表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/123

第81話 ルグアの模型

 ――戦闘開始から10分前。ボス部屋の入口前にて――


「ルグア、ここのボスについて今わかることってあるっすか?」


 そう、アレンさんがチーターアバターの女性に問いかける。ルグアさんのアバターは元々スピード特化型とのことだが、それ以上の速さを実現するにはどうすればいいのか気になっていた。

 俺はボス部屋に向かう途中で何度もビースト・オンラインの攻略サイトを開いていた。基本はアバタータイプについての項目。攻撃特化型の狼やサイ。防御特化型の亀や熊。支援特化型の猫。バランス型のライオン。そしてスピード特化型のチーターやイノシシ。

 俺のアバターは開拓者が少ないからか情報がなかった。でも、多分だけど俺のアバターはスピード特化かバランス型だろう。俺はウィンドウを閉じて、話の輪に入る。

 ルグアさんは指で何かを描くような動作を繰り返していた。これになんの意味があるのかはわからない。2分後ルグアさんが口を開いた。


「まずわかるのは、プレイヤーが1名拘束されてることかな? きっとヤサイダーさんのことだと思う。HPは全損しているけど、アバター消滅はしていない。蘇生魔法を使えば本人の体力面次第では共闘も可能って感じ……」

「なんか自信なさそうっすね……」

「ううん。そういう意味ではなくて……。そのボスの容姿が私が別のゲームで戦ったボスのイメージと酷似していて、攻略法がそのボスと同じならいいんだけど……」


 そう言って、ルグアさんはなにやら液体の入った瓶を取り出した。こんなアイテムがあるなんて、もしかして回復ポーションなのかもしれない。

 でも、このメンバー。どう考えても回復ポーションは必要ない気がする。使うとしても俺やヤマトくらいだろう。そんな思考を余所にルグアさんは瓶の蓋を開けて、地面にたらし始めた。

 しばらくして液体はぐずぐずと蠢きだす。この現象前にも見たような? そうだ、GVさんがバレンさんの血でやった実験。それとよく似ていた。

 液体はだんだん固体化していき、やがてそれは化け物のようなシルエットになった。ハエトリグサに触手が付いている。いかにも怪物の見た目だ。

 そのうち一本は上空に持ち上げるような形で固まっており、何かを絡め取っている様子。その中をよく見ると、サイのプレイヤーが拘束されていた。

 ルグアさんが言う通りヤサイダーに違いない。


「間違いないです」


 俺は思わず言ってしまった。だけど、他のみんなはどういう状況なのか理解していない様子。


「間違いないって何がですか?」


 ルグアさんが尋ねてくる。


「カケルさん。主語が抜けてるっすよ!」


 アレンさんがみんなの気持ちを言ったところで、俺ははっとした。


「そ、その……。この模型? の拘束されているプレイヤー。ヤサイダーで間違いないです。ですよね。ヤマト。GVさん」

「うむ」

「うん。僕もそう思う」


 これでみんなの謎は解けた。だけど、最初から知ってるはずのGVさんとヤマトが口出ししなかったのは正直どう対応すればいいのかわからなかった。

 その後も、模型はまた形を変えていった。液体の量が足りないのか、合計10本以上が地面に流された。模型はどんどん変形していく。やがて、模型の怪物は怪獣レベルまでに到達した。

 触手の数がどこも入り乱れ、正確な本数を把握することができない。そして、一番気持ち悪いと思ったのは、最終的な形状には蛸足のようなものが生えていたこと。

 これがどういう動きを見せるかは教えてくれなかった。


「ルグアさん。このハエトリグサ。デバフとかあるんですか?」

「あるよ」

「例えば……」

「麻痺毒とかかな? 私には効かないけどね」


 なるほど、麻痺毒。ルグアさんに効かないというのはイマイチピンとこなかったけど、今の段階では不要な情報だと思うので聞かないことにする。

 なのに、このルグアさんもGVと同じような印象がある。どうも理解できないのだ。どうしてここまで詳しくわかるのか? それとももうすでに戦った経験があるのだろうか?

 俺がそう考えていると、思考を悟ったのかルグアさんはこんなことを言った。


「ちなみに私。このゲームは初見だよ。アレンもね」

「初見?!」

「うん。まあ全部勘でわかるから、不便ではないけど……。じゃあ、振り分けするよ!」


 完全にルグアさんが仕切っている。今いるリーダー枠では副団長の俺なのに……。


「まず前衛。カケルさんとヤマトさん。バレンにフォルテね。前衛支援はGVとアレン。指示と全体攻撃は私に任せて。リアルタイムで命令するから」

「り、リアルタイム!?」

「ん? 私何かおかしいこと言った?」

「いやいやいや。さすがにリアルタイムはありえないですよ。ルグアさん……」


 ケイの親なだけあって指示は的確なのだろうと思っていたけど、その動作にラグをなくすの正直納得いかなかった。

 ケイでも数秒先しかわからないだろうに、彼女はそれを上回るスペックを持っているのか? やっぱりこのギルドは――ギルドの関係者は異次元すぎる。この状況に耐え続けられるのかが不安だ。


「えーと、今このギルドのリーダーはケイだけど、副リーダーって決まってる?」

「そういえば聞いてなかったっすね……」


 今度は何の話だろうか。するとGVさんが声を挙げた。


「今の副リーダーはカケル君だよー」

「ちょっ。GVさん!!」

「へぇー。カケルさんが副リーダーなんですね。じゃあ、戦闘開始の合図お願いしてもいい?」

「えっ!? 俺が!?」

「うん。切り込み隊長よろしくね!」

応援よろしくお願いします!!!!!


そして、お知らせ。今年の年末年始に"ビースト・オンライン"と"リアゼノン・オンライン"同時連続更新を実施します。


リアゼノンは藁科結人と亜蓮の掛け合いと過去話の回収。ビーストではクライマックスまで猪突猛進していきますので、お楽しみに!!!!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
副リーダーはカケル。果たしてどうなるのか気になります!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ