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うみ


「じゃあ、いこうか」


穏やかに彼が笑う。彼女も笑って頷いた。

まるで今から死ぬとは思えないくらい、二人の表情は幸せそうだった。


「これで本当に最期だ」


最期。この海が、彼らの終わりの場所。静かに二人水底で溶けあうためにこの場所を選んだ。さいごまで、ずっと一緒にいるために。


「後悔は、していないの?」


「まさか。してたら今ここにいないよ」


「そっか、そうだよね」


ふっと笑って、浅瀬に足を踏み入れた。もう、何にも怖くなんてない。だって。こんなにも幸せなのに。


「大好きだよ」


「私も」



誰も知らない小さな死は世界に何も齎しはしないから彼らの死を誰かが悼むことはきっとないのでしょう ?

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