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君の笑顔に恋してる

前に一回うpしてたけど何となく消しちゃってたやつ。

ちょこっとだけ手直しして再うpです。


※この作品にはBL要素が含まれます


屋上。二人の男子生徒が寝転がって空を眺めていた。

―ふと、右側の青年が呟く。


「なぁ、静哉(せいや)。お前はさ、どうしていつも笑っていられるんだ?」


どこまでも青く澄んだ空に、その声は良く響いた。


「ふふっ、穂高(ほだか)は面白い事を聞くね」


左側の青年―静哉は、笑いながら言う。

空に向かって微笑む静哉に、穂高は「…笑うんじゃねえ。仕方ねーだろ、気になるんだから」と照れながら横を向いた。


「…僕の事が気になるなんて、君もホントに物好きだなぁ。良いよ、教えてあげる。僕がいつも笑っているのは―」


静哉はバッと起き上がり、穂高の顔を覗き込むようにして言った。


「笑っていると幸せになれる、ってある人が言ってたからさ」


穂高はそれを聞いて何かを思い出すように目を瞑った。記憶の糸を手繰り寄せるように、何かを思い出そうとする。

そして、暫く考え込んだ後、何かを閃いたように声を上げた。


「あ!」


「思い出した?」


ニヤリと笑う静哉に、穂高は顔を赤らめて言った。


「何でお前そんな事覚えてるんだよ…」




それは2年前の夏の出来事。蝉の鳴き声が煩い木の下で、二人は偶然出会った。


「そこ、僕の定位置なんだけど」


静哉が不機嫌そうに言う。

その木の下は、いつも静哉が昼寝をしていた場所だった。


「は?此処は俺の定位置だっつの」


穂高も負けじと言い返す。

実は穂高も此処を頻繁に利用していたのだ。


「何言ってんの、いつも此処で寝てるのは僕なんだよ」


苛立ったように言う静哉に、穂高は思いもよらぬ言葉を言い放った。


「……知ってるよ、だって、お前が寝てる時に俺が来て、お前の寝顔拝んでんだもん」


「…は?」


一瞬時が止まったようだった。爆弾発言をした事に気づかないまま、穂高はなおも続ける。


「お前さ、何でいつもそんな苦しそうな顔なんだ?笑ってるとこ一度も見た事ねえし」


見てるこっちが辛くなる、と目を伏せる穂高に、静哉は何故か胸が締め付けられるようだった。


「…笑い方が、分からなくて、さ。僕は何の為なら笑えるのかな」


泣きそうな顔の静哉に、穂高は笑いながら言った。


「笑ったら幸せになれるんだ、って俺のばーちゃんが言ってた。辛い時も、悲しい時も、笑ってたら幸せになれるんだよってさ。まあ、そのばーちゃんも、もう死んじまったけどな」


そして空を仰ぐようにして、優しい声で言った。


「だからさ、お前は幸せになるために笑うんだよ」


「幸せ、?」


「そ、いつもそんな辛気臭い(つら)してたらいつまで経っても幸せになんねえよ。もっと俺みたいにポジティブにならねーとな!」


ニカッと笑う穂高を見て、ほんの少しだけ静哉も笑った。


「お、そんな顔も出来るんだな!そっちの方がお前には似合ってるよ」


―その時の穂高の笑顔が頭に焼き付いて離れない。きっとあれが僕の恋の始まり。




「いやー、あの頃の穂高は完全にナルシストだったよね」


はははは、と笑う静哉。


「どの口がそんなこと言ってんだ、あぁ!?」


それに対して穂高は顔を真っ赤に染めて叫ぶ。


「嫌だなー、穂高ってば怖いよ」


そう言って笑う静哉は、もう2年前の様に暗い顔を見せたりはしなくなっていた。


「ま、お前が笑うようになったのは良い事だしな。その発言については見逃してやるよ」


「…ありがとね」


ドヤ顔で言う穂高に聞こえないように、静哉は呟いた。


「何か言ったか?」


案の定、穂高には聞こえていなかった。まあ、聞こえないように言ったのだけど。


「ううん、何にも言ってないよ」


「そうか」


誤魔化すように否定した静哉を、穂高はそれ以上追及したりしなかった。


(そういうところが優しいんだよなあ)



「…そうだ、放課後にさ、一緒に駅前のカフェ行こうよ」


「別に良いけど、急にどうした?」


「新メニューが追加されたらしくてさ、君の好きな抹茶ケーキの新作も出てるらしいよ」


「マジか!それは楽しみだ」


はしゃぐ穂高を見て、静哉はふわりと微笑んだ。



(ねえ、穂高。君は気付いてるのかな。僕は君の事、好きなんだよ。あの日からずっとね)


(なあ、静哉。お前は気付いているのか。俺はあの時からずっと、お前の事が好きなんだ)



もしも彼らが、お互いの想いに気づいたなら、その時――


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