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前史その4 2002-2004

 驚異的な勢いでアマチュアリーグの最高峰まで登り詰めた尾道ジェミニFC。ここを突破すれば念願のプロリーグ。クラブ名もそれまでのジェミニに加えてイタリア語などで戦士を意味する単語を加えて現在のジェミルダートと改名したのもまさにこの2002年である。


 後は結果を残すのみ、というところで非常に長く足踏みしたのがこれからの時期となる。それまでがスムーズに進み過ぎていたのもあるが、とにかくこの時期は停滞、苦闘といった印象一色に塗り固められがちとなっている。なかなか革新的なトピックスがないのでこうもなるか。


 しかし表面上は沈黙を守る中でも、地道な進捗がなされていた。ユース、ジュニアユースなど下部組織の整備や本拠地を備後運動公園陸上競技場に定めたのもこの時期。


 土生が現役選手としては引退し監督に専念したのもまさにここからだが、それゆえに指導力への疑問符がつきまとうようになったのも皮肉か。「このままの体制じゃ駄目なのではないか」という疑念と「でも土生がいたからこそ尾道はここまで来られたんだから今の体制で昇格したい」という情熱がともにくすぶる中の曇天。しかし光の時は着実に近づきつつあった。




2002


加入


首脳陣


GK


1 渡部(わたべ)正毅(まさき) 27歳 徳島


DF


18 矢田部(やたべ)(つよし) 18歳 聖緑高

25 斎藤(さいとう)(りょう) 18歳 大阪電気学園高


MF


6 泉田(いずた)隆二(りゅうじ) 33歳 新潟

15 後藤(ごとう)拓哉(たくや) 25歳 水島重工

16 吉沢(よしざわ)士伸(しのぶ) 22歳 文京大

23 (はやし)直樹(なおき) 28歳 市原


FW


11 木暮(きぐれ)丘明(きゅうめい) 26歳 大分

20 伊藤(いとう)玄太(げんた) 20歳 川崎



退団


首脳陣


GK


野呂文一 県リーグ移籍


DF


浅井大和 地域リーグ移籍


MF


栗崎雄二 引退

糸川公平 地域リーグ移籍


FW


奥田雅道 地域リーグ移籍

小林拓馬 引退

片本太一 C大阪

中山輝明 県リーグ移籍


背番号変更


18→7 小路智

11→9 中郷六郎


 猛烈な勢いの昇格に見合った実力者を多数補強し、1年で突破してやると意気軒昂だった。特に浦和や福岡などでもプレーしたベテランの泉田と得点感覚に優れるストライカー木暮は上のレベルでも十分に通用するとお墨付きだった。昨年大暴れの片本が引き抜かれたがそれを補って余りある補強と言われた。


 それでシーズン序盤はうまくいっていた。しかし6月に絶対的中心者であった土生が負傷により離脱し、ここからチームの歯車が確実に狂いだした。土生の他にも小路、石森、浜など主力に怪我人が続出。緊急補強した林はよく働いたが一人で補えるものでもなく、特に夏場の大型連敗で昇格の可能性は一瞬にして霧散した。


 この年の基本的なスタメンは以下の通り。おそらく純粋な戦力としては去年のほうが強かったのではないか。土生は前述の通りシーズン途中に離脱して、以降は選手として一線を退いた状態となる。


 期待の泉田はオフェンスで存在感を発揮したが運動量の低下が気になった。それを補う石森は途中で離脱し控えの小玉も全体的に物足りなかったため、本来オフェンシブな選手と見られていた吉沢山田らをとっかえひっかえ。いかにも場当たり的な起用であり、この中から山田がボランチとして台頭する事になるとこの時点で予想できた人はどれだけいただろうか。


 最後尾を担うベテラン田辺も自身の衰えと対戦相手のレベルの向上により絶対的な存在とは呼べなくなった。それにしてもこの年のGKが渡部渡辺田辺と同じような響きの選手ばかり集まっていたのは、あくまでも偶然とは言えなかなか味わい深い出来事であった。


GK 31 田辺龍之介

DF  4 出雲哲也

DF  2 野島大進

DF 12 向憲

MF 13 小玉泰建

MF  6 泉田隆二

MF  8 野村尊之

MF 23 林直樹

MF 15 後藤拓哉

FW 11 木暮丘明

FW 20 伊藤玄太




2003


加入


首脳陣


GK


28 萩本(はぎもと)亮平(りょうへい) 32歳 市原


DF


3 手塚(てづか)康徳(やすのり) 26歳 ガルフ石油

5 芝田(しばた)和也(かずや) 29歳 甲府

15 石井(いしい)智久(ともひさ) 24歳 JC富山


MF


13 北島(きたじま)祥文(よしふみ) 23歳 愛媛

20 碓井(うすい)兵吾(ひょうご) 19歳 広島

26 (もり)重実(しげみ) 22歳 広島教育大


FW


19 土井(どい)(そら) 22歳 東北体育大



退団


首脳陣


GK


豊田晃 フロント入り


DF


野島大進 草津


MF


小玉泰建 フロント入り

後藤拓哉 愛媛


FW


加藤努 引退

伊藤玄太 川崎復帰


背番号変更


23→2 林直樹

3→22 浜雄一郎

5→23 石森正大


 怪我人続出で一気に厳しくなった前年の反省を踏まえて、選手の質を高めるような補強を実行した。だから高校生の獲得はゼロで大学生や元プロを多く集めて、スピードのある土井などは即戦力として十分に働いた。


 しかしやはり全体的には層が薄いままだった。それはクラブとしての体力不足で効果的な補強ができなかったのもあるが、土生監督の資質にも問題があった。例えばキーパー、前年の時点で反応が鈍くなりつつあった田辺を今年もレギュラーとして期待したのはプロ時代は同じユニフォームを着て尾道でも県リーグから付き従ってきた盟友に対する信頼ゆえであった。


 しかし時は平等に積み重なるもので、全盛期ならともかく不惑を迎えて反応速度などが衰えた今となってはもはや戦力として計算するには厳しく、今までならまったく問題なかったであろう場面でのミスが散見された。シーズン途中に萩本を獲得したものの時既に遅しであった。


 他にも前年に負傷した浜と石森は一度退団が発表されたものの「今まで貢献してくれたんだから」と再契約したが、結局両者ともに傷が癒えず出番はなかった。土生は人情味あふれる情熱的なナイスガイだが、冷酷なまでの決断を常に強いられる指揮官としてはそれが判断の甘さに繋がった部分は否めない。


 この年の基本的なスタメンは以下の通り。当時の日本代表の戦術を模したフラットスリーもいい加減時代遅れになってきたのでさっくりと4-4-2のオーソドックスなフォーメーションにチェンジしたが、これで2年目の矢田部は台頭したものの守備が不得手なのにポジションが下がった林はやりにくそうだった。その中で控え要員として中央もサイドも難なくこなす石井が重宝された。


 ボランチはまずセンス抜群の碓井が定着し、そのサポート要員として運動量豊富な山田がスタメンに入ってきた。二列目の右は野村、左は吉沢と小路の争い。FWは木暮がアキレス腱断裂という悲劇に見舞われて、チーム構想もこれで大いに狂った。得点源の喪失は絶望的だった。


 そんな中で頑張ったのが中郷。豊田が引退して土生以前を知る選手はもう彼一人となったが、地味なプレーを愚直にこなす姿勢は山田らに引き継がれて尾道サッカーの源流となった。技術レベルは低いもののスピード豊富な土井も献身的なプレーでよく頑張った。


GK 28 萩本亮平

DF 18 矢田部剛

DF  4 出雲哲也

DF  3 手塚康徳

DF  2 林直樹

MF  8 野村尊之

MF 24 山田哲三

MF 20 碓井兵吾

MF 16 吉沢士伸

FW 19 土井空

FW  9 中郷六郎




2004


加入


首脳陣


GK


1 久保田(くぼた)誠一(せいいち) 24歳 武蔵銀行

12 奥沢(おくざわ)ロビン(Robin) 22歳 北海道拓殖大


DF


2 三妻(みつま)数広(かずひろ) 36歳 水戸

15 里尾(さとお)(たから) 20歳 阿蘇医療専門学校

20 千賀(せんが)尚斗(なおと) 22歳 進心大

21 大林(おおばやし)恒和(つねかず) 18歳 岐阜中央高


MF


6 尾崎(おざき)淳朗(あつお) 29歳 横浜C

10 バウディール(Valdir) 38歳 神戸

18 阿部(あべ)満陽(みつはる) 22歳 門司大

30 国久(くにひさ)克春(かつはる) 19歳 広島


FW


7 池田(いけだ)寛一(かんいち) 26歳 徳島

25 板部岡(いたべおか)翔吾(しょうご) 18歳 天竜学院高

28 清水(しみず)隆太(りゅうた) 18歳 南洋高



退団


首脳陣


GK


渡部正毅 ユースコーチ就任

萩本亮平 甲府


DF


手塚康徳 鳥栖

芝田和也 引退

向憲 松本

井上知重 地域リーグ移籍

斎藤亮 引退

土生健次 監督専念


MF


林直樹 横浜C

泉田隆二 トップチームコーチ就任

小路智 栃木

碓井兵吾 広島復帰

石森正大 ユースコーチ就任


FW


背番号変更


18→3 矢田部剛

15→5 石井智久

10→23 杉山勝喜


 それまで選手兼任だった土生が正式に引退して監督に専念する事となった。また泉田も引退して土生をサポート。一方で林淳一は痕跡のように残っていたコーチの職務から解き放たれ本格的にフロント業務に邁進する事となった。全体的にはよりプロらしい体制に近づいたと言えるだろう。


 選手獲得は、土生とプレーした事もある三妻や初の本格的外国人として長年日本で活躍したバウディールといった存在感抜群なベテランを獲得するのと並行して新人補強にも積極的だった。一方で萩本、手塚、林直樹ら優秀な選手が去っていった。特に萩本のマイナスは痛かったが上位リーグ所属クラブからオファーがあっては引き止めは難しい。


 この年の基本的なスタメンは以下の通り。とは言えキーパーは最後まで固定されなかった。当初守護神筆頭候補と目された久保田はミスが多く期待外れ、4年目の渡辺もアピール不足で定着しかけた新人奥沢もシーズン終盤に負傷、この期に及んで田辺まで引っ張り出す体たらくでは安定するはずもない。


 守備陣は出雲以外入れ替わった。特にスピード系センターバック千賀の台頭は指揮官を喜ばせた。中盤の国久も悪くなかったが前年の碓井と比較するのは酷か。バウディールはさすがのテクニックだったがさすがに高齢ゆえに怪我も多かった。最前線は新人板部岡が健闘。終盤には木暮がようやく復帰して来年への期待を高めた。


GK 12 奥沢ロビン

DF 15 里尾宝

DF  4 出雲哲也

DF 20 千賀尚斗

DF  2 三妻数広

MF  8 野村尊之

MF 24 山田哲三

MF 30 国久克春

MF 10 バウディール

FW 19 土井空

FW 25 板部岡翔吾

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