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恋の路  作者: 本谷文途
19/24

行かないか……?

お久しぶりです。


今岡「明けましておめでとうございます」

鳥塚「今年もよろしくお願いします!」

上浦「昨年もお世話になりました」

「何々? 俺の見てないとこで何かあったっぽいじゃん?」


 そう上浦(かみうら)俊一(しゅんいち)に言われ、今岡(いまおか)(いく)は少しギクッとする。

 ちょうどこの前、鳥塚(とりつか)(はじめ)と鳥塚に想いを寄せる糸井(いとい)と、もう一人の女子とで遊園地に行ったのだ。

 そこで糸井の気持ちを改めて知ったりした──。


「ちょっとな、友だちと遊園地に行ってきたりしてな」

「へえ、楽しかった?」

「……まぁ、楽しかった」


 上浦は珍しいなという顔で今岡に言う。


「オタク活動より?」

「うーん……」


 と今岡は考える。

 好きなキャラのグッズを買ったり、同じ趣味同士で話すのも楽しい。だが、遊園地で見た鳥塚の笑顔がそこで見られるかと言われたら、たぶん見られないだろう。


「オタク活動とはまた違った楽しみがあった、とは思う……」

「オタ活のが楽しいって即答するかと思った。まあ、今岡はオタ活より今はリア充みたいな活動にもうちょと興味持った方がいいかもね。鳥塚がキラキラしてるのもあるけど──」


 と上浦は「合わせるの大変だね」と苦笑いする。


「俺は別に大変とか思わないけどな」

「違う違う。鳥塚がだよ」

「そうなのか?」

「当たり前でしょ」


 と上浦は「わかってないなぁ」というように続けた。


「オタクが現代の流行に乗るのは簡単でしょ、一般人を演じるだけだから。でも一般人はそれを知ったらもう元には戻れないんだから……。俺たちがそうであったように──」


 と上浦が遠い目をする。今岡も思い当たる節があるので「あぁ……」と一緒に遠くを見た。


「ま、そんなことはいいんだよ──。ところで今岡『異世界でハーレムを!』の最新情報知ってるか?」

「え、何かあったか?」

「コラボカフェ、やるらしい」

「マジで?!!」


 思わず大きい声が出た今岡に、落ち着け落ち着けと上浦がなだめる。


「そして、それが今度の土曜から。もちろん行くよな」

「行くに決まってる……! シズクグッズコンプする……!」


 グッと拳を握る今岡に、上浦は笑う。


「よし、一緒に行こう──と言いたいところだが、今回はフォロワーさんと行くことになったから、一緒には行けないんだ」

「え、マジで」

「おう。最近一緒に帰ってなかったのも、フォロワーさんと打ち合わせみたいなのしてたからなんだ」

「マジか……」


 「じゃあ、今回はぼっち参戦……」と今岡が肩を落としていると、上浦はポンと肩を叩いて笑った。


「何言ってんだよ、別に一人になるわけじゃないだろ。あっちに行けば同志がいっぱいいるわけだし、それにさ──」


 グッと親指を立てて見せて、上浦は続ける。


「何のための恋人だよ。一緒に行けばいいだろ。これもいわゆるデートってやつだぜ」

「はっ?」


 と今岡は思わず顔が赤くなった。

 それを見て、上浦は楽しそうに笑う。


「鳥塚ならOKしてくれるんじゃね?」

「……してくれるかぁ?」

「誘う気はあるんだな」

「……」


 上浦がニヤニヤしてみて見てくるので、今岡はそれには答えず「うるさい」と机に伏せるのだった。


             *


 そして放課後、今岡は鳥塚と帰りながら、コラボカフェについて話していた。


「で、俺が好きな作品のコラボカフェやるんだけど、鳥塚さえよければ一緒に行かないか……?」

「それって、デートってこと?」

「は……、いやっ、そんな大層なものじゃないだろ……、うん──」


 と今岡は少しおどおどしながら眼鏡を押し上げる。

 鳥塚は誘ってくれたことが嬉しくて、顔が緩むのを感じながら返事をした。


「行く。コラボカフェとか初めてだから、新鮮かも。今岡は楽しみ?」

「ああ──! コラボカフェは描き下ろしの絵だったりするから、そこでしか手に入らないグッズもあるし、期間を分けてのグッズ販売もあるし、メニューごとにコースターとか、ポストカードとか付いてくるんだ。全種コンプしたくなるよな!! ……って、鳥塚にはわからないよな、悪い……」


 思わず熱くなってしまった、と今岡は眼鏡を押し上げる。


「はは、今岡がスゲー楽しみにしてるのはわかった」


 と鳥塚は笑う。

 今岡はもう一度眼鏡を押し上げながら、鳥塚に言った。


「じゃあ、とりあえず作品を知ってもらってから行った方が楽しめるだろうし、その……」


 と今岡は少し赤くなって続ける。


「一緒に行くなら、一緒に楽しみたいしな……。これから予習しないか」

「予習?」

「そうだ。マンガ貸す。俺んち行くぞ」

「え、いいの?」

「あぁ。マンガ、出てる巻は全部持ってるし、解説も出来るぞ」


 任せておけと胸を張る今岡に、鳥塚はそうじゃなくてさ、と少し苦笑いして言った。


「今岡に、何かしちゃうよって意味なんだけど……」


 鳥塚が少し頬を染めて今岡を見つめると、今岡は顔を赤くしてから早口になる。


「おっ、まえ、は……っ、すぐそういうこと──ッ!! 無しだ。マンガは学校に持っていく。家になんか上げてたまるか──」


 スタスタと歩みを速める今岡を「ごめんごめん、冗談だから──! いや、ちょっとは本気だけどさぁ……!」と鳥塚は少し顔を赤くする今岡を見て、こういうとこ可愛いんだよなぁ、と思いつつ後を追うのだった──







翌日。

今岡「とりあえず、五冊な。読み終わったら言ってくれ(どんと机に置く)」

鳥塚「あ、ありがとう……(昨日言わなきゃ今岡んち行けたんだろうなぁ……くそ~っ!)」

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