プロローグ
昨日、部屋を片付けたからだろうか、凄く殺風景だ。いや、片付けたのならば、当たり前なのだろうか。そうか、当たり前なのだろう。なにか一つ違和感を覚えるが、僕は気にせずにいつものように鏡の前の椅子に腰かけた。
また、なにか違和感。それも気にせず、僕は鏡を見つめる。身だしなみは気にする方で、特に髪の毛。頭を振ってみると、鏡おくのエメラルドグリーンの髪が左右にフワッと揺れた。まばたきをすれば、向こうの黄色い目もまばたきをするし、変なポーズをとると、向こうの変な鎧を来ている僕もおかしなポーズをとる。うん。いつも通りではないか。
僕は鏡の横にあるハンカチを取ろうとして手を伸ばす。だが、それは空気を掴むという結果に終わった。そこにそれが無かったのだ。まわりを見てみると、僕が感じた違和感というものがわかって。
物が少ない
愛用していた小物入れも、先ほどのハンカチも、その他、生活に欠かせない大切な物が、無くなっている。それがわかった途端、急に焦りだした僕は、適当なところを探してみる。 ない。 ない。
ここまでないものかと、一つ僕の頭に、考えが浮かんだ。だが、それはない。と、否定しまくって、考えた結果、泥棒。泥棒に入られた。それくらいしか思い付かない。そう考えてしまうと、いてもたってもいられない。
僕は反転し、戦闘の時くらいしか見せないようなスピードで扉に向かう。ドアノブに手を伸ばす。ひんやりとした感覚が手に伝わった瞬間、そこに重みをかけて、思い切りねじる。勢いよく扉が開き、部屋の外に出た。
ここには泥棒はいない。なんとか王様に被害届けを出さなくては!と、右にいったり、左にいったり、戻ったりしていると、とある人物を見つけた。
僕の部屋の前、あれは、タンス?僕のタンスを一人で抱えている。重い荷物にも動じず、よっこらせと荷物を運ぶ人物。
「お前、何やってんだよ、マナ。」
僕が声をかけると、その人物はふらついてタンスの横から首を傾げながらこちらをみる。その体制でないときついようだ。
「何って、処分だよ処分。」
返事をしたのは、マナ。僕の仲間で、気の強い女子だ。マナが体制を元に戻すと、彼女の赤い髪が目の前を横切る。まるで軽いものを持っているように軽やかな足取りだ。
それより、先ほどの言葉が理解できず、
「お、おまえっ!処分ってなんだよ!」
聞き返した。
「は?聞いてないのか?お前の荷物を処分するんだよ。王様の命令だ。」
まるで当たり前だろ、と言うようにそいつは言い返した。
「あ、そうだ。カサハも来いよ。王様呼んでたし。」
マナが言った。
僕は、名前をカサハと言う。この街なら当然だが、ハンターだ。ハンターといって大きな仕事はしたことがないし、訓練だけだ。
マナがこっちにこい、とでも言うように指を曲げて、顔をこちらへ向ける。彼女が歩き出すと同時に、僕のえっ という声がでた。何がなにか分からず、とにかくマナの後ろをついていった。