前史その5 2005-2007
ついに悲願を果たした。このリーグで戦い続けて6年目となる2007年シーズン、尾道はようやく3位という成績を勝ち取りプロリーグへの昇格を決めた。本当に長かった。苦しかった。しかしそれも今こうして大輪の花を咲かせたような笑顔に飲み込まれれば歓喜を増すためのスパイスと感じられる。
とは言え、ここにたどり着くまでに失ったものも数多い。その最たるものは土生監督退任という痛みであろう。02年は10位、03年は6位、04年は6位という成績の推移で今年こそはと意気込んだ05年だったが、終わってみれば順位は過去最低の13位。昇格どころかあわや地域リーグとの入れ替え戦という低迷を受けていよいよ決断を下すに至った。
土生と辻社長は先述の通り少年時代からの友人であった。大人になってからもその友情ゆえにここまで来られた。しかしその甘く麗しき日々もいずれ終わる。非情な決断を一方は下し、一方はそれを受け入れる。そんな悲しい通過儀礼を経て、尾道は真の意味でプロクラブへの変貌を遂げたと言えるだろう。
そして経験豊富な小松田監督を招聘。1年目はもう一歩だったが2年目となる07年にようやく報われる瞬間が訪れた。まさに歓喜の時。しかしそこに至る道はあくまでも泥臭く、そしてそれが尾道の歩み方となっていった。
2005
加入
首脳陣
GK
1 遠藤見知祐 19歳 磐田
16 岩井雄大 22歳 福岡国際大
30 桑田大輔 18歳 福山中央高
DF
3 大池長佳 26歳 鳥栖
5 姜勇弼 28歳 横浜C
17 篠原恭平 22歳 京奈大
24 渡辺一也 27歳 沖縄
MF
7 ミゲル 28歳 オリゾンテ
10 鈴木徳次 31歳 神戸
15 金重大祐 22歳 上方大
18 角本良 18歳 呉西高
23 木村全成 20歳 千葉SUNFC
29 薮本晋悟 25歳 東京V
FW
22 串田隆太 23歳 AC宮崎
25 長山集太 18歳 光大高
退団
首脳陣
GK
久保田誠一 引退
渡辺博秋 フロント入り
DF
矢田部剛 地域リーグ移籍
出雲哲也 徳島
石井智久 豊橋
浜雄一郎 引退
MF
尾崎淳朗 引退
バウディール ブラジル帰国
北島祥文 引退
吉沢士伸 武蔵野SC
国久克春 広島復帰
FW
池田寛一 北陸キッカーズ
中郷六郎 秋田
杉山勝喜 県リーグ移籍
背番号変更
15→4 里尾宝
24→6 山田哲三
19→9 土井空
20→13 千賀尚斗
25→19 板部岡翔吾
もはや昇格が絶対条件というシーズン。その意気込みを示すかのように積極的な補強を見せた。国内移籍だった前年のバウディールとは違い、林GMが直接ブラジルに渡って視察と交渉を経て獲得した初の外国人選手であるミゲルの獲得はまさにその象徴であった。
プロでの経験豊富かつ前年も一定以上の試合出場数があった鈴木、姜、大池といった実力派に加えて、弱点となっていたGKには当時期待の若手だった遠藤の補強に成功。出雲、矢田部、石井といった守備陣の有力選手は抜けたもののトータルではプラスのほうが大きいと目されており、今年こそ昇格かという前評判は高かった。
しかしいざシーズンが開幕すると全然勢いに乗れないまま低空飛行が続いた。問題は攻撃力不足にあった。肝心の新外国人ミゲルは確かにうまかったが動きが緩慢でチームにフィットせず、シーズン途中に加入した抜群の個人技を誇る薮本は大いに奮闘したが一人で解決するレベルではなかった。
また衰えが明白な野村や三妻の起用にこだわるなど采配も非難の的となった。結果的に過去最低の13位に終わり、この年限りで土生監督は退任。田辺、泉田両コーチも殉じた。99年から積み重ねてきた一つの歴史がまさに過去となった瞬間であった。
そんな年の基本的なスタメンは以下の通り。GKは遠藤が安泰。センターバックは強烈なフィジカルとリーダーシップで兄貴と親しまれた姜がまず定着し、もう1枠は前年レギュラーの千賀と新人篠原、移籍加入の大池らがしのぎを削った。左サイドは負傷の三妻の穴を渡辺が器用に埋めた。
ボランチは山田と鈴木で安定していたが攻撃力はそれほど高くないコンビだった。そこで重要なのは二列目の働きだったが、ミゲルは期待外れで野村もスピードの衰えが顕著という苦しさでは機能するはずもなかった。FWも木暮はまだブランクを感じさせる出来で本領発揮ならず、背番号が若返った土井も前年までの鋭さに欠けた。前線の迫力不足が苦戦の原因なのは明白だった。
GK 1 遠藤見知祐
DF 4 里尾宝
DF 5 姜勇弼
DF 3 大池長佳
DF 24 渡辺一也
MF 8 野村尊之
MF 6 山田哲三
MF 10 鈴木徳次
MF 29 薮本晋悟
FW 11 木暮丘明
FW 19 板部岡翔吾
2006
加入
首脳陣
小松田実 49歳 湘南
布山裕一 46歳 大分
白井正人 37歳 湘南
GK
1 田代道夫 30歳 豊橋
DF
4 三浦貴洋 24歳 愛媛
18 高家亮 18歳 G大阪ユース
19 宮本明矢 26歳 C大阪
MF
8 ファビーニョ 33歳 大宮
21 小松友弘 22歳 駿水大
27 高橋一明 22歳 東北体育大
FW
17 筒田三成 29歳 徳島
23 エンヒキ 19歳 マカパ
29 小野田俊 18歳 新南工業高
退団
首脳陣
土生健次 サッカー界から離れる
田辺龍之介 京極大コーチ就任
泉田隆二 横浜M下部組織コーチ就任
GK
遠藤見知祐 磐田復帰
田辺龍之介 引退
DF
三妻数広 引退
里尾宝 湘南
大林恒和 県リーグ移籍
MF
ミゲル ブラジル帰国
野村尊之 地域リーグ移籍
阿部満陽 フロント入り
木村全成 引退
FW
土井空 鳥取
背番号変更
17→2 篠原恭平
29→7 薮本晋悟
19→9 板部岡翔吾
友情や元同僚といった土生監督の個人的なコネによるチーム作りの限界を露呈した昨シーズンを経て、生まれ変わった尾道は新監督として湘南などの監督を長らく務めてきた小松田実を招聘。首脳陣は山奥以外交代し、また選手もベテランの野村と三妻がチームを去った。
一方で新戦力補強は意外にも控え目。無理な補強で背伸びするのではなく現有戦力の強化による着実なステップを望んだ結果である。その中でも柏や大宮で活躍したベテラン外国人ファビーニョは注目されていた。
そしてシーズンに突入すると、前年までとは比較にならないほど組織的なサッカーを展開して一時期は首位に立つなど優勢な戦いを進めていたが終盤息切れして昇格ならず。新フォーメーション導入したが現有戦力だけでは不足するポジションもあり、しかし現実より理想優先で戦ったので結果的に失速を招いた印象。
そんな年の基本的なスタメンが以下の通り。GKは岩井と新加入の田代で出番を分け合ったが最終的には岩井が優勢だった。DFはスリーバックを再導入。しかし以前のフラットスリー的な形ではなくより柔軟な形となっており、その動きにいち早くフィットした千賀がピッチ内の頭脳として不動のスタメンに定着した。ボランチは安定コンビに度々割って入る金重のパワフルなプレーがいいアクセントになっていた。
サイドハーフの左は薮本で安泰だったが右は苦労した。当初は長山や新人の高橋を試したが迫力不足で、結局ポリバレントの渡辺頼み。1試合だけ試された串田は明らかに無理すぎて逆に必見だった。中央のファビーニョはさすがの力量。FWはようやく元通りの動きが蘇った木暮が得点を量産。体を張った板部岡の動きとも相性抜群で強力な戦力となった。
GK 16 岩井雄大
DF 2 篠原恭平
DF 13 千賀尚斗
DF 5 姜勇弼
MF 6 山田哲三
MF 10 鈴木徳次
MF 24 渡辺一也
MF 8 ファビーニョ
MF 7 薮本晋悟
FW 11 木暮丘明
FW 9 板部岡翔吾
2007
加入
首脳陣
GK
1 野沢裕 28歳 大宮
DF
3 足立匠 32歳 山形
17 平将吾 18歳 修央館高
20 砂岡祐 20歳 京都
25 佐々木帆麻 18歳 呉学園高
26 河合孝宏 25歳 熊本
MF
13 安倉陸 26歳 水戸
31 チッコ 25歳 デルソル
FW
9 前川健次 28歳 天竜自動車
23 田村清正 22歳 大都大
退団
首脳陣
GK
田代道夫 地域リーグ移籍
DF
篠原恭平 熊本
大池長佳 フロント入り
三浦貴洋 地域リーグ移籍
MF
角本良 フロント入り
FW
板部岡翔吾 水戸
筒田三成 引退
エンヒキ ブラジル帰国
背番号変更
25→2 長山集太
13→4 千賀尚斗
現有戦力の強化が第一と明言していた去年とは違い、正月に「今年のテーマは有言実行。昇格を目指すのではなく必ず昇格する」と辻社長は宣言した。実際に社会人を代表するストライカーの前川、プロとして長く戦ってきた野沢や足立といった選手を獲得して本気度を示した。
そしてシーズンでは長山や高橋といった去年出番を得た若手が生き生きとピッチを躍動。小松田監督の戦術もすっかりチームに浸透しており、非常に好調な滑り出しを見せた。途中で停滞しかかった時期もあったがテクニシャンのチッコを獲得するなど時宜にかなった補強も見せて失速を防いだ。
そして昇格、プロへの扉をこじ開けた。そんな年の基本的なスタメンは以下の通り。ディフェンスラインは屈強な篠原姜からスピードと知性の宮本砂岡に変わって、これが組織的なサッカーとうまく噛み合い、個の力以上にチームトータルでどれだけやれるかが大事だと学んだ。長山と高橋の両サイドの台頭も大きかった。
GK 1 野沢裕
DF 19 宮本明矢
DF 4 千賀尚斗
DF 20 砂岡祐
MF 6 山田哲三
MF 10 鈴木徳次
MF 2 長山集太
MF 31 チッコ
MF 27 高橋一明
FW 9 前川健次
FW 11 木暮丘明




