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第80話 食虫植物

 ルグアさんとアレンさんの走る速度は、フォルテさんの時よりも速かった。オオクワガタのいる地点に着くまでに約5分。


 普通ではありえないスピードで、何が起こったのかさっぱりわからなかった。そして、オオクワガタが去っていく様子もしっかり見えた。


 Vさんがヤサイダーと戦った時に、ケイのお母さんから伝授してもらったと言っていた。


 たしかにルグアさんの方が若干リード。それを追いかけるようにアレンさんが走っていた。


 俺だったらこんなことできない。というよりも、もしできたとしたらきっと速度を落とすことすらできないだろう。


 そしたら衝突不可避だ。きっとダメージが入るかもしれない。だけど、この2人は急停止しても衝突しそうな気配がなかった。


 どうしてこんなことができるのかものすごく謎だった。とても気になるが、それよりも今いる場所が問題だった。


 たどり着いたのはものすごく地面が硬かった。こんなところにヤサイダーが埋まっているとは考えられない。


「ルグア。どの辺っすか?」

「えーと……。アレンが立っているところから右に10歩。30歩前進して」

「了解しやした!」


 アレンさんが言われた通りに動く。するとそこの地面をビーストモードの姿で勢いよく堀り出した。


 どんどん穴が大きくなっていく。そうして5分後。アレンさんの手が止まった。


 俺は気になって見に行くと、そこにはボタンのようなものがあった。Vさんとルグアさんも集まってみんなして頷いたあと、代表でアレンさんがボタンを押す。


 途端地面が激しく揺れて、西に斜め向いた方向に神殿のような建物が現れた。まるでエジプトにでも来たみたいな感覚。


 その建物は、砂のお城を模した見た目で、オオクワガタの大きさの80倍以上もある巨大な建造物だった。


 これを見た俺はすぐにヤマトさんとフォルテさん、バレンさんに連絡。Vさんに歪みを作成してもらって、一ヶ所に集合する。


 そうしたらそうしたで、フォルテさんが高速移動で周辺を見物。ゲーム内でも使えるペイントアプリで全体の様子を模写してくれた。


 そして、俺たちはその建物の中に入った。ルグアさんが言うにはこの建物の中にヤサイダーがいるらしい。


 だったら急いで攻略する必要がある。もしかしたら体力も思考回路も疲弊しているの違いない。


 俺の先輩で仲のあまりよくない敵ギルドリーダーだけど、学校のクラスメイトが心配しているんだ。


 建物の中は多くの燭台が道を成していて、それなりに薄暗かった。バレンさんが一つずつ一つずつ紫の炎を灯していき、どんどん奥の方へと進んでいく。敵が出てくる様子はない。だけど、正直怖かった。


 フォルテさんもものすごくぶるぶると震えている。それだけ道が狭いということだろう。特定条件による狭所恐怖症。


その恐怖心が俺の方までひしひしと伝わってくる。通路はというと床は石畳で、壁は砂壁だった。


 さすがは砂の神殿。ここまで細かく設定しているのであればボスもかなりの強さなのだろう。


 さらに進んでいく。進むにつれて壁は砂壁は白い石の壁に変わっていた。中に入っていけばいくほど作りこみ具合が分かってくる。


 運営は雑なところは雑に、こだわりたいところはこだわる形で作っているのだろう。ここまで作りこみ具合の差があるのならきっと裏世界に来る人はあまりいないだろう。


「ルグアさん。ヤサイダーのいるところまであとどれくらいですか?」

「うーん。あと……。10メートルくらいかな? そろそろ広場が見えてくるはず……」


 あまりにも当てずっぽうなルグアさんには疑心暗鬼になる。だって、言ったことがいくら本当だとしてもそれが事実だという証拠がない。


 俺にはただの偶然でしかないと思ってしまうのだ。だけど、今まで外したことは一度もない。


 そう思っている中で、本当に道なりに歩いていたら広い空間に出た。そこには中央に大きな植物が佇んでいて、とても静かなところだった。



 燭台もそのフロアをほのかに照らしそうな並びになっている。


 そこに、バレンさんが火を灯すと、薄紫色のとても怪しい雰囲気の部屋になった。こんな場所で戦いたくないけど、そもそも敵が何なのかわからない。


 今までは魔物は昆虫だった。だけど、このフロアには昆虫らしき姿は一切ない。じゃあ、このフロアの敵は何なのだろうか?


 俺たちは、目の前にいる植物を眺める。すると、一番てっぺんに触手に絡まっているヤサイダーを発見した。


 もしかしてこの植物がボス? つまり……。


「これは、ハエトリグサだね……」

「ハエトリグサ?」


 Vさんがボソッっとつぶやき俺は聞き返した。ハエトリグサといえば代表的な食虫植物だ。だけど、こんな場所にいるんて。


 触手は多分運営側の後付けなのだろうけど、とても気色悪い。こんな敵と対峙するのは御免だが、近くにヤサイダーがいるなら戦う必要がある。


 この敵は打撃で行った方がいいと判断した俺は、アイアンクローからボクシンググローブに切り替えた。


 バレンさんとフォルテさん、ルグアさんは手から長い爪を出す。Vさんは刀を構え、ヤマトは大剣を装備し臨戦態勢。


 そして、アレンさんは大きなランスを構えていた。これでこっちの準備は完了。俺は大きく息を吸うと大声で。


「戦闘開始!」


 そう叫んだ。

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