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恋の路  作者: 本谷文途
14/24

少しずつ

お久しぶりです。

自分たちのペースで。

「おーい、上浦(かみうら)ー、ちょい教科書貸してー」


 前のドアから、隣のクラスの男子が上浦に声を掛けた。

 上浦 俊一(しゅんいち)は話していた今岡(いまおか)(いく)にちょっと行ってくると言って、前のドアに向かう。



「何、入尾(いりお)、教科書忘れなんて珍しい」

「そうなんだよー、昨日ちょっと信乃(しの)とお楽しみだったからさー」


 「羽目外しすぎちゃってな」と入尾 理巧(りく)がそう言って笑った。

 入尾は、幼馴染みである加住(かすみ)信乃と付き合っている──。


「ほお、内容が気になるね」

「だろ? 特別に後で聞かせてやるよ、昨日のあれやこれやをな」


 とロッカーから教科書を出す上浦に、入尾がにやついて言う。


「加住に怒られるぞ」

「言わなきゃバレないって」

「何がバレないのかな、理巧──?」


 とそこに少し眉間にシワを寄せた加住がやってくる。


「次移動教室だぞ、早くしないと」

「はいはい──上浦、ありがとな」

「はいよ」


 と上浦は答えて、並んで廊下を歩いて行く二人を見送り、教室に戻った。



 上浦が教室に戻ると、今岡がぼそっと言葉をこぼした。


「……上浦は、顔が広そうだよな」

「そう? でもさっきの──入尾は、中学の友だちだから」

「そうなのか」

「そうそう──。あと、入尾は幼馴染みの加住と付き合ってるんだ」


 「ちなみに、男ね」と今岡に耳打ちする。


「え」

「ま、何か訊きたいことあったら、入尾に訊くのも手だね。相手の加住でもいんじゃないかな」


 と上浦が言うので、今岡は「そうか……」と少し考えて「でも」と続けた。


「俺、話したことないんだけど……」

「大丈夫大丈夫。なんなら紹介するし、二人」

「お、おぉ……」


 上浦に笑顔でそう言われて、今岡は鳥塚(とりつか)とのこれからについて、色々聞いておくのもありかもしれないよな……と少し思う。

 今岡は鳥塚 (はじめ)と付き合っているのだが、まだ距離感が上手く取れないのだ──。


「じゃあ……、お願いします」

「おう、任せろ──」


 グッと親指を立てる上浦に、今岡は少し苦笑いした。


            *


 そして昼休み。鳥塚は女子に捕まっているので、その隙に上浦は今岡を連れ出した。

 上浦に連れられて、今岡は空き教室に向かう。

 空き教室にはすでに二人が来ていて、何気ない会話をしているようだった。


「お、上浦遅いぞ」

「そちらが今岡くん?」


 と男子二人が今岡を見て訊く。

 二人とも上浦と同じくらいの身長で、今岡は少し背が高くていいなと思った。


「そうそう。鳥塚と付き合ってるの」

「へえ、あのイケメンか。なんていうか、珍しいな」

「理巧──」


 上浦たちの話を聞きながら、今岡はほんとに知り合ってよかったのだろうか……と思う。


「ま、あのイケメンが好きになるってことは、何かあるんだろ──。とりあえず、俺が入尾理巧。よろしく」

「俺は加住信乃。俺たちのこと、気軽に呼んでいいから。よろしく」

「えっと、今岡 (いく)です。色々聞いたりすると思う……けど、よろしくお願いします……」


 と硬い表情で挨拶する今岡を、上浦はとんと背中を叩いてリラックスさせる。


「大丈夫大丈夫、入尾だって取って食ったりしないから」

「そうそう、俺には信乃がいるし?」

「おい……!」

「……てことは、加住が──」


 と今岡が口に出しそうになって、加住が止めた。


「今それはいいから!」

「そうだぜ。お楽しみの時なんかは、こいつめちゃくちゃ……って! 何すんだよ!」

「うるさい!! 黙れ!!」


 と赤くなった加住が入尾を軽く殴って吠えるので、今岡は少し笑う。

 隣で上浦も満足そうに二人を見ていた。


「今日は信貴(しき)のお迎え来なくていいから」

「ええ、なんでだよ」

「信貴に悪影響だからだ!」

「加住は兄弟がいるのか……」


 と今岡がぽそりと呟いたのを引き金に、加住がキラキラとした目を今岡に向ける。

 隣で入尾が「うわ……」という顔をして、上浦も若干顔を歪めた。


「信乃はブラコンだぞ……」

「今岡、後は頼んだ」

「え……? ちょ、何──」


 と少しずつ距離をとっていく二人に今岡が戸惑っていると、加住が満面の笑みで口を開いた。


「信貴について、話していいんだよね?」

「……どうぞ──」


 「何かあったらいつでも聞くからな! じゃ!」と入尾が出ていき、上浦もごめんというように手を合わせて出て行った。

 今岡は嬉々とした目で見てくる加住に、休み時間が消えていく……と思いながら、話に付き合うのだった……。


              *


「疲れた……」


 放課後、休み時間にしっかりと休めなかった今岡は、机に伏せていた。

 上浦は図書室に、鳥塚はトイレに行っている。


「……あの二人は、上手く付き合ってるんだろうな」


 入尾と加住の二人を思い出し、二人からは無理をしていない感じが伝わってきて、自分たちと比べると明らかに違った。

 話している時の空気感や表情、それらが全て自分たちと比べ物にならなかった。


「俺も、普通にできたらな……」


 そう呟いて、今岡は目を閉じる。

 鳥塚のように素直に気持を口にしたり、行動に移したりするのは難しい──。


「……何してんの」


 今岡がふと目を開けると、目の前に鳥塚の顔があった。

 鳥塚はいやいやと手を振って誤魔化す。


「今岡伏せてたから、寝てんのかなと思って覗いただけ! 別にキスしようとかそういうんじゃないから!!」

「……」

「スイマセン、嘘です……」


 じっと見つめるとしゅんとして謝ってくる鳥塚に、今岡は少し笑う。


「ふ……。ま、少しずつ、進んでいけばいいよな……」

「……何が?」

「いや、こっちの話」


 鳥塚は一人で納得する今岡を不思議に思いつつ、写真にすればよかったなと後悔するのだった──





鳥塚「もっと早くしてれば出来たかもしれない……」

今岡「は?」



もし、入尾と加住の話があるなら、ちょっと読んでみたい…!という方がいらっしゃいましたら、ムーンの方で連載中の「きみのいちばん」に目を通してみてください(^^)

話数は少ないですが、これから増えていきますので。

よろしければぜひ。

では、告知失礼しました(_ _)

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