出発
マナの後をついていき、お城についた。とても大きな城で、間近で見るのははじめてだ。どこまでも伸べていくかのように高い屋根と、パステルカラーがベースの明るい色。これも、王様の趣味なのだろうか。
マナが僕をおいて先にいく。それを追い、僕も走る。城の周りの噴水や庭を眺めながら景色を楽しむように走った。次の瞬間、頭に衝撃を受けて、立ち止まる。マナが止まっていた。
「なんだよ、入らないのかよ」
僕が自分の頭をさすりながら聞くと、
「まあ待ってろ」
とマナ。
言われた通り待っていると、扉が、動いた。重いとびらを引く音が、この建物の歴史を感じさせた。開いてゆく扉から奥の景色が見えてきた。王様が座る椅子、その隣には大きな食卓、僕が食べたこともないような料理ばかり。
奥からやって来たのは……小さな小さな王様。
「遅いぞ。マナ。カサハは連れてきたろうな?」
銀色の髪を揺らしながらよちよちとあるいてくる。この光景ならかわいいと思うが、声が、だいぶかっこいい。
「しっかたねーだろ、おら、カサハなら連れてきた。何すんの?喰うの?」
マナが言った。冗談では無さそうだ。
「まさか。………さぁ、カサハ、一つ頼み事をいいか?」
王様に言われたので、
「は、はい、」
返事をした。
「お前、ナイトメアは知ってるだろ?あの、洞窟の厄介なモンスター。そいつが街の資源を持ち去ってしまってな、出来れば、取り戻してくれんか?」
王様の謎の質問に、
「はい、大丈夫だそうです。」
何故か、マナが答える。僕に拒否権はないのか。
家具が処分されていた理由も、僕が選ばれた理由も、なんとなくわかってきた。使えない僕をナイトメアと戦わせて、願わくば資源を持ってこさせる。その間に、僕の部屋を、誰か別の人の部屋にするのだろう。
王様にどうだね、と聞かれ、別に、何もすることないし、部屋いってもなんもないし、
「はい。わかりました。」
僕は、それを、引き受けた。