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第85話 3龍傑

「片翼様! 冷酷様!」

「あ、あはは……。しばらく前にそう呼ばないって約束したでしょ? ケイ。したよねアレン?」

「したっすね。普通に俺のことはパパって呼べばいいんすよ?」

「す、すみませんでした……」


 ケイは肩を落として少し残念そうな顔をする。確かに嬉しい気持ちはわかる。俺ももし弟に会えたらならきっと同じことをしただろう。でも、今回のケイの発言は違和感があった。"片翼"? "冷酷"? さっぱりだ。

 そういう発言をしながらルグアさんとアレンさんに飛びついたのだから、きっと、2人のどちらかが片翼で冷酷なのだろう。ケイはものすごくニカニカと笑っている。この感情爆発で紋章が発動しなければいいんだけど、GVさんは予測済みという顔で俺に目を向ける。

 それならよかった。いやそういう問題じゃない。GVさんは、ヤサイダーさんを指さし、その後左手甲をツンツン突っつく動作をした。

 これはヤサイダーに紋章を使えということだろうか? 俺はヤサイダーのところに行く、目の前に立つと俺と視線を合わせるように伝えた。

 そこからは前回オオクワガタに対してやったように、澪のことをイメージする。だんだん熱くなっていく左手。ゲーム内なのにここまで熱くなるのは本当に謎だった。

 そもそも、ゲーム内で紋章を使用できること自体がおかしい。それくらいGVさんは高い技術を持っているのかもしれない。

 ヤサイダーの方に全感覚を集中させ、意識をリンクさせる。疾走感のある空間移動、それは俺の脳内に流れてくる情報の大波。

 彼女がどうしてボス部屋にいたのか、その目的は? だけど彼女の記憶はそれに答えるような映像を見せてくれない。モノクロームの世界。

 未来が見れればもっと楽なのだろうけど、俺にはケイやルグアさんのような能力はない。そもそも彼らがやってるのは未来予知ではなく予測推測。あっちとこっちじゃ主となる畑が違う。

 1人ハエトリグサと戦うヤサイダー。うっすら口元が動いているように見えた。このゲームの特徴としてキャラの口の動きは現実世界での口の動きに近いものになっている。

 つまり口話さえわかれば、口の動きから文章に置き換えれば何を言ってるのか理解できる。

 俺はもちろんそのようなものをしたことはない。だけど、なぜか彼女が言ってた言葉の意味を理解することができた。

 誰かが俺の背中を叩く。きっとGVさんだろう、戻ってこいの合図だ。俺は澪のことを考えることをやめて、意識を切り離していく。そしてギルド拠点の方に戻ってくると深呼吸をした。


「カケルくん。どうだった?」

「ちょっと待ってください。多分彼女に怒られる可能性があるので、メールで送りますね」

「りょーかい」


 俺は見たものとヤサイダーが言っていた発言の文字起こしをしていく。2分ほどで書き上げて送信。GVさんは首を縦に振って了解の合図を送る。これできっと大丈夫なはずだ。

 そのころケイたちはというと、アレンさんが過保護レベルに質問を投げかけていた。ちゃんと目が見えてるかとか、聴覚は機能しているかとか。まあ、一度魔力暴走をして意識を失っていたのだからそれは心配になるだろう。


「これでみんな揃ったね」

「?」

「3龍傑だよ。僕が生まれる前に日本を救ってくれた3人。片翼のルグア。冷酷のアレン。黒白(こくびゃく)のGV」


 突然言われても。って


(え?)


「ふーん。この3人が3龍傑ねぇ……。全くそうは見えないわね……。黒白は認めるけど、ルグアとアレン。2人の実力がその通り名にふさわしいのか、どうも納得いかないわ」

「あはは……」

「そうっすよね……」


 ヤサイダーがルグアさんとアレンさんを呆れさせた。たしかにこの状況では戦闘もできないから実力を測ることはまず無理。

 でも、3龍傑と聞いて俺が3人の戦闘を見た限りどれもすごさがあった。ルグアさんなんて俺を虜にさせたのだから、かなりの実力者なのかもしれない。

 そんなことを考えると、ケイが何かを取り出した。オブジェクト化されたのは大判の羊皮紙に書かれた裏世界の地図。

 これから作戦会議なのだろうか? それよりも、ヤサイダーが3龍傑を監視するような目で見詰めていた。たしかに、リアゼノン事件と関わりの深い3人からなら、澪のことや記憶障害をもった人たちの情報を入手できるかもしれない。加えてヤサイダーの視線は俺の方にも向けられていた。


「カケル。さっき紋章を使ってあたしに何したのよ?」

「え? 何って、え、えーと……」


 説明が難しい、ストレートに言うのが普通なのだろうけど、ド直球すぎると不審がられる。おれは1人黙り込む。ヤサイダーが詮索をやめるまでポーカーフェイスで行くことにした。


「なるほどね……」


 諦めの早いヤサイダーであった。ため息を零したのち、ヤサイダーは俺にこう言った。


「その紋章を3龍傑のうちの1人に使ってもらえるかしら?」

「わかりました……」


 そんな会話を聞いたGVさんがすかさず割り込む。その言葉はというと。


「カケルくんの紋章は3龍傑の僕たちには効果ないよ? そもそもかなり危険かな?」


 マジレスだった。しかしリアルでもそうだがヤサイダーの発言には拒否権はない。だから俺はGVさんに協力してもらえないかと説得することにした。

 秘匿情報の多い過去は明かせない。そんなことは普通だ。ブラックボックスなんて一生開かれないに等しい。今俺はそれを開けようとしている。

 俺のしつこいアプローチに、GVさんはやれやれと折れてくれた。俺は彼と視線を合わせ例に則って紋章を発動させる。ヤサイダーと同じように加速的な空間を通って時代を遡っていく。

 だけど、それに終わりは見えなかった。

応援よろしくお願いします!!!!!!!!!


3龍傑に関しては年末年始企画のリアゼノンパートでその誕生ストーリーを展開させていきますので、お楽しみに!!!!!!!

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