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うつくしいかれ
とってもみじかい。
彼は真っ赤な血を流しながら、それでいてふわりとわらうのです。何処までも美しく、何処までも残酷に。それは優しい狂気のようで、凶悪な天使のようで、残虐な聖母のようで。雑じり合う筈の無いものが混沌と存在すると言えばよいのでしょうか、不思議な何かを秘めていました。
人々からすればそれは狂気であり、受け入れるべきものではありませんでした。けれども私はそれを受け入れました。だって、彼の笑みはあまりにも美しかったのです。赤く赤く染まってもなお、彼の笑みは底抜けに美しかった。もしかしたらあの笑みを見た時から私は狂っていたのかもしれません。でも、いいのです。それでも構わないと思えるだけのものを彼はもっていたのですから。
恐ろしいほどにうつくしい、愛を。
つづかないよ