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【開幕】

 しばらくすると、救急車や応援の車両が慌ただしく現場に集結し、少年は病院に運ばれていく。


 真白がふと気がつくと、先程まで少年と喋っていた犬塚の姿が見当たらない。


 辺りを見渡すと路地の闇に融けるように消えていく、背中を丸めた犬塚の後ろ姿が目に止まった。





「待って下さい……!!」


 背後から掛けられた声に犬塚が振り返る。


「言っただろ……バディなら別の奴と組め。新米……」



「新米じゃありません……!! わたしは辰巳真白です……!!」


 犬塚の鋭い目を見つめ返して真白が言った。


「あなたが一匹狼を気取ってるのはよく分かりました。それに……実力があることも!! でも、このまま行けばあなたは丸待を危険に晒します……!!」




「なんだと……?」


 そこに立つのは牙を向く狂犬の姿だった。


 それでも真白は臆すること無く犬塚に食って掛かる。


「今日だってそうです。バディがいなければ、あなたの作戦は成り立ちませんでした。独りよがりの正義を振りかざしたせいで、危うく丸待が死ぬ可能性もあったんです。だから、《《わたしとバディを組んでもらいます》》……!!」


「馬鹿言うな……!! 却下だ……!! だいたい今回お前と組んだのは、たまたま丸待の保護に都合がよかったからだ……!! 怪我する前に俺の前から失せろ……新米……!!」




 真白はポケットから純白のロザリオを取り出して言った。


「あなたに拒否権はありません。わたしは第壱級祓魔師だいいっきゅうエクソシスト辰巳真白。あなたの上官にあたります……!!」


「は……?」


 ロザリオを食い入るように見つめていた犬塚の口から咥えていたセブンスターがこぼれ落ちた。


「《《上官命令》》です!! わたしとバディーを組みなさい!! 犬塚弐級祓魔師いぬづかにきゅうエクソシスト……!!」


 犬塚は髪を掻きむしって唸っていたが、やがて大きく舌を打ち、吐き捨てるように怒鳴った。


「くそが……!! 勝手にしろ……!! だがこれだけは言っとく、現場では俺が先輩だ……!! お前の指図は受けねぇ……!!」



「それで構いません!! よろしくお願いします!! 犬塚先輩!!」



 ✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝



 なぜわたしが先輩と、バディを組むことに執着したのかはよく分からない。


 上からの命令だからと言えばそれまでかもしれない。

 

 しかしそれだけではなかったことをひっそりとここに告白しておこうと思う。


 先輩の放った銃弾が悪魔憑きの男性に命中した瞬間、大聖堂の鐘が鳴り響いたような気がした。


 その時わたしは、自分の理解を超えた神からの大いなる導きを感じたのだ。



 ただ、この時のわたしは、先輩のことも、これから待ち受ける目を覆いたくなるような世界の有り様と、人の心を蝕む闇のことを、まだ何も理解ってはいなかった……

 

 これは癒えない傷を抱え、十字架(トラウマ)を背負ったわたし達が、それぞれの正義を胸に、闇と対峙する物語。

 

 

      【咎喰みの祓魔師】


         開幕

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