仕事の終わらない風紀委員
はじめての作品です。拙い表現も多々あり、更新も遅いという有様ですが、見ていただければ幸いです。
ルウの構えた切っ先が震える。女だからといって鍛錬をサボったことはないし、この剣が重いわけでもない。ただ、目の前で起こっている事象を思うと、恐怖のせいかそれとも別の感情のせいか、意図せず震えてしまう。
こんなことを望んだわけではなかった。こんなことを望んでこの学園に入ったわけではなかった。ただ自分はこの学園の平和を守るために風紀委員になったのに。何故今はこの立場が、風紀委員副委員長という立場が、酷く重苦しく感じるのだろうか。
ツツジ色の髪の毛から滴る汗すら気にせずに真っ直ぐ、前に立つ担任を見つめる。そこにいる担任は穏やかな笑みを携えたまま、ルウの瞳と切っ先とを交互に見やった。
耐えきれなくなって、視線をずらす。瞬間、目があったのは担任の後ろにいる最大の天敵である不良。元はと言えばこの不良を更生しようとしていただけなのに、とほんの少し彼に怒りを覚えた。
「……先生、なんでこんなことをしたの……?」
声が震えた。それを察したのか、担任は更に笑みを深める。対象的に不良は不愉快そうに頭をかき、意識を足元へ。そこにあったのは、武闘科の男子生徒の横たわる姿と、その生徒が持っていたはずの、粉々に砕けた黒い宝石のようなものだった。
「なんでかって? ……面白いこと聞くじゃねえか、あんた」
「……あなたに聞いてるんじゃない。私は先生に聞いてるの」
「だってよー、カゲシロセンセイ?」
「……ごめんね、リンギットさん」
儚く、消え入りそうな微笑を浮かべる担任。そんな担任の姿を見ても、不良少年は不愉快そうな顔を一つも変えない。
――どうしてこうなったのだろう?
そんな漠然とした疑問がルウの胸中を支配する。絡まった糸を慎重に解き手繰り寄せるように、彼女はその意識を数日前の記憶と混濁させた。