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1-9【エロ本事件】


 顔つきが変わった不良少年たちのもとへと踵を返し、犬塚が尋ねる。

 

「何だ? そのエロ本事件って?」

 

「結構前の話なんだけどさ……」

 

 そう言ってリーダーはぽつぽつと話し始めた。

 



 俺達のグループにアキラって奴がいたんだよ。

 

 俺達とはちょっと違うっていうか、金持ちの家の奴だったんだけど、親がうぜぇって言って一緒に悪さしてたんだ。

 

 夜中までぶらぶら徘徊したり、心霊スポットに凸したり……

 

 でも、なんか突然付き合いが悪くなったんだよ。

 

 遊びに誘っても「ごめん」って言うばっかりで……それからだよな? あいつがなんか《《優等生》》になったのって……

 

 

 少年たちはその言葉に黙って頷いた。

 


 優等生って言ってもすっげー真面目とかじゃなくて、なんかニヒル? みたいな感じの。

 

 休み時間も参考書ばっかり読むようになって、急に真面目ちゃんになりやがったんだよ……


 あいつ変わったなって言ってたんだけど……


 あいつ、ホントは金持ちのボンボンだからさ……俺達のこと見下して調子に乗ってたんじゃね? って思ったんだ……


 

 それでちょっと化けの皮を剥がしてやろうぜってことになったんだよ……

 


 * 


 

「おいアキラ……!! ちょっと来いよ」

 

「ごめん。この後塾だから」

 

「ちょっとだけだって……!!」

 

 ニヤニヤと笑いながら不良少年たちはアキラの両肩に腕を回して校舎の裏に引っ張っていった。

 

 アキラは顔色一つ変えず少年たちに連れられて校舎裏までやって来ると呆れたような声を出す。

 

「それで? 裏切り者の俺にリンチでもすんの?」

 

「馬鹿じゃねえの!! するわけねえだろ!! お前最近元気ないからさ、《《元気になるもの》》持ってきてやったんだよ。なあ!?」



「うぇーい!!」


 少年たちは示し合わせたようにおどけた表情で歓声を上げ、カバンの中からピンク色の雑誌を取り出すと、見せびらかすように中身を開いて官能的な表情を浮かべてみせる。

 

「なっ? 元気出ただろ?」

 

 アキラは黙ってピンク雑誌を掲げる少年たちに歩み寄っていく。

 

 その表情は強張り、先程までの余裕は微塵も感じられない。

 

「おいおい……!? 興奮しすぎだろ!?」

 

 一人がそう叫び笑いを誘ったが、アキラは何も言わずになおも近づいていく。

 

「汚らわしい……」

 

「え……?」

 

 アキラは一人の手から雑誌を地面に向けて叩き落とした。


 それを踏みにじり、次なる獲物へと怒りの眼差しを向ける。


「おい……!! 何すんだよ!? お前のために買ってきたんだぞ!?」


 リーダーの声を無視してアキラは次々と雑誌を奪い取ると滅茶苦茶に踏みつけながら叫んだ。

 

「汚らわしい……!! ああ汚らわしい……!! 燃やさないと……《《燃やして清めないと》》……!!」


 そう言ってアキラは校舎の壁際に置かれたリーダーのカバンへと駆けより、中からライターを取り出した。



「おい……!! どうしたんだよ!? 何がそんなに気に食わないんだよ!?」


 少年たちの叫びはアキラには届かない。


 アキラは破いた雑誌を火で炙りながら、虚ろな瞳を爛々と輝かせてつぶやいた。


「不浄な女どもの淫らな行いに制裁を……」

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