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恋の路  作者: 本谷文途
17/24

予感

お久しぶりです…!


遊園地にやってきましたが……。

「最初は何乗ろっか」

「ジェットコースター行っちゃう?」

「それ良いかも~!」


 鳥塚(とりつか)(はじめ)の問い掛けに糸井(いとい)が提案し、もう一人の女子が頷く。

 今岡(いまおか)(いく)も、苦笑いしつつ頷いた。

 ジェットコースターに向かいながら、今岡は一緒に行く相手を確認すれば良かったと後悔していた。


 この前鳥塚から、友だちと遊園地に行こうと誘われた時、同性の友だちだろうと思っていたのだが、今実際に居るのは女子だ。

 鳥塚からすれば普通なのだろうが、今岡からすれば普段あまり接点のない女子と共に行動するのは気が引けた。

 しかも糸井は鳥塚に好意を抱いているし、今岡と付き合っていると知っていても諦めないと言っていた。


 ……最初から気が重いな、と今岡は少し前を歩く三人に遅れをとらないようについて行く。


「今岡、大丈夫?」

「え、あぁ、うん、大丈夫──」


 ふいに振り向いた鳥塚に訊かれ、今岡は苦笑いで答えた。

 ここで大丈夫じゃないと言ったら、きっと雰囲気を悪くしてしまうだろう。

 今岡は楽しむ努力をしようと、小さく自分の頬を叩いた。


            *


「うっ……気持ち悪……」


 ジェットコースター後、今岡は気分を悪くしてベンチに座っていた。


「大丈夫か?」

「ダメかもしれん……」


 心配してきた鳥塚に、今岡は青い顔で答える。

 糸井たちは飲み物を買ってきてくれるというので、鳥塚が傍にいた。


「せっかく誘ってくれたのに悪いな……ちょっと動けそうにないから、鳥塚は遊んでてくれ……。良くなったらラインするし、場所教えてくれれば行くから──」


 と今岡は力尽きたようにベンチに倒れ込む。

 鳥塚が今岡に触れようと手を伸ばした時、糸井たちが戻ってきた。


「飲み物買って来たよ──」

「あ……、ありがとう。今岡、ここ置いとくぞ……?」


 糸井からスポーツドリンクを受け取って、鳥塚が近くに置いた。

 今岡は小さく返事をして、置かれたペットボトルを掴む。


「今岡、ほんと大丈夫?」


 と鳥塚が心配そうな顔で覗き込んでくるので、今岡は平気だからと手を振る。


「休んでれば大丈夫だから、気にすんな……。だから、行ってこい……」

「でも……」

「いいから、大丈夫だって言ってるだろ。それに……これ以上迷惑掛けられないし、先行っててくれ──」


 今岡にそう言われ、鳥塚は少し不安げな顔で今岡を見詰めた後、気持ちを切り替えてから糸井たちに顔を向けた。


「……後で連絡くれるって──次どこ行く?」


 遠くの方で鳥塚が話しているのを聞きながら、今岡は「楽しんでな……」とそっと目を閉じた。



 少しして今岡は起き上がり、貰ったスポーツドリンクを飲む。


「……はぁ、落ち着いた……」


 連絡しようかとスマホを出してラインを開くと、鳥塚からメッセージが数件来ていた。

 どれも今岡を心配するもので、今岡は全て読んでから、小さく微笑む。


「……心配させてごめん、今どこにいる……向かう……っと」


 送信ボタンを押すと、数秒で既読が付いた。

 それからポンと「よかった!」というスタンプと場所が送られてくる。


「ぷっ……、お化け屋敷か……了解──と」


 と今岡は返事をして、ベンチから動き出した。


            *


 今岡が合流すると、鳥塚の顔が安心したように緩んだ。


「ご迷惑お掛けしました……」


 と今岡が頭を下げると、鳥塚が笑って言う。


「謝んなくていいよ。良くなったならよかった」

「うん。良かった」

「良かった良かった!」


 と糸井たちも頷いてくれたので、今岡はほっとして笑った。


「……で、お化け屋敷ね、さっき決めたんだけど、今岡くんは私とになったの」

「えっ、あ、そうなんだ……」

「うん。よろしくね」


 と糸井がにこりと笑う。その笑顔に、今岡は少しドキリとした。ときめきではなく、何かありそうな予感がした……。

 ちらっと鳥塚の方を見ると、鳥塚はもう一人の女子と話していて、気付いていない。


「今岡くん、楽しもうね」

「え? あ、あぁ……」


 もう一度糸井に話し掛けられ、お化けよりも、糸井と二人きりになる方が不安な今岡だった──





鳥塚「良くなってよかった(笑顔)」

今岡「…おぉ、ありがとう…(照)」

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