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恋の路  作者: 本谷文途
20/24

コラボカフェとお礼

大変、ご無沙汰しております(_ _)


今岡と鳥塚、コラボカフェに行きます。

 今岡(いまおか)(いく)鳥塚(とりつか)(はじめ)とコラボカフェに行くことになり、ついに当日となった——。


「鳥塚にはマンガ全巻貸したし、知識も入れてもらったし、大丈夫だろう。それよりグッズのラインナップが問題だな……。ブラインドが多い。とりあえず買える個数は買う、推しが出なかったらどうするか……」


 リビングのソファーに座りながら、出る時間まで今岡がグッズについて考えていると、姉のゆみがやってきて訊いた。


「あれ……? 今日コラボカフェ行くんじゃなかったっけ?」

「ん? あぁ、行くよ。グッズ見て今何買うか考えてる」


 そうスマホの画面を見つめたまま答える今岡に、ゆみが「なるほどね」と後ろからラインナップを見て苦い顔をする。


「うわ……、ブラインド多いね……。コンプするの大変そう」

「そうなんだよ。今日は上浦(かみうら)と行くわけじゃないから、手分けしてとか出来ないからどうしたもんかと——」


 いつもこういうイベントは友人の上浦 俊一(しゅんいち)と一緒に行って、お互いの推しが出た時は交換したりなどしているのだが、今回はその上浦がいないのだ。

 今岡がうーんと唸ると、ゆみが聞き逃さなかったと言わんばかりに訊き返してくる。


「ふーん……? で、今日は誰と行くの?」

「鳥塚と行く——」


 そう答えてからハッとして振り返ると、ゆみがニヤニヤしながら意味深に「へぇ~?」と今岡を見つめて続けた。


「そう、鳥塚くんとね~、へ~。ってことは……、そっかそっか、育の恋人になれたのね~」


 よかったわね~、とゆみが胸の前でわざとらしく両手を組んでうっとりしていると、今岡が少し頬を染めて言う。


「い、一応、な……。あ、だからあれだぞ、鳥塚をネタにするなよ? 絶対」

「育……! それは鳥育ならいいってことよね?!」

「いや、そういう問題じゃねえよ——?!」


 とゆみに吼えていると、そろそろ出る時間だった。

 今岡はリュックを手に取ると、ゆみに注意して「それじゃあ、行ってくる」と出て行った。


「ふふ……、ついに育に彼氏が——。うふふふ、いいネタが浮かんできたわ……!」


 今岡に注意されたばかりなのに、ゆみは浮かんできたネタに、一人頬を緩ませるのだった——。


              *


「ったく……」


 すぐそういう方向にもっていくんだよな——とゆみに呆れながら今岡が待ち合わせ場所に向かうと、すでに鳥塚が待っていた。


「悪い鳥塚、待たせたか?!」


 少し駆け足で向かうと、鳥塚は今岡に気づいて「いや、今来たとこ」と答える。


「ほんとか?」

「……ほんとは三十分待った」

「は?」

「今岡と会えるの楽しみ過ぎて、早く出過ぎた」


 そう鳥塚が照れたように笑うので、今岡もつられて少し顔を赤くした。


「そ、そうなのか……。じゃ、じゃあ行くか……!」


 照れを隠すように、今岡は黒のメタルフレームをくいっと押し上げてから、先を歩き出す。

鳥塚も「おぉ」と頷いて、先を歩く今岡の後に続いた——。


              *


 コラボカフェ会場に入ると、今岡の好きなマンガである『異世界でハーレムを!』をモチーフに店内が飾られ、キャラクターの等身大パネルが設置されていた。


「うぉおお、シズク……!」


 今岡が一つの等身大パネルを見つけて、吸い寄せられるように近づいていく。

 そして目の前に着くなり、今岡は瞳をきらきらと輝かせた。


「か、顔がいい……!! はあ、美しい……っ、可愛い……。はっ――、悪い鳥塚、俺だけ盛り上がって……」


 我に返って鳥塚に謝ると、鳥塚は微笑んで今岡を見ていた。


「いや……、全然大丈夫。むしろこんなに生き生きしてる今岡見るの新鮮で嬉しい」

「そ、そうか……? あ、じゃあメニュー何か頼むか、カフェでもあるからな——しかも、描き下ろしコースターが特典で貰える、いいだろ?」


 と今岡がまたもきらきらとした瞳をするので、鳥塚はほんとに好きなんだなと思いながら、疑問に思ったことを訊く。


「へえ、コースターは選べるのか?」

「いや、残念ながら、ランダムなんだ」

「そっか。じゃあシズクが出たら今岡にあげる」

「いいのか?!」


 そうきらきらとした瞳を向けてくる今岡に、鳥塚はわかりやすいなと思いながら頷く。


「もちろん。今岡の喜ぶ顔が見たいからさ」

「鳥塚……! お前良い奴だな!」

「そうか?」

「ああ! よし、さっそく頼もう!!」


 嬉々として注文しに行く今岡を見ながら、鳥塚はこんなに楽しそうな今岡は初めてみるな……と、一人微笑むのだった——。


             *


 そして、コラボカフェを楽しんだ帰り道。

 今岡は幸せの溜め息を零していた。


「……はぁ~~、今日は最高の収穫だった……」

「楽しめたなら良かったな」


 隣で「満足……!」と胸に手を当てる今岡に、鳥塚は「そっか」と嬉しそうに笑う。


「だって、奇跡だぞ、ブラインド商品、全部推しのシズクが来てくれたし、コースターも等身大とミニキャラのシズク揃ったし、運を使い果たしたと言っても過言ではない」

「はは、言い過ぎじゃね?」

「いや、こんなに運がいいんだ、使い果たしたと言ってもいい」


 うんうんと今岡は頷いてから、ふと申し訳なさそうな顔になって鳥塚を見た。


「……というか、鳥塚は退屈じゃなかったか……? 今日はほぼ俺が楽しんでた感じだし、ちゃんと楽しめたか……?」


 「いや、楽しめって言う方が無理かもしれんが……」と今岡がしまったという顔をすると、鳥塚は「うーん」と考える仕草をしてから、ふっと笑った。


「退屈じゃなかったよ――。今岡の色んな表情見られたし、幸せだった」

「……そんなので幸せなのか? それは何か申し訳ないな……」


 と今岡は「んん……」と考えてから、そうだと手を叩いた。


「今、俺が出来ることであれば、鳥塚に今日付き合ってくれたお礼を何かするぞ」


 「どうだ?」と提案してくる今岡に、鳥塚は「じゃあ……」と笑顔で伝える。


「分かれ道まで手繋いで」

「え」

「いいじゃん、誰もいないしさ。お礼してくれるんだろ? あ、キスでもいいぞ、ほら——」


 冗談交じりのつもりで、鳥塚が目を閉じる。

 「するわけないだろ、バカか!!」と怒られるんだろうなと鳥塚が思っていると、ふにっと頬に何かが触れる感覚があって、鳥塚は目を開けた。

 目を開けると、頬を染めて口元を隠す今岡が視界に入って、鳥塚も思わず赤くなる。


「ぇ……、今岡、今……」

「な、何もしてない——」


 そう言いながらも赤いままの今岡は、絶対に頬にキスをしたはずだ。

 鳥塚は何とも言えない気持ちになって、今岡の手を取って走り出す。


「と、鳥塚――っ?!」

「ははっ、めっちゃ幸せ!!」


 「っ何言ってんだ?!!」とツッコむ今岡に、「本当だよ」と鳥塚は返して微笑む。

 今岡はまっすぐに微笑みをくらって、ドキッとした。

 走っているから苦しいのだと言い聞かせるには、今岡の心臓はうるさいくらい騒がしくて、自分が思っているより鳥塚が好きなのだと、実感させられるのだった——







その後。

鳥塚「今岡大丈夫…?」

今岡「ぜぇ…ぜぇ…はぁ、はぁ…大丈夫に見えるのか…?」

鳥塚「スミマセン…」

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