まだきっと大丈夫だと自分に言い聞かせて
ホントはまだ書きかけだけど、完成する見込みが無いのでとりあえずうp。
◇
数年前から、僕の生まれ育った国と隣の小さな国とが戦争を始めた。何がきっかけで始まった戦争なのか、僕は忘れてしまったけど。
戦争が長引けば長引くほど、皆は傷つき、倒れ、そして死んでいった。もう味方が何処にいるのかなんて分からない。ここには僕しかいないのだから。
傷だらけの身体。節々が鈍く痛み、動かすのを妨げている。でも、まだ、きっと、大丈夫。まだ動ける。戦える。僕はこんな所でくたばるわけにはいかないんだ。ああどうか神様まだ僕を殺さないで。せめてあの子の笑顔を見るまでは、死ねない。
僕らの国が負けそうなことも、僕の身体にも限界が来始めている事も、全部分かってる。それでも、僕は、あの子の為に、あの子の笑顔の為に、生き延びるんだ。死ぬことなんて、出来ないんだ。
◇
「ラウル!」
(ああ、愛しいフィアの声がする)
「死なないで……!」
ラウルの血にまみれた手をフィアが握る。ぼろぼろと零れた涙がラウルを濡らした。
(はは、そのお願いは聞けそうにないや。もう、そろそろ…かなぁ…)
「フィ、ア…な、かな…い…で…わら……って」
フィアは笑おうとした。しかし涙が止まらず上手く笑えない。
「フィ…アの……え、がお、は……かわ、い……な……」
ラウルがそんな事を言うものだから、フィアは余計に涙が止まらなくなってしまった。
嗚咽が邪魔をして声が出ない。
(待ってまだ私はラウルに言いたいこといっぱいあるのに)
フィアの願いも空しく、ラウルはどんどん「死」へと近づいていく。溢れ出る血は大地を濡らし、二人を赤く染め上げていく。
ラウルは最期の力を振り絞って呟いた。
「……あい、して…るよ……フィ…ア…」
刹那、ラウルの手から力が抜け、握っていた手が重みを増した。
「…ラウル……?」
固く閉じられた瞼は、もう二度と開くことは無い。
「い…ゃ……嫌ぁああぁあぁああぁ!!!!」
フィアの泣き叫ぶ声だけがその場に響いた。
(好きな人の笑顔を見て逝けるなんて幸せだろ?)
(尤も、生きる事以上の幸せなんてありはしないけどね)
title by サクラサク