商店街
マントを捕まれたまま引っ張られ、また後ろ向きの体制になる。止まろうとしても、強く引っ張られ、首が締まる。苦しい。勝手に足が下がっていって、後ろから流れる景色を眺めた。
商店街の、看板が見えたとき、もうここまで来たのかと思う。体が軽くなり、体に痛みが走った。目の前に逆さでたっている人が見えたことで、地面に叩きつけられた事が分かる。
「投げなくてもいいだろ!」
僕が言うと、
「うるさい。ほら、これ、冒険に持っていけ。」
と言ってマナが出したのは、大きな風呂敷。中は………
「あ、これ、僕のポシェット。」
小さく僕の声がでた。
「そうだ。ま、さすがに持ち物全部処理するのわ、かわいそうだとおもってな。冒険に必要なものだけ入ってる。お前の財布もあるから、必要なの買ってこい、ついでに、仲間も探して……」
マナが言い終わるも前に僕が立ち上がった。
「ありがとう!じゃ、いってくるよ!よかったー!全部捨てられてない!」
ポシェットを抱き締めながら僕が言う。変なステップで僕が買い物にいこうとすると、
「おい!金はとっとけよ青緑!」
マナが叫ぶ。追ってこなかったのは、それほどの気力が無かったからか、いや、優しく笑うような目を見れば分かった。子供を見守る親の目だ。
「おーけー!」
謎のテンションになり、僕が叫ぶ。本当に子供のように、足をあげながらかけていく僕を、マナは見ていた。
マナと離れた僕は、買い物をするため、商店街をうろついた。ここに来るのは久しぶりで、ハンターに成り立てのころから来ていない。何年たったのだろうか。
商店街も、全く変わっていない。全然変わらない古さ。そう、ここは前から古く、店数も少ない。全て木造で、茶色い建物。そこそこに大きいが、屋根が小さいため、小さく見える。扉にはどこものれんがつけてあり、良い雰囲気の古さを醸し出している。
ふと目に違和感を感じ、触ってみる。なにか小さいものが目に入り、痛いと思う。それは、小さいときによく体験したあの感覚、そう、砂場とかで、…… 目を擦るのをやめて手を退けると、土が舞っているのが見えた。あぁ、砂ぼこりか。砂が入らないように目を細める。他の人から見れば、変な人、と思われるだろう。
そのままの姿勢で行きつけの店を探す。昔よくいっていた。赤く塗られ、
「昔なつかし」
の見慣れたキャッチコピーと、名前のかかれたのれんを見つけ、探していた店だと確認する。
ドアを開けると、かわいらしい鈴の音が聞こえる、そのおとがなりやむかやまないかの瞬間、僕の腹に激痛が走る。
「ヴっ」
声を出して僕が倒れる。ドスっ! と音が出て、地面に頭をぶつける。
「あぁ、ごめんなさいカサハさん!」
上から声が聞こえる。幼い少年のような声、そう、これは《ユート君》だ。ユート君は僕の友人の弟で、この店の手伝いをしている。
「だ、だいじょぅぶ、だ……ょ……」
腹を押さえながらユート君の肩を掴んで起き上がる。よろっとユート君が一瞬よろけたが、とどまった。
腹をさすりながら店を見渡す。懐かしい綿菓子や、あのスナック棒。そう、ここは駄菓子屋だ。店のなかもふるく、お菓子棚の横のテレビはいつのかわからない古いアニメを流している。縁側にはグリーンカーテンがしてあり、座っているおばあちゃんも元気そうだ。
「さ、先ほどはすみません…お店で会うのは久しぶりだし、その、感極まっちゃって……」
と、ユート君が手を合わせ、頭を下げる。兄と同じ薄紫の髪がさらっと落ちる。格好は半袖半ズボンで、何故か、微笑ましい。
「大丈夫たよ。そうだ、お兄ちゃん居る?」
涙目のユート君の頭を軽く叩いて僕が言う。
「あ!お兄ちゃんですね、ちょっと待ってて!」
機嫌がよくなったのか、すぐに二階に上がっていった。