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第77話 戦う者逃げる者

 Vさんの剣が突き刺さり、オオクワガタは大きくぐらついた。かなりダメージが入ったようだ。俺はここを逃すまいとアイアンクロー7で切りつけたが、切断とまではいかなかった。これにはVさんもどうしたものかと首をかしげる。


「普通なら僕の絶縮と絶断で貫通できないものはないんだけどね……。これはかなり悩む展開かな?」

「絶縮? それって何ですか?」

「うーん……。まあこうやって……」


 Vさんはオオクワガタの胴体に向けて剣を飛ばす。その剣は亜空間から発射されたものだった。それはオオクワガタの身体に突き刺さる。この動作が絶縮というらしい。そして、そこに空間を切り裂く絶断を組み合わせることで、剣は貫通するらしい。だけど、貫通しないという現象に納得いかないようだった。


 こうなったらというように、今度は剣を飛ばすと同時に反射効果を追加した。こちらは絶反というらしく、剣を反対方向に打ち返すような感じだった。これで手数が増える、だけどオオクワガタはびくともしない。


 すると今度はオオクワガタの大顎に急接近して、黒い刀を振り下ろした。最初は弾かれたが、これで硬さが分かったのだろう。2回目以降は刀が勢いよく貫通した。


「これでも斬れないのか。困った……」

「Vさん俺はどうすれば……」

「カケルくんは胴体の方をお願い。大顎は僕が何とかして切断するから」

「わかりました」


 なんかバトルのメインが俺じゃなくなってる? 気のせいだろうか? 俺は胴体をアイアンクローで切りつける。だけど、やっぱりVさんみたいに貫通することはない。ここに貫通するようなイメージをぶつければなんとかなるだろうか?


 俺は貫通する。いや貫通した時のことを考えてアイアンクローを振りかぶる。するとザクッという音が鳴った。よく見るとオオクワガタの胴体にやや浅めの傷ができていた。


 これならいける。そう思って同じことを繰り返した。ザクッザクッと音を響かせるうちに、一点集中で与えた場所はかなり奥深くまで抉れていた。それと同時に、こんな残酷な傷をつけてよかったのかと申し訳なく感じている自分もいた。


 きっとこのオオクワガタにも事情があるのかもしれない。だけど、倒さなければいけないのもたしかなこと。だから、とてつもなく罪悪感を感じてしまう。


「Vさん。このオオクワガタを一ヶ所にとどめることできますか?」

「できるよー。ただ、この大きさだと……持って1分くらいかな?」

「それだけでも十分です。おありがとうございます!」


 Vさんが4本の剣をオオクワガタの周囲に並べる。すると黄色い障壁が展開された。俺はその障壁の前に立つ。そしてオオクワガタの両目に焦点を合わせ、澪のことを考えた。するとだんだん左手甲が熱くなっていく。


 これが自分で使うということなのか。そう思った時走馬灯のようにオオクワガタの記憶が脳内に流れてきた。これはゲームの開発段階の話だろうか? オオクワガタの映像がモニターに流れている。


 オオクワガタにはそれほどいい思い出がないようで、開発もかなり雑だったらしい。本当は表世界で活動したかったみたいだ。だけど、実際は裏世界の中ボス扱いになった。生成されたのは一回のスポーンで5体。今対峙しているのはそのうちの1体だったらしい。


 とここで黄色い障壁が静かに消えた。しかし、ヤサイダーについての情報は全くつかめなかった。ヤサイダーはどこにいるのか? それを探るためにやったのだが無意味だったようだ。


「カケルくん大丈夫?」

「は、はい……。ちょっと情報渋滞で頭が痛いですけど……」

「そう。ならよかった。あとでその紋章の詳しい情報よろしく」

「わかりました」


 しかし、そう話している最中にオオクワガタは両羽を大きく開き、今にも飛び立ちそうな態勢になっていた。俺はそれを追いかけようとしたが、Vさんが今はまだというように俺の左手を握った。その時にはもう手の甲の熱さは完全に消えていた。

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