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いきる
断片的な睡眠を繰り返したからか、みじん切りの夢が身体中に張りついている。遠くから蝉のシネシネシネシネという鳴き声がすると、頭の中で飼っている「ぼく」が共鳴を始めてうるさい。
ことばなんてなければよかったのに、と「ぼく」が言う。だからきみはいき苦しいんだよ、と。このいき苦しさは一瞬をつなげて永遠に変わるのだろうという確信があり、それは覆ることのない事実だ。
けれどもぼくは、ことば以外を使って自分を表す方法を知らない。ことばがなければ、ぼくはぼくになれない。かなしいのか、うれしいのか。
ちぎった夢をばらまきながら、陳腐なことばをつむぎながら、窒息死寸前のぼくは生にしがみつく。生き苦しさが、大輪の花を咲かせてぼくを覆い隠すまで、ずっと。