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第8話 意地でも行く気はあるか?

 ◇◇◇現在◇◇◇



「そうだな……。では、カケルと言ったか。そなたは我の愛娘をどう思っておる。護れる自信はあるのかを問いたい」

「え!?」

「そなたはどう思う」

「お、俺は……。俺は……」


 突然ジークに指名されて俺は困惑していた。俺は俺でケイとは違う。今は病人だ。だけど、ここはしっかりと答えないといけない。

 しかもこういうことを質問されたのは、初めてのこと、どう反応すればいいのかわからない。でも、ここはしっかりとアリスに聞いておきたかった。こういうの返し方は……。


「すみませんが……。アリスを旅に連れて行くことはできません」

「それはどうしてだ? 理由はあるのかね?」

「そ、それは……」


 まずい……。ほぼ無計画で言ってしまった。このタイミングで俺が答えられなければ、だけど、言い訳も何も思い浮かばない。


「わたしを連れて行けないってどうして?」

「そ、それは……」

「カケル! どうしてなの!?」

「アリス……」


 彼女はどこまで俺と一緒に行動したいんだ。たしかに俺の本音は連れて行きたい。でも、彼女の決意もしっかり聞きたい。

 無計画だと思っていたことが、実際には自分の意図から来ているものだと、数秒遅れて理解した。


「じゃあ、アリス。これまで旅を成功させたことはあるか?」

「ありません……」

「俺たちのようなプレイヤーに勝ったことはあるか?」

「それもないです……」

「そんな危険な旅を、俺たちと意地でも成功させたい気はあるか?」

「え、ええと……」


 できるだけ優しく言ったけど、彼女はものすごく曖昧な表情をする。この問いかけにかなり威力があったようだ。

 アリスが悩んだ時間。考え込んだ時間は30分以上かかった。それでも、言葉が喉をつっかえるようで。回答が来ない。

 そして一度アリスは決心したように頷く。俺とケイ。ジークはアリスに視線を合わせる。もう一度彼女が頷くと、話し始めた。


「たしかに、わたしは2回旅に出ました。しかし、2回とも失敗に終わりました。そして、旅に出ることをやめました」

「……アリス」

「でも、ケイやカケルと出会って、優しいプレイヤーもいることがわかりました。わたしは彼らのことを心から信頼しています」


 アリスの身体が震え出す。言葉では信頼していると言っても身体は正直だ。実際には俺たちのことへの。容姿と立場での恐怖が拭い切れていないのだろう。

 テントの中が張り詰める。アリスの唇が、歯がガタガタと小刻みに音を立てている。俺たちはそんな彼女を見守った。

 

「わたしは……! わたしはそれでも、カケルたちと一緒がいい……! 2人はとても優しいし、特にカケルのことが大好きだから。どんなに危険なことだろうと、離れたくない……。離したくない……から……!」

「そうか、大きくなったな。愛娘よ」

「お父様……」

「承知した。そこまで彼女が旅に出たいというのなら、彼女の命全てを彼らに任せるとしよう」


 え? マジ?


 このAI普通じゃない。俺たちの言葉に加え、会話に参加している人、全員の言葉を正しく理解している。


「アリスさん良かったね!」

「え……。わわ、わたしは、一体……」

「自覚してないならもう一度言うよ。アリスさんは、今日からギルド【アーサーラウンダー】の正式メンバー。一生の仲間になったんだ」

「わたしが……。ギルドメンバー……」

「そう。今度からは僕たちがアリスさんを護る。ずっとね」


 ケイ。さすがすぎます……。ケイの言葉で張り詰めていた空気が元に戻った。もう心臓バクバクでどうなるかと思ったんだけど。


「ほら、カケルもなにか言ってよ」

「お、俺?」


 突然振られても……。


「カーケール♪ よろしくお願いします!」

「お、おう……」


 アリスは急に上機嫌だし……。


「ところで、ギルドは何すればいいんですか?」

「「そこから!?」」


 アリスは天然なのか? いやいやそんなことは無いはずだ。ただ単に俺たちの言葉の意味を把握していないようにも見える。

 さて、ギルドのことに関してAIにわかるように説明するには、どう言うのが正解か? 小さい子供向けにするのか?

 それとも真っ直ぐそのまま言えばいいのか? 


「アリスさん。実を言うと僕もギルドがどう言うものなのか分からないんだ」

「ケイも?」

「うん。だけどそのうちわかるよ」

「わかった」


 リーダーが理解できてないのは、ある意味危険かもだけど、アリスはとても納得したそうで、早速出かける準備を始めた。

 さすがにドレスは着ないだろうけど、色白――と言っても元々白いが――だからどんな色でも外れはない。


「えーとこれはこっちで、これはあっちで……」

「アリス。何してるんだ?」

「荷造りです。わたしにはストレージという概念が存在しないので」

「そうか。なら、俺が荷物持ちになってやる」

「ええ!? いいんですか!?」

「なんのなんの、その方がアリスも楽じゃん?」


 アリスは身体をくねらせて、申し訳なさそうな顔をする。アリスの準備が終わったら、今度こそは作戦会議だ。

 ラミアやファリナ。フォルテにバレンが待っている。俺はジークに挨拶すると、荷造りが終わったばかりのアリスを連れて外に出た。

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― 新着の感想 ―
こちらでは「はじめまして」だったはずです…(違ってたらごめんなさい^^;)ミズモリと申します。 リーダーがギルドを理解してない…(・・? えーと、あれ? 私の認識も間違ってるのかな…?  この作品での…
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