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 私は警邏隊員になりたかった。

 サヴィーナ・エレノス分隊長のように、人を助ける。


 給仕の仕事をしていて殴られそうになった時に、エレノス分隊長は私を助けてくれた。

 誰も助けてくれなかったのに。

 誤ってお水をかけてしまったから、当然だと思われたのか、店長すら助けてきてくれなかった。

 それをエレノス分隊長は助けてくれた。

 私を殴りそうになっていたのは警邏隊の隊長さん。

 後から話を聞いたらエレノス分隊長よりも上の位のひとだったみたい。


 私もエレノス分隊長のようになって、困っている人を助けたい。特に女性を助けたい。

 エレノス分隊長は女性で初めて警邏隊員になった方だ。

 それは六年前のことなんだけど、エレノス分隊長に続く女性隊員はまだ出ていない。

 隊員試験が難しいのと、やはり生活が厳しいからだ。

 その話を聞いてエレノス分隊長はやっぱりすごいと思った。

 彼女のようになりたい。


 そう思って、体を鍛えて臨んだけど、試験には受からなかった。

 がっかりしている私にエレノス分隊長が実務隊員ではないが事務として働いてみないかと誘ってくれた。

 入隊申し込みの時に書いたことを覚えてくれていて、本当にうれしかった。

 お父さんには反対されたけど、近所の人から読み書きと計算を教えてもらっていた。そういう仕事も探したけど、女性には無理だと言われ、結局給仕の仕事しかなかった。

 だから、事務の仕事は有難く受けた。

 それから三年、私は警邏隊の事務員補佐をして日々働いている。

 個人的に身を守る術を覚えたくて、時々エレノス分隊長に体術を教えてもらっている。あとナイフの使い方。

 自分の身は自分で守りたい。もしかしたら、他の人も助けることが……。

 そんな話をしたらエレノス分隊長は少し怒った顔をして、自分の力量を知ることは大事で、まず大声で助けを呼びなさいと言った。

 警邏隊は街を隅々まで見回っている。

 だから、頼りなさいと。

 エレノス分隊長が入隊して、確かに事件は減っている気がする。

 それはエレノス分隊長が頑張ってるからかなあと思っている。

 あと、エレノス分隊長の補佐の、えっと、マルクス・カノン分隊長補佐。

 エレノス分隊長とは同期で幼馴染らしいです。

 カノン分隊長補佐は、エレノス分隊長の同じくらいの身長で、いつも彼女の側にいることが多い。補佐だから当然だけど、うーん。一緒にいすぎる気がする。

 多分カノン分隊長補佐はエレノス分隊長のことが好きだと思う。

 エレノス分隊長の影口を叩いている人を殴っていたのを見たことがあるし、エレノス分隊長を見る目が優しい。

 エレノス分隊長にはそんな気はあるようには見えないけど。

 まあ、この人も頑張ってるから街の犯罪も減ったかもしれない。

 警邏隊に入って三年がたって、私は十七歳。

 友達たちは結婚し始めているし、お父さんたちからも言われるけど、私に結婚願望はない。ずっとここで働きたいと思っている。


 ☆


「え、辞められるのですか?」

「うん。そろそろ歳だからね」


 私の直属の上司は事務官で、お貴族様だ。

 警邏隊は基本、全員は平民で、大隊長と事務官だけが貴族だった。

 これは警邏達を作った時から決まっている事で、だからこそ、街中で自由な采配が認められている。町で威張り腐った貴族が悪いことをした時も、大隊長に出てきてもらったら、すんなり解決することも多いから、私はこの制度はいいと思っている。

 事務官のヴァレ様は男爵で、貴族の中では下の位に当たる。

 歳っていっても私の父より少し上くらいで、引退にはまだ早いと思うんだけど。


「私の後任は来週から来る予定だから。ユリアちゃん、よろしくね。1週間くらいで引継ぎする予定だから、安心してね」

「え?来週からですか?」

 

 突然過ぎる。

 新しい後任も貴族様で、ヴィレ様のように優しい人なんだろうか。

 お貴族様は大概高慢な人が多いから、苦手なんだけど。 

 ヴィレ様や大隊長様は特別なんだと思う。

 

「おい、女。備品の検査なんて私にさせるつもりか?」


 翌週やってきた後任のお貴族様は、私が想像していた感じそのままだった。顔だけはものすごい綺麗だったけど。金髪に碧眼で、少しだけエレノス分隊長に似ていた。


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