引き受けた。そして次の日にはオウルじいさんはこのサナトリウムに連れてこられた。オウルはうれしそうだった。


 しばらくすると、ママはベッドから起き上がることが出来なくなっていた。体力が底をついたのである。しかし、ママの表情はオウルが来て以来、ずっとうれしそうな表情だった。

ママはいつも私たちが見舞いに行くと、残される家族のエミリーやパパのことを心配していた。そんなママを見て私は、自分の身を省みずエミリーのことを心配するこの人間に圧倒されていた。人間というものは、こんなにも苦しみながらでも生きていかなければならない存在なのか、と。そして人間のこの精神的な強さに尊敬の念を抱いた。私はこのときほど、人間をいとおしく思ったことはなかった。母なる地球が私に下した『限りある命の存在』。この存在には、私たち元精霊にはない、最上の贈り物を受けたのではないのかと思うほど、神がかり的な存在に思えた。そして私は悟った。人間は、生と死を見つめながら、愛を感じるのだということを。


 日に日に弱っていくママを見、パパもエミリーも不安を隠しきれなかった。そして、いつの日か、サナトリウムに足しげく通うことが日課になっていった。私は連れていかれたときには、全身消毒をされ、消毒のにおいに鬱になっていた。しかしやはり主人たるエミリーのことも、そしてエミリーが最も心配しているママのことも忘れることはなく、連れていかれる時でも、それを拒む気には到底なれなかった。


 ある、晴れた冬の日、突然オウルじいさんが家にやって来た。しかし様子がおかしい。オウルの体は半分透けて見えた。オウルは言った。

「わしは今、霊魂だけをここに飛ばしている。わしはそろそろエミリーのママと一緒に旅立つ。その前にみんなにお別れをと思ってな。今まで楽しかったよ。ありがとうな。」

みんなは困惑した表情で言った。

「では、やはりエミリーのママは・・・・」そう、バービーが言いかけたとき、オウルがうなずきながら言った。

「うむ。アンナの命はこれで尽きる。アンナはみんなとも会いたがっていたし、この家に戻りたがっていたが、よもやそれもかなわぬこと。もっと別の病気なら、この家を見てから天に召されることもできたであろうに。」

俯いていたジュニアが突如顔を上げて言った。

「じいさん、じいさんだって、まだ早いんじゃないのかい?体の方はピンピンしてるじゃないか。」

すると、オウルが厳しい表情で言った。

「みんな、わかっておるはずじゃ。わしら人形は人間とは違い、人間よりも長生きできるかもしれん。しかしそれはあくまでも見た目だけのこと。精神は人間よりも早く歳をとる。そして老化する。体はそのまま残るが、老化した後の精神はなにも感じず、なにも見えず、ただ闇の中を、行く場所もわからずさまようだけなのじゃ。よもやそれはわしにとっては拷問としか思えんのじゃ。それなら、主人と一緒に天に召されることをわしゃ、願うぞ。おまえさんたちとて、同じことを考えておったじゃろう?」


 オウルがそういった後、誰一人として言葉を発することは出来なかった。そして、その判断を自らしたオウルに尊敬の眼差しを向けていた。オウルはもう、この世を去る覚悟をした、だからこそこの言葉が出るのだ、と、誰もが感じていた。


 仲間達が黙ったままの間、オウルは家の中を自由に飛びまわり、思い出に耽っていた。まるでエミリーのママに話掛けるかのように、楽しそうに・・・。


 夕暮れが迫ってきたとき、オウルはようやく仲間達の前に再び現れ、そして言った。

「ふむ。ではそろそろ行くとするかの。アンナが寂しがっておるのでのう。みんな、達者でな。」

オウルがこの部屋を出ようとしたとき、仲間達はみんなで最後のお別れをした。

「じいさん!今度生まれ変わったら、また会おうぜ!絶対だ!」

ジュニアが涙ながらに言った。ジュニアだけではない。みんなジュニアと同じ思いだった。オウルは最後ににこっと笑いかけ、そして夕焼けの空の彼方に消えていった。


数日後、エミリーと一緒に私はサナトリウムに向かった。今度はパパも一緒だった。医師からの知らせで、ママの容態が急変したというのだ。私はオウルの魂が来た時から、この日が来ることは解っていた。しかし、解っていても、やはりこの日が来なければという思いでいっぱいだった。

サナトリウムに着き、ガラス越しにママの姿を見て驚いた。ついこの前まではやつれていてもまだ顔に赤みがあったのに、今日のママの顔の色はどす黒かった。ママはエミリーの方を向き、にこりと笑いかけ、涙を流した。そして次にパパの方を向き、か細い声で言った。

「あなたより先に逝くことになって、ごめんなさい。エミリーをよろしくお願いします。」

その言葉を聞き、とうとう我慢しきれなくなり、パパは号泣し、言った。

「君はひどい人だよ。結婚当時の約束を君は破るつもりなのかい?契約違反だよ。アンナ」

パパがそういうと、ママはにこっと笑いかけ、「愛してるわ。」と言って上を向き、目を閉じた。パパは流れる涙をふき取ることも忘れ、ママの近くに行けぬ苛立ちから、隔てているガラスをドンドンと叩き、そしてママに向かって叫んだ。

「解っているよ。私も愛している。いつまでも」


ママが目を閉じ、上を向いたとき、エミリーは私を床にボトリと落とし、パパと同じようにガラスをドンドンと叩きながら泣き叫んでいた。私はその時、ママの魂が体から抜け、オウルの魂と語り合っていたのを見た。その瞬間、急に息苦しくなり、背筋に冷たいものが走った。作り物の体の中で、魂だけが小刻みに震えていた。


次の日、ママの葬儀が始まった。ママの棺の中に、仲良しだったオウルも入れられ、土に還った。葬儀の間中、私は呆然自失の状態で、私以外のものだけが、時間の波に流されているようであった。


 葬儀の後、私はママの魂とオウルの魂が家に戻ってきたのが解った。しかし、他の人間達はそのことに気がついていないようで、ただただ悲嘆に暮れていた。私は思い切って、ママとオウルの魂が天に上る前に話し掛けてみた。


 オウルとママの魂は、残される家族の心配をしてはいたが、いつまでも天から見守っていると言っていた。オウルの魂が教えてくれた。ママの魂は、次に人間として生まれて来れるのは後1000年先のことになるであろうと。そして、その時まで、魂は天にて裁かれ、また忘却の川の水を飲んで、よい行いをしたと判断された魂は生まれ変わる為の準備に入り、また、悪い行いをしたと判断された魂は、地に落とされ、剣山の上を歩かされるような悲痛な罰を受けるのだということだった。そして、当然、ママは地に落とされるようなことはないと・・・。


 私と話を終えたとき、天からの御使いが舞い降り、ママとオウルの魂を連れて行った。ママは名残惜しそうだったが、私が説得し、浮遊霊になることだけはやめさせた。風の精霊であったときより、すんなりとママは私の言うことを理解し、実行してくれた。私は胸を撫で下ろした。


 ママとオウルの魂が天に上った後、部屋の中では、仲間達がしくしくと泣いているのが聞こえた。私はこのとき不思議と涙は出なかった。しかし、エミリーがベッドで静かな寝息を立てて眠りについた時、安堵からか、もしくは今までの高ぶった気持ちが爆発したのか、私はこのとき初めて体の中から熱いものが込み上げてきて、それを抑えることが出来なかった。人間の命とは、こんなにも儚いものだったとは、私は知らなかったのである。そして、この弱い人間に対して、いとおしさを通り越し、愛情を感じたのであった。

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