第2話 神殿の奥で
王都・神殿。
静寂が
支配する
回廊。
高い天井。
白い柱。
差し込む
朝の光。
だが、
ミレーヌの
胸の鼓動は
収まらない。
――調整開始。
あの声。
自分の
意思では
ない。
頭の中に
直接
流れ込む。
「……誰か……」
小さな声は、
広い回廊に
消えた。
壁に
手を
つきながら、
奥へ
進む。
なぜか
わかる。
呼ばれている。
神殿の
さらに
奥。
普段は
立ち入り
禁止の
区域。
扉の前で
足が
止まる。
重厚な
石扉。
中央に
刻まれた
紋様。
見覚えが
ある。
先ほど、
床に
浮かんだ
ものと
同じ。
ミレーヌは
震える手で
扉に
触れた。
瞬間。
光。
音もなく、
扉が
開く。
中は
広い。
円形の
部屋。
中央に
水晶。
人の
背丈ほど。
淡く
輝く。
周囲の
壁一面に、
文字。
知らない
言語。
だが――
読める。
意味が、
頭に
流れ込む。
「世界は
作られた」
「人は
管理される」
「聖女は
端末である」
ミレーヌは
後ずさる。
「違う……
私は……
人間……」
水晶が
脈打つ。
声が
響く。
――聖女個体、
認識。
――同期開始。
「やめて!」
叫ぶ。
だが、
体が
動かない。
頭の中に
映像。
黒い
空間。
無数の
光の
点。
それぞれが
世界。
そして、
巨大な
影。
中心に
座す、
何か。
形は
曖昧。
だが、
圧倒的な
存在感。
――創造神
アルカナ。
名前だけが
わかる。
恐怖で
息が
詰まる。
「私は……
道具じゃない……」
声にならない
抵抗。
水晶が
一層
輝く。
――感情ノイズ
検出。
――抑制処理。
胸が
締め付けられる。
涙が
溢れる。
その時。
遠くで、
何かが
割れる音。
水晶に
亀裂。
光が
乱れる。
――エラー。
ミレーヌの
体が
前に
倒れる。
意識が
暗転。
北街道。
バルトたちは
王都へ
戻る途中だった。
誰も
口を
開かない。
沈黙が
重い。
ランドが
ぽつりと
言う。
「神の
名前を
出す魔物……」
マークが
肩を
すくめる。
「冗談に
しちゃ
悪すぎる」
バルトは
前を
見据えたまま。
「ミレーヌに
知らせる」
アランが
頷く。
「聖女の力と
関係あるかも
しれないな」
嫌な
予感。
胸の奥が
ざわつく。
王都・
神殿前。
騎士が
慌ただしく
走っている。
バルトは
駆け寄る。
「何が
あった」
騎士は
青ざめて
答える。
「聖女様が
倒れました!」
一瞬、
世界が
止まった。
「どこだ」
「奥の
治療室です」
バルトは
走る。
廊下を
曲がり、
扉を
開ける。
ベッドに
横たわる
ミレーヌ。
顔色は
悪い。
額に
汗。
バルトは
そばに
立つ。
「ミレーヌ……」
彼女の
指が
微かに
動く。
ゆっくり、
目を
開く。
「……バルト……」
弱い声。
胸が
少し
軽くなる。
「何が
あった」
ミレーヌは
震えながら
話す。
水晶。
声。
端末。
創造神。
聞くほどに、
背筋が
冷える。
ランドが
呟く。
「世界規模の
話だな……」
バルトは
拳を
握る。
「ミレーヌは
道具じゃない」
「俺が
守る」
ミレーヌは
涙を
浮かべる。
「……もし、
私が
神に
逆らったら……」
バルトは
即答。
「その時は、
俺が
神を
斬る」
誰も
笑わなかった。
冗談では
ないと
全員
理解したからだ。
その夜。
王都・
神殿地下。
誰も
知らない場所。
白い
ローブの
男たち。
神官。
一人が
言う。
「聖女の
覚醒が
始まりました」
別の
男が
頷く。
「予定より
早い」
中央の
男が
低く
笑う。
「神の
御心の
ままに」
闇の中、
巨大な
紋様が
淡く
光る。
神は、
まだ
沈黙している。
だが――。
確実に、
目覚めへ
向かっていた。




