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あの花に水を。  作者: 増井 龍大
第三章

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33/37

私は愚かだった。

 間違いに気が付いたのは、次の日の朝。

 私はこの日、電車が遅延して朝のホームルールぎりぎりの時間に学校に着いた。

 教室では石川さんと坂本が話していた。

 私は様子を窺うこともせずに、その会話を遮るために席を立った。


「あってよかったわ~」

「ごめんなさい。私が悪いんです。何でもします。お願いです」

「いや別にね、俺もそんなに外道じゃないからさ、今まで通りにしてくれればいいよ。ただ、川井とは縁を切れ。それが出来なかったらばらまくからね」


 近づくにつれて鮮明になっていく会話の内容は、明らかに普通ではなかった。胸騒ぎがした。どこかで私は間違えてしまったのかもしれない。そう思うと、二人の会話に入るのが怖くなった。気づいたら私は足を止めていた。


「まじでタブレット、取っておいてよかったわ。もう古いから捨ててもいいかなって思ってたけど、まさかこんなとこで役に立つとは思わなかった」


 タブレット……。


 私は自分の愚かさを理解した。坂本はタブレットの中にも動画を保存していたのだ。私はその場で石川さんに謝りたくなった。しかし私は、自分が責められるのが怖くて、石川さんに謝ることもできなかった。

 

 教室には私や坂本以外にも人が居て、私が今この場で謝ってクラスの話題にしてしまえば、苦しむのは石川さんだ。私は自分に言い訳して何も言わずに自分の席に戻った。

 

 その日から私は教室内で孤立した。

 

 人間という生き物は周りをよく見ている。

 私から石川さんが離れていったのを見て私に原因を聞いてくる生徒もいたが、私は誰にも相談することができなかった。石川さんはその容姿と愛嬌から男女ともに人気があった。そんな石川さんが私から離れたことを見て、私に関わろうとする人間も減っていった。


 石川さんに謝ろうと思ったことは何度もあった。

 しかし、時間が経つにつれ、謝っても拒絶されてしまうかもしれないという思いが大きくなっていった。

 謝ろうと思えば思うほど、足がすくんで、喉が水分を欲した。


 石川さんも動画の事は誰にも相談できずにいた様子だった。

 バラされることを恐れたのだろう。

 私はさらに罪悪感を募らせた。なんて自分勝手な行動をしてしまったのだろう。結果的に彼女を苦しめることになってしまった。

 

 私は愚かだった。


 20XX年12月


 石川さんが死んだ。死因は自殺。いや、違う。本当は私が彼女を殺したのだ。


 私があの時、もっとマシな解決方法を提案できていれば、私がもっと考えていれば、石川さんが私ではない誰かに助けを求めていたら、きっと自殺なんてしていない。


 私は人殺しだ。


 結局私は石川さんに謝ることができないまま、彼女を殺してしまった。拒絶されることを怖がって、謝ることもできなかった。


 石川さんと距離を置くようになってから二か月の期間が開いていたことと、遺書に何も書かれていなかったことから、私が彼女を殺してしまったことは誰にもバレなかったし、疑われもしなかった。


 石川さんは最後まで私を守った。

 私は彼女を一度も守ることができなかったのに。


今回で三章が終わります。

閲覧いただきありがとうございました。


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