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第64話 魔力回路と血中魔力

 質問攻めが許可された。俺はどこから質問しようか考える。バレンさんの血のこと。なぜバレンさんの血液が入った容器を丁重に扱うのか?

 それから、なぜ景斗の瞳はスカイブルーで普通の日本人とは異なるのか? 『リアゼノン事件』に関しての情報も欲しい。

 俺は思いついた順番に聞くことにした。


「じゃあ、結人さん。なんでバレンさんの血は特別扱いするんですか?」

「その質問からね。バレンさんの血液は僕にとっても僕が元いた世界にとっても、とても貴重なもの……かな?」

「貴重なもの?」

「そう。僕やフォルテ、景斗や景斗の親はみんな魔力回路というものを持っている。だけど彼だけはちょっと違うんだ」


 結人さんはヒラヒラとさせていた紙をもう一度亜空間から取り出し、机の上に置く。そして、鉛筆も用意した。

 そこにかなりデフォルメした人の絵を書き、魔力回路から流れる魔力の軌道を書き足す。


「魔力回路はいわば魔力を生産したりとかをする場所。と言っておけばだいたい予想つくかな?」

「魔法を使う時に消費され。再び魔力が自然回復するってことですか?」

「まあ、そんな感じ。もっと細かくするとややこしくなるから、魔力回路側の話はここまでにしておこうかな?」


 結人さんはまた亜空間から別の紙を準備した。そこに同じようにデフォルメした人の絵を描くと、今度は細長い線を張り巡らせる。


「こっちがバレンの場合。彼の場合は身体自体が魔力回路と同じ役割をしている。多分骨髄から生成されるものそのものに、魔力を含んでるだと思う」

「つまり、バレンさんの場合は魔力回路を通した魔力ではなく、血中魔力として作られているってことですか?」

「そういうこと。そして、バレンの血は血液型問わず適合率が高い。僕の相棒よりも効率的に魔法を使える人を増やせるんだ」

「なるほどです」


 だから、俺にバレンさんの血を入れたのか。たしかに拒絶反応は起こらなかったし、結人さんも安心した様子だった。

 だけど、魔力回路と血中魔力のもっとわかりやすいはっきりとした違いが欲しい。

 そういえばと、景斗さんが持っていたメモの内容を思い出してみる。そのうちのひとつにこんなことが書かれていた。


"2033年7月20日 景斗が誕生。その日の段階で彼の瞳が普通の人と異なることが判明。眼科に問い合わせてみたが原因解らず。彼の魔力に関して独自に検証したところ、眼球に膨大な魔力を確認。これを遺伝子エラーによって魔力回路が眼球に達していると仮定し、病名を『先天性魔力眼球症』とすることにした。現在経過観察中。"


「景斗さんの遺伝子エラー……」


 結人さんは『はっ』っと思い出したかのように、最初に書いた魔力回路側の図を用意する。

 そこに、捻れた梯子状のイラストを書き足した。このイラストから察するに、遺伝子のことを指しているのかもしれない。


「結人さん。これって……」

「見ての通りだよ。さっき景斗のこと考えてたよね?」

「な、なんでわかるんですか?」

「まあ、何となく……かな?」


 結人さんは少しそっぽを向いて、答えた。俺はそんな結人さんに、もうひとつ質問する。


「魔力回路と血中魔力の決定的な違いってなんですか? もしかしてこの図も」

「関係してるよ。僕たち魔力回路を持つ人は遺伝子の段階で魔法が使える。だけど、魔力は血液には溶けない。でも、バレンの場合は骨髄からって言ってたよね?」

「言ってました」

「あとはさっき僕が言った通りだよ。あ、そうだ。バレンの血液を使った面白い実験を見せてあげるよ」


 結人さんはバレンさんの血液が入った容器を亜空間から取り出し、注射器に詰める。そして、木の板も用意した。

 これから始まるのは何なのだろうか? 俺はいくつか予想する。だけど、ここから始まるのは思ったことと一緒だった。


「これを木の板に垂らして……。1分待つ」

「いったい何やってるんですか?」

「見てのお楽しみだよ。この後どうなると思う?」

「え、えーと。普通に乾くですか?」

「どうしてそう思ったのかな?」


 結人さんはスマホのタイマーで1分を測り始める。俺はその間理由を探すことにしたが、個人的に当たり前の現象を答えたので、根拠のありそうな答えが出てこない。

 時間は刻刻と過ぎていく。残り30秒。バレンさんの血は、グズグズと蠢き始めた。なんか気味の悪い実験だ。

 こんなことに興味を持つ結人さんの思考が異常すぎる。誰もこんな実験はみたくないはずだ。

 残り20秒。バレンさんの血は一点に集中するように集まり、少しずつ三角錐の形状になっていく。

 非常に怖い。だけど時間は止まることを知らない。血は木の枝のように伸びていき、一番下の方から結晶化が始まる。

 色も鮮やかさを増して、綺麗なルビー色になった。こんなことになるとは、全くの想定外。バレンさんの血が普通の人とは違うことがよくわかった。


「どう? ほんと不思議なんだよね……。量を入れればこうはならないんだけど、少量だとこうやって結晶化するんだ。今僕が研究している現象のひとつだよ」

「そうなんですね。でもこの結晶は確かに不思議です。どうしてなんですか?」

「どうしてなのか。ねぇ……。今僕が考えてる仮説は、バレンの血は外部の魔力を通して呼吸している。かな?」

「な、なるほど……」


 皮膚が呼吸することは知ってるけど、血液が呼吸しているとはどういうことと思うが、まあここはのんでおくことにしよう。


「この話はもう大丈夫です」

「あ、そう?」

「はい。では次の質問をしますね」

「オーケー」

応援よろしくお願いします!!!!!!


上手く伝わったかな?

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― 新着の感想 ―
今回の話は奥深く感じました。研究は奥深いですね。
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