第94話 ルグアの攻略法
ラストの戦闘組全員の意気込みでちょっとした何かが……!
◇◇◇裏世界 ボス部屋前◇◇◇
「ケイ。誰からのメール?」
「ラミアお姉さんからだよ。今日ライブの最終公演なんだって」
「そうなんだ。そういえばラミア姉妹って……」
「ミラクルルミナスっていうユニットをしてるよ。かなり人気があるみたいでね」
ミラクルルミナス……。聞いた事のない名前だった。ローカルユニットなのだろうか? 俺は検索機能で検索すると、しっかりとウィキペディアが出てきた。
ファン数1000万人以上。チケットの倍率もかなり高い。そして、何より彼女らの演出が人気のようだ。どんな原理で起こっているのかわからない。完全オリジナルの特殊演出。会場に雪や氷の結晶を降らしたり。花の雨を降らしたり。
それから、雨も降ってない陽も差してないないのにも関わらず虹を出現させたり。レパートリーはかなりの数を持ってるらしい。
その方法完全非公開。ウィキペディアにもどう説明すればいいのか不明と書かれていて、そんな他ユニット。他グループとの差を大きつける常識外れのパフォーマンスをしているらしい。
俺はアイドルには興味がなかったが、なんだかこのユニットは惹かれるものがあった。
「ヤマト。聞こえる?」
『聞こえておりますが……。と、それよりも通信魔法を習得したのですかな』
「まあ。まだ長時間はできないけどな」
『頑張り屋は違いますなぁ……。ところでご用件は……?』
「ヤマトはミラクルルミナスってユニット知ってるか?」
この言葉にヤマトの呼吸が荒くなったのに気が付いた。通信魔法って相手の吐息まで聞こえるんだと正直すごい魔法だと思った。
だけど、ヤマトからの反応がない。このままだと俺の集中力が切れて強制切断してしまう。俺はケイに頼んで中継役になってもらうことにした。
「ヤマト?」
『も、申し訳ございません……。俺様根っからの大ファンでして、ファンクラにも入っております……。ミラルミのファリナさんのファンでして』
「やっぱりか……。ありがとう……これからバトル開始するから。このバトルが終われば会えるかもな!」
『ッ!』
「じゃ、切るぞ!」
ここまで引きを作れば、ヤマトも驚くに違いない。俺はもう一度作戦の書かれたメールを見る。
急遽ルグアさんが参加不可になったのでちょっと不安だが、ケイならなんとかしてくれるだろう。
彼も少し先の状況を把握できる能力がある。本人が言うにはルグアさんのように数十手以上先の世界は見えないようだが、それでも助かる。
「んで。なんでコイツがいるんだよ。敵ギルドだろうが!」
「バレンさん落ち着いて……」
「落ち着ける馬鹿がいるか! ザコ!」
相変わらずの調子のバレンさんは、身体中に怒りの炎を纏って怒鳴ってくる。このギルドがでこぼこなのはメールでヤサイダーに伝えていたが、当の本人もかなりビビっているようで顔が青ざめている。
動物アバターなのにも関わらず、このゲームはプレイヤーもAIも感情表現がものすごく細かい。作り込みの良さ以上のクオリティで、やっぱり驚いてしまう。
「バレン! お座り!」
「け、ケイ!?」
「お前俺を犬扱いすんなっての!」
「だって、一度怒らせてからじゃないと……」
「んならこいつどかせ。こいつは絶対足手まといになる」
そんな言われてももう遅い。作戦を計画したのはGVさん。いつの間にかVさんとは呼ばなくなっていた。その作戦には完全にヤサイダーが組み込まれている。だから今更変更はできない。
「今回は我慢してください。バレンさん」
「ったく。今回だけだぞ! このドアホ!」
「あはは……バレン平常運転でよかった」
「よくねぇよ!」
「本当にこのギルドって騒がしいのね……」
よくもまあこんなに威嚇しても動じないヤサイダー。どんなメンタルをしていればやり過ごせるのか? とても不思議だった。会話が成立しないのも無理はない。
俺たちはハエトリグサのいるフィールドに向かって歩く。やっぱりこの通路はとても薄暗い。今回も、バレンさんの紫炎で道を照らしてもらった。俺はルグアさんが戦ってた時に見せたハエトリグサの最終形態を知っている。
粘着質の液体。脈動するように動く触手。そして何よりも触手の圧倒的な数だ。ルグアさんから送られてきた推測の攻略法は触手の最大数が100を超えるということ。さらにはその触手100本を全て再生できないレベルの切断などをしなければ本体にダメージを与えられないというものだった。
作戦はGVさんとアレンさんが魔法剣や魔法具で触手を誘導。俺とヤサイダーが接近するチャンスを作り、バレンさんが炎で触手を燃やし活路を作る。最終形態になったら、アレンさんが隔離空間の出し入れを繰り返して転移移動を行う。
そして、ケイが相手の体力を見計らって指示を出し、俺が最大出力のストロングブレイクでラストアタックを決めて宝箱を回収する。
ただ、これはルグアさんがいる前提で作られたものなので確実にできるわけではない。俺もまだ可能な範囲がわからないので、ここはやっぱり団長のケイのいうことを聞くしかない。
「もうすぐでボス部屋だよー。僕はいつでも大丈夫だけど、みんなは緊張してないかな?」
「ちょっとGVさん……。よくそんな陽気でいられますよね……」
「こういう緊張感には慣れっこだからね。さすがに2回目となれば楽だし。ルグアさんの指示は非常に正確だから、心から安心できるんだよ」
「そ、そうなんですね……。ケイは大丈夫か?」
「うん。問題ないよ。なんか今日は昨日と比べて調子がいいんだよね。やっぱり朝のランニングをしたからかな?」
「よかった。アレンさんはどうですか?」
「俺も問題ないっすよ! 本当は一撃必殺で……。倒してやりたいところっすけどね」
「了解です。バレンさんは論外だからいいとして……」
「っ!? おいっ! ザコ!」
「ヤサイダー!」
「あたしも平気よ。いつでもいけるわ」
「では、全員突撃!」
「このザコ! 俺を置いてくなぁー!!」
「「あははははははは!!」」
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本日は年末年始投稿の話数調整のためもう一話更新します。
宜しくお願いします




