番外編SS アイドル活動は無限大①
◇◇東京のとあるライブ会場の楽屋にて◇◇
「ラミアさん。ファリナさん。お疲れさまです」
「お疲れさまです、西城さん」
「おつかれー。あーー、本当に疲れたねお姉ちゃん」
「だねぇ」
今日私は今月の仕事納めの日だった。もちろん妹のファリナも一緒に。今日1日が終われば急用がない限り1ヶ月の休暇がある。
今日は月ライブのラスト公演でついさっき午前の部が終わったところ。そして、お昼休憩をしている最中だった。
本日も会場は満員御礼。約5万人の人が聴きにきていた。だから、全体にファンサービスするのが大変で、2人組ユニットとして活動している私たちもマイク片手に声を張り上げていた。
もう喉が疲れて疲労も限界値に達している。今の私とファリナは28歳。もう30近いのにこの人気度なのだから、よくファンも飽きないよね? っと思ってしまう。
「おねえちゃん。ここの歌い方どうするんだっけ?」
「えーと、ここの歌詞は、ちょっとペン貸して」
「うん」
私は妹からペンを受け取り、タブレット端末に書かれた歌詞ノートに書きこむ。すると、ファリナは軽く歌ってみせた。少し発音がおかしいところは、私も歌う。それの繰り返しで食事が進まない。
アイドル活動は20歳から始めていた。だから、ロケ弁とか差し入れの弁当とかも食べなれているが、私はファリナよりも食べるのが遅い。
というのも、ファリナはどんな弁当でも10分ほどで食べきってしまうため、私より先に個人レッスンや勝手にリハーサルを開始する。
「うーん。ねぇお姉ちゃん。ここの振付、難しいんだけどコツとかある?」
「そこねぇ」
ファリナが疑問に思ったらしい振付は私と一緒にやるコンビネーションダンスの部分だった。手遊びをするような高速の動きで、双子だからという理由で取り入れられたものだ。たしかに、この動きは間違いやすい。
お互いを信頼していなければ真似できない動きなので、私でも間違えそうだった。だけど、今の時間は午後0時45分。次の公演が15時なので、私としてはしっかり休んでおきたい。
それでも、その振付をしっかり復習しておかないといけない。本番で失敗したらファンを裏切ることになる。私は自分の左手を見つめた。
左手には結人さんが付与させた紋章がある。同じようにファリナにも紋章がある。ライブの時はこの紋章も使ってパフォーマンスをしていて、これは西城さんも知っていること。
ただ、ファンには種明かしはしていない。この紋章は特殊で発動しても光らない。だから、魔法を使ってるところを見せることなく視覚効果を使うことが可能になっていた。
「お姉ちゃん」
「何?」
「なんで本名言っちゃダメなの?」
「それはね……。私も分からない」
私とファリナはゲームで使ってるプレイヤー名を芸名にしていた。私とファリナの本名は西城さんも知らない。
そして、お父さんにも会ってない。お父さんは医学部の教授として活動し始めてから、忙しくて顔を出せてない。
ライブにも来てくれているのかも分からない。お父さんは妹の明理さんの体質を元に戻すため色んな研究をしているが、やはり難しいようで……。
「ラミアさん食べ終わりましたか?」
「は、はい……」
「よかった。午前の部の客の出口誘導が完了したので本番に近いリハーサルをしたいのですが……」
「わかりました。その前にちょっと打ち合わせをさせてください。アイドルとしてじゃなくてゲーマーとしての打ち合わせを……」
「かしこまりました」
私はゲーム機とタブレットPCを取り出す。私とファリナは必ずこれを持ち歩いていた。ゲームはダウンロード版でそこにビースト・オンラインも入っている。
カケルたちが心配だった。アイドルとしての活動はあっという間で、もう半月もログインしてない。
だけど、時間を忘れやすい私と妹なので、ログインは我慢する。その代わり景斗にメールを送信した。今日が終われば自宅に帰れると。
アイドル生活で大変なのは車泊とホテル泊だ。ファリナはどこでも寝られるけど、私はベッドにこだわるタイプ。気に入った布団でしか寝れない。
だから車泊の時はいつも寝不足。この年齢になると身体も追い付いていけない。だから、眠気覚ましのランニングをよくする。
――ポロン
「お姉ちゃん。景斗からだよー」
「はいはい。今みます」
"ラミアもファリナもお疲れ様。今からスターって街にある裏世界の大ボスと戦うんだ。大丈夫、黒白様に冷酷様がいるから。終わって自宅に帰ったらログインして待ってて。すぐにプルーンまで戻る"
「ボス戦かぁー。大丈夫かな?」
「亜蓮と結人くんがいるなら大丈夫なんじゃない?」
「だよね。じゃあ私達も千秋楽頑張ろう!」
「うんっ。お姉ちゃん!」
応援よろしくお願いします!!!!
次回から本編です!!!!!




