表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/123

第49話 ダンジョンの分かれ道

 蜘蛛の大群が見えた先。奥の方には網目状の巣がある。長期間放置されていたらしいスターの地下は、巣窟と化していたらしい。

 フォルテさんは戦闘態勢に入るべく、帯電状態をより一層大きなものにした。俺も戦闘部隊に入りたいが、アリスとメルが心配で離れるのが怖い。

 すると、誰かが背中を軽く叩く。視線を向けると、そこにはヤマトが立っていた。


「ここは俺様にお任せを、カケルは前線に行ってくだせぇ」

「ありがとう、ヤマト」

「いえいえ」


 同級生なのにゲーム内では少し癖が強いヤマト。そんな彼にアリスとメルを任せて、俺は敵の群れに紛れ込む。

 蜘蛛の脚は多く、大群となれば何本あるのかわからない。俺は一体ずつしか戦えない。量に対応することはできても、一撃を狙わないと無理だ。


「酒ダチ準備出来てるか?」

「あいよ! アル中! 勝手にぶちかましやがれ!」


 そんなバレンさんの方へフォルテさんからの電撃が走る。これはいったいどういう状況なのだろうか? 俺は拳を振るいながら様子を見る。

 雷の糸はバレンさんの身体にまとわりつき、そこに紫炎が加わった。その状態になった彼は、脱力したまま攻撃する。

 蜘蛛の群れは散り散りに燃え、通路全体を紫の炎と雷電が支配する。だけど、俺やヤマト。アリス姉妹には影響が出ていない。

 バレンさんとフォルテさんの合わせ技。通路はまだまだ遠くまで続いている。この様子に、アリスが目を輝かせた。


「バレン、フォルテ……! 凄すぎます……!」

「俺の出番が……」

「カケルさん落ち込まないで」


 俺は年下のメルに慰めてもらう始末。俺の出番がないほどのバレンさんとフォルテさんの連携プレー。

 加えて紫炎が通路全体を燃やしているので、道が見やすくなった。俺はその紫炎に触れてみる。

 熱は感じるがダメージ判定にはならなかった。こんな炎は見た事ない。深まる謎とともに、ワクワクが止まらなくなった。

 すると、調子が良かったバレンさんが……。


「なんか頭が痛てぇな……。ったく、あの好奇心旺盛馬鹿はどんだけ俺から血を抜いたんだか……」

「たしか……。大きい容器を3つ分でしたね」

「抜き過ぎだ抜き過ぎ! けど、なんか安心した。あんがとカケル」


 バレンさんは俺の名前をなかなか言ってくれない。だけど、言ってくれるとどこか嬉しい気もする。 

 彼は少しずつ心を開いて認めようとしてくれているようだ。それだけで俺も安心する。通路の中を進むと、まず大きな蜘蛛の巣があった。

 それをバレンさんが炎で焼き尽くす。そういえば、バレンさんの紋章はなぜ紫炎なのだろうか。俺は気になったが、聞かないことにする。


「結の野郎め! 生命維持に支障出るんだっての!」

「んなら酒ダチ。リアル戻ったら飲むか?」

「てめぇとは断固拒否だ!」


 また言い合いをしている。この2人の関係性が全く掴めない。昔から一緒にいるような感じじゃないけど、どう捉えればいいんだか。

 俺たちはそんな彼らをスルーして明るくなった道を進む。蜘蛛の巣はほとんど燃やし尽くされ、歩きやすくなっていた。

 やがて、通路は分岐点に着いたのか6方向に道が枝分かれする。立ち止まって置いてきたメンバーを待つと、その通路の狭さにフォルテさんが身震いしているのがわかった。

 この状況は前にも見たことがある。フォルテさんは初めての狭い道が苦手。こういう時に限って酒センサーが強くなる。

 酒に逃げようとする彼にバレンさんが一喝入れると、我に返ったのか震えが止まった。その後フォルテさんは道幅を測り始める。

 通路がそこまで狭くないことに肩を撫で下ろしたと思うと、フォルテさんが指を指して言った。


「正解の道は右から2本目だな」

「この道って正解不正解あるんですか?」

「あるに決まってる。この手のやつは親友が得意だったからな!」

「じゃあ、フォルテさんを信じます」


 俺はみんなに右から2本目の道へ進むよう伝えると、さらに奥へと歩いていく。フォルテさんが道全体に電流を張り巡らせる。

 一気に眩く照らされ、果てしなく長い道が続いているのがわかった。バレンさんはいつの間にかビーストモードを発動させて、歩き疲れたらしいメルを背中に乗せている。


「バレンさんの背中、毛がフサフサで気持ちいいですね。アタシにもこんなフサフサな毛が生えてたらいいのにって羨ましいです!」

「ま、狼だからな。サイの背中はおすすめできねぇから、俺で満足するだけにしてろ!」

「うふふ、バレンさんは昔からそんな性格なんですか?」

「こんな性格で何が悪いんだよ!」


(もっと小さい子に優しく接することできないんですか、バレンさん……)


 俺は彼の対応にため息をつく。バレンさんの喧嘩腰な発言に、メルは意外と楽しそうな反応をしている。

 耳を引っ張ったり、毛を引っ張ったり。それに合わせてバレンさんが悲鳴をあげ、怒鳴りつける。そんな彼にメルは笑っていた。


「何がおもしれぇんだよ! コラッ!」

「バレンさんの怒り方が面白くて、それ!」


 ――グイッ!


 メルがバレンさんの尻尾を引っ張る。すると彼はヒィヒィ言いながら暴れだした。まるでロデオ状態になった2人。メルは満面な笑みを浮かべ、バレンさんは涙目になっている。


「メル。そろそろやめてあげたら? バレンさんが可哀想だから」

「分かりました。カケルさん」


 メルが意地悪をやめてもバレンさんは喘ぎながら走り回る。通路の壁に頭をぶつけて痛みを堪えようとするが、それはどう考えても逆効果だ。

 やがて落ち着いたらしいバレンさんは、ビーストモードを解除。人型に戻った。もうビーストモードにはならないと言うような表情で、メルを睨みつけている。


「バレンさん。ふざけてごめんなさい……」

「かなり痛かったんだからな! 今度やったら一生乗せてやんねぇ……」

「ほんとごめんなさい!」


 そんなこんなで俺たちは次の分岐点に辿り着いた。真ん中には星型に彫った窪みが2つ。その窪みの真ん中には鍵穴が空いている。

 さらに見てみると鍵穴は右に1つ左に1つ。真ん中には縦線があって扉のような仕掛けになっていた。

 両サイドには通路が1つずつ。ここは2手に別れて攻略するタイプだと見た俺は、メンバーを決めることにする。


「AとBに分かれて行動するけど。俺が勝手にメンバー決めてもいいですか?」

「どうぞ」

「好きにしろ。ザーーコ!」


(今までフォルテさんが戦ってる姿は見たから、バレンさんの戦闘スタイル見たいし)


 俺は、自分の目で確認したい方を優先して考える。きっとバレンさんは反対するだろうけど、このメンバーがいいかもしれないと思い提案してみる。


「まずAチーム。俺、アリス、バレンさん。Bチーム。ヤマト、メル、フォルテさん。異論は?」

「オレはそれでもいいぜ」

「ザコと一緒か……。まあいい」


 まさかの提案が許可された。俺はただバレンさんの戦い方を勉強したいだけだが、せめてザコ呼びだけはやめて欲しいと思った。

応援よろしくお願いします!!!!!!!


次回からはバトルが連続して出てくるかもです!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 続きを楽しみにしています!頑張ってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ