転生
東雲綴です。
処女作です。
更新ペースはゆっくりになるでしょうがお付き合いお願いいたします。
俺は普通だ。
俺には特にこれといったものがない。
顔はイケメンじゃないし、かと言って不細工じゃない。
中の中、人によっては中の上と言ってくれるかもしれない。
じゃあ性格はどうなのか?と聞かれれば、これも普通と答える他ない。性格に普通というものがおるのかどうかは不明だがそれ以外に表現しようがない。決して正義感が強いわけでもなければ、倫理観が歪んでいるわけでもない。
学生時代にいじめというものが起きていたが、俺はそのいじめの被害者でもなければ、主な加害者でもなかった。所謂諦観者であり、被害者からすれば消極的加害者であった。
それが良くないことと言うのは分かっていたが、一人で止めに入れるほどの勇気は普通な俺にはなかった。ただ、やはり無視し続けるのも耐えられなかったため、2人のときそいつの話相手になるくらいのことはしていた。それが目に止まったのか、生徒会役員のクラスメイトに声をかけられ、数人でそのいじめを止めに入った。
人並みの恋愛も経験した。彼女は人生で3人だ。
1人目は中学生のころ、周りに隠れて付き合っていた。
美人ではなかったが、可愛らしい子で、気もあったため付き合っていて楽しかった。
2人目は大学のサークルで一緒だった子だ。
この子は美人で気立てもよく、何故自分が付き合えたのか不思議だったが、1年も続かずに別れてしまった。やはりつりあっていなかったのだろう。
3人目は今の妻だ。
高校の同窓会で4人席の正面に座っており、残りの二人の男女が盛り上がり帰り際二人になり流れでその夜は一緒にとまった。
彼女もその時に恋人はおらず、とりあえず付き合ってみることにし、そして今に至る。
はじめは成り行きであったが、今では彼女は大切な妻であるし、2人いる子どものことも愛している。
同窓会で再会したというのは少しドラマチックに思えるかもしれないが、高校時代に特に何もなかった二人にすれば大したドラマではない。
それにそういう夫婦は案外いるものだ。
他にも俺が普通だと言える話はある。
趣味は読書。うそではない。
運動神経は悪くない程度だ。スポーツテストは毎回Bだった。
歌もへたではない。カラオケは大抵80点は取れるが、得意な曲でも87.389が最高点だ。
あぁ、そういえば記憶力には自身がある。だが、それでもカメラ記憶なんてことはできないし、勉強にも活かせていない。
高校は普通科の偏差値60くらいのところで、校内順位は400人中150位前後をさまよっていた。
大学はそこそこ有名な国立大を受験したが不合格で、結局地方の国立大にした。
地元の私立と悩んだが学費を考えるとそうなった。
就職も無難に大手企業の子会社に就職した。今は課長である。
俺は普通だ。
そのことに大きな不満はない。ただ退屈だと感じつことはある。
だからだろうか、最近は異世界転生のライトノベルをよくよむ。面白いのだ。
きっかけは会社の同僚に勧められたことだ。
俺にはないものをもつ主人公が、俺には起きないイベントを乗り越えていく物語はいい刺激を与えてくれるものであり、日常の退屈さをより浮き彫りにするものであった。
▽▼▽
さてそろそろ思考をもどそう。いつまでも現実逃避はよくない。
『あぁ、それがよろしいと思いますよ。』
「っ?!」
何だ今のは?!
頭に声が響いてきた?
一体誰の?
「あぁ、驚かせたようですみません。
まぁ驚かせるためにやったのですが。
今のひと言で、私様がお前様の考えを読めること、頭に直接語りかけるられることが理解いただけたでしょう?」
今度はしっかりと耳に声が届いた。
混乱している頭でもこの声はとても綺麗だと感じられた。
「あぁ、それはありがとうございます。
まぁ私様は、神様なので当たり前なのですが。
あぁ、今混乱していらっしゃいますね?
まぁ、辺りは真っ暗で何も見えず、ここがどこかわからない、こんな状況で混乱するなという方がおかしいです。」
確かに真っ暗な中今まで1人、何故ここにいるのかもわからずわけがわからないが。
しかしはっきり言って、自称神様の一人称と微妙に変な敬語もどきの方がわけがわからない。
「あぁ、それはですねこれが敬語ではないからなのですよ。
まぁ私様がお前様を敬う理由などないから当たり前なのです。
さて、無駄な話はもういいでしょう。
お前様ももうそろそろわかっているはずですしね。
お前様には転生してもらいます。」
……………いや、何もわかっていない。
確かに、何もない空間で神様と話してそののち転生はよくある話だ。
しかし、今俺は真っ白な何もない空間にいる訳じゃない。
目の前は真っ暗で何も見えず、自称神様の姿もわからない。
わかってるのはコイツの声がきれいということと、その声が正面から聞こえてくることくらいだ。
あとはなにもわかっていない。
死んだ記憶もなければ、召喚魔法陣が足元に現れた記憶もない。
「あぁ、辺りが真っ暗なのは私様の姿を見え無くするためです。
まぁ、声くらいなら大丈夫なのですが、姿まで見てしまうと、人間程度では存在が消滅してしまいますから。
それとあなたは死んでますよ。記憶がないのは寝ている間に死んだからです。
ちなみに癌です。末期になるまで症状が出ないことも少なくないですから仕方がありませんね。」
そうか、俺は死んだのか。
癌というと日本人の死因約3割だったか。
死に方まで普通とは。
「そうです!あなたは最後まで普通の人生でした!
そこで私から提案です、チートを授かってから転生しませんか?!」
転生?!
主人公のようになれるのか?俺が?
いやまて、そもそも何故俺が異世界転生できるのか。それもチートまでもらって。
そんな理由があるのか?
あるはずがない。
ということは俺だけではないと考えるのが自然だ。
「いいえ、お前様だけですよ。
あぁ、それと少し勘違いしているようですが異世界転生ではありません。
地球の日本に転生してもらいます。」
え?地球に?それもチート能力を持って?何故?
「えぇ、地球に、それもチートをもって、です。
理由は…そうですね、話す義理もないのでこちらの都合とだけいっておきます。」
理由はおしえてくれない、か
まぁそこは大して重要ではない。
「えぇ、私様はお前差に転生後一切干渉しないですから。」
なら問題はないな。
しかし地球にとなると、チート能力に魔法なんかはもらえないのか?
「いえいえ、チートですから魔法でも構いませんし、スキルでもいいですよ?
あぁ、授けるチートは5つです。存分に悩んでください。」
5つも貰えるのか。
なかなか大盤振る舞いだな。しかも選択制じゃなく、自分で選んでいいとは。
これなら普通な俺でもかなり楽しく生きられるかとしれない。それにチート、ね
ふむ、ならまずはなんと言っても容姿だな。
だが容姿なんて、どうやって細かく指定すればいい?
いや待てよ、チートは…
「正解です。
チートは選んだ時点から付与されます。」
ならまずは芸術の才能だ。
「はい、承りました。」
よし、容姿を決めたいから何か紙とペンをもらえるか?
「えぇ、どうぞ。」
さて、どんな容姿にしようか。まぁ20歳の容姿を考えてそれをベースに5年ごとに描いていけばいいか。
まず、身長は180センチくらいでいいか。足は長めにして、体の線が細いいわゆるモデル体型でいいだろう。
顔は、切れ長の目で瞳の色は金に近いブラウン、鼻はスッと通っていて、艶やかな唇、肌は白く、髪はさらさらと流れるように柔らかく色は瞳と同じ金のようなブラウン。
うん、ものすごく美人になった。
しかし、その表情次第では精悍さもでて美丈夫とよべる立派な男である。
これは見たことないほどにきれいだ。
すこしやばいかもしれない。
……次のチートにいこう。
まぁ、間違いなく運動神経だろう。
これはどの世代でも確実に言えることだが、運動神経がいいということは学生時代を楽しく過ごせることと密接に関わる。
やはり中心となる学生は運動神経がいいことが多い。
それにやはり気分がいいだろう。
俺は次の人生を楽しく過ごしたいのだからこの感覚は大事だ。
ということで3つめは運動神経で決まりだな。
良さの度合いは人類最高としよう。やはりトップというのは憧れる。
4つ目は能力にするか。
そうだな、「攻略サイト」という能力にするか。
過去に起きたこと、今起きていること、今後起きることや、他にも様々なことを調べられる能力だ。
やはり先の未来が分かれば、ということは誰でも思うことだろう。
それに俺はゲームは攻略本片手にやる派だ。
さて5つ目か…
運の良さでもあげるか?
やはり運というのと大事な要素だし、これがあればご都合主義も起こせなくないだろう。
いや、待てよ?
自称神様の説明はちょくちょく不親切だ。
それに希望した時点でチートを得られるのはメリットも大きいが、取り消せないというのがある。
もう少し考え…っ?!
「あぁ、気付いてしまわれましたか。
まぁ、その通りです。記憶は持ち越しされませんよ。
残念ですね、お前様も気づくことなく5つともチートを選ぶと思いましたのに。」
危なかった。
確かに記憶を持ち越さなくても、次の人生が退屈でなくなるのは確実だがそれはもはや俺じゃない。
俺は、俺が楽しく生きることを願っているんだ。
なら5つ目は記憶の継承で決まりだ。
「はい、承りました。
ではお別れの時間ですね。
お前様の人生が良きことを願っております。」
こうして俺は転生した。
▽▼▽
ふぅ、少しミスをしてしまいましたね。
転生の話に持っていくときに焦りすぎたのがいけなかったですね。
まぁ私様はこの仕事はこれが初めてですから仕方がないと言えるでしょう。
さて私はあなたに本当に幸せを掴んでもらいたいとおもっていますよ。
ふふ、では私様はそろそろ次の仕事に取り掛かりますか。
退屈な日常にさよならを。を読んでくださりありがとうございます!
次回から転生先での新しい人生がはじまります!