第59話 ポータル起動
横一列に4人並ぶ。俺とフォルテさんは人型のまま、ヤマトとバレンさんはビーストモードで。どちらも動きやすい方を選ん走る。昆虫の場所を索敵するフォルテさんをメインに、バレンさんが連携。
両サイドから迫る蟻の大群。それを轟雷と暴炎で追い払う。だけど、いくら走るのが速い俺でも、この敵の数は多すぎる。
ざっと目算すると数10万匹。バレンさんとフォルテさんの2人では防ぎきれない数に、俺とヤマトは飲み込まれそうになる。
だけど、これはもうすでに想定済み。高難易度エリアは敵も強ければ数攻めも多い。だから、一度に倒せる数が多い2人を外側にした。きっと戦闘力も高いはずなので、ものすごく頼りにしている。
「酒ダチ! そっちは!」
「全然減らねぇよ……。運営の野郎こんな鬼畜エリアなんか用意しやがって……」
「それは同感だ」
と言いながらも、襲ってくる蟻を倒していく2人。この状況で会話できるということは、それなりに余裕があるということなのだろう。
こっちは戦闘に不向きというか戦闘慣れ――ヤマトは違うだろうけど――してないので、余裕という2文字は存在しない。というか、アリスとメルの安全第一に考えないとなので、こっちの方が安心していられない。
俺は時々マップを見ながら移動する。幸い今俺たちが向かっている道に障害物はなさそうだった。
だけど、障害物がないということはある時よりも危険ということ。だから、気を抜いていられない。
「バレンさん! フォルテさん!」
「なんだ?」「んだよ……ザコ」
「フォルテさんはヤマトからメルの入った保護ボールを。バレンさんは俺を背中の上に。逃げ戦法で行く」
「ちょ。危険すぎないか? まだこんな数いるんだぞ!」
フォルテさんが放電しながら大群を指さす。その場にいた蟻は一斉に焼け丸焦げ蟻に変化して、ポリゴンとなって消える。
一度に倒したのは1万匹くらいだろうか? 蟻のサイズは猫と同じくらいの大きさ。リアルの蟻で換算すると1500倍はとっくの昔に超えている。
「これも作戦だって。フォルテさん。俺が合図するまで帯電状態で走ってください。合図をしたらすぐに放電を」
「なるほど……。そういうことですか……」
「ヤマトは分かったみたいですね……」
やっぱり、フォルテさんとバレンさんの前では時々ですます口調になってしまう。まあ目上なのはわかったからいいけど。
俺はビーストモードになってバレンさんの背中に乗っかる。そして後ろを向く形でしがみつく。これで、蟻の大群を引き寄せ、フォルテさんの雷で一掃するというもの。
フォルテさんを囮にしているようにも見えるがこれも正しい判断だと思っている。
本当に正しいと思ってることは指摘されない。今回は危険すぎないかと言われただけで、指摘はなかった。
それ故に、バレンさんもフォルテさんも俺の指示を聞いている。聞いてなければ意味がない。
俺は副団長だ。それなりに指示を飛ばして引っ張っていかないといけない。
「俺は魔法は使えない……。ケイよりも指示が上手くない。でもできることはある!」
「頼りにしてるぜ。カケル」
「任せてください!」
だんだん見えてくる中心部。そこには円形の床があった。ここがきっと表世界に繋がるポータルなのかもしれない。
バレンさんにその床の上に立つよう伝える。そしてフォルテさんに放電準備を指示する。遅れてヤマトが到着。
「フォルテさん!」
「おう! ボルテックバーン!」
フォルテさんが蟻の大群めがけて放電する。すると、山のようにいた蟻が全部焼けた。やっぱりフォルテさんの紋章の力は気持ちいい。爽快感抜群だ。だけど、やっぱりネーミングセンスが……。俺含めて全員ネーミングセンスがない……。
でも、フォルテさんのおかげで安全圏を確保できた。あとはポータルを起動すればいいだけ。と思ったら、もうすでに起動していた。
きっとフォルテさんの雷が起動させたのかもしれない。これで手間が省けた。俺たちはポータルの中心に立つ。真ん中には起動装置のようなものがあった。
俺はそれを操作して起動させる。ホログラム画面は触ってる感覚がしない。だけどかなりプログラムを詰め込んだようなヌルヌルの動きをしていた。
上昇ボタンを押す。正確には選択する。するとポータルは円形に光って俺たちを包みこんんだ。
しばらくして、光が落ち着くとそこはスターのど真ん中。俺の読みは当たっていたようだ。保護ボールからアリスとメルを出す。
2人は同時に背伸びをして、安堵の表情を見せた。やっぱり兄弟姉妹っていいんだなと思う。ほんと、弟の病も教えてもらわないままいなくなったから、親の意図が理解不能だ。
というわけで、作戦は成功。全員死亡することなくスターに戻ることができた。そして、スターから裏世界にも直通で行けるようになった。
これで他プレイヤーの士気も上がるかもしれない。遊ぶ人が増えれば活気も上がる。だけど、これにもロゼッタヴィレッジの急襲が関係するかもしれない。
もし彼女らが、ゲームをする人を消そうとするなら。それは俺にとって最悪なこと。俺は弟を探すためにもゲームをしている。それを思い出させてくれたのは、アリスとメルの関係があったからだ。
俺たちはギルド拠点に戻る。ゲームに夢中になりすぎて朝ごはん食べるのを忘れてしまった。時刻はちょうど13時。お昼は少し遅めになりそうだがそれでもいい。アリスとメルにギルド拠点から出ないように伝えると、一斉ログアウトをした。
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