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第47話 フォルテと日本酒

「カケル!!」

「カケルさん!!」


 スリープ解除直後。俺の耳に2人の少女の声が入ってくる。俺は素直に閉じた目を開こうと思ったが、なんか面白そうなのでそのまま様子見することにした。

 配置からして右にアリス左にメル。俺の目の前にケイがいるのかもしれない。少し離れた場所では何かを飲んで喉を鳴らす音。これはきっとフォルテさんがお酒を楽しんでるに違いない。

 そしてさらに離れたところでは、通行人が歩く足音。俺が現実世界に戻ってる間に場所が移動したらしい。


「ケイさん。カケルさんが目を覚ましません!!」

「大丈夫だよ。アバター残した状態で別行動している最中だと思うから」

「別行動ですか。なんか魔法みたいです……! ケイ」

「あはは、魔法じゃないよ」


 ケイが半分呆れたような声で笑う。俺はいつまで瞼を瞑っていればいいんだ。今すぐ開きたいが、アリスとメルが楽しんでるみたいで動きづらい。

 だけど、責任者の声が聞こえない。どうやら解決したようで少しほっとしたが、その時に誰かが俺の鼻をくすぐった。


「くすぐっても起きないのかな?」

「さあ、どうでしょう。メルもう少しやってみてください……!」

「わかった。お姉ちゃん!」


 やっぱり姉妹で子供なんだなと思った。そういえば俺も病院から一時退院した弟とじゃれあっていた思い出がある。その時は弟も楽しそうだった。長期間一緒にいられないのに時間の限りはしゃぎまわる。

 やっぱり弟に会いたい。でももう会えない。俺はそっと目を開くことにした。なんか会えるような気がしたからだ。


「あ、カケルが起きました……!」

「カケルさんおはようござ……」

「やっぱりいないか……」

「「?」」


 俺の第一声にはてなを浮べる2人。周囲を見回しても弟の姿はない。もうどこにもいないんだと、自分を納得させるしかなかった。

 その代わり、今の俺にはアリスとメルがいる。それだけでも嬉しい。俺は両腕を2人の少女の肩に乗せた。

 2人同時に目を一瞬閉じて、パッと見開く。俺はそのまま2人の頭に手を持っていきガシガシと撫でる。

 アリスとメルはそれにニカニカと微笑み満足そうな顔をした。俺は寂しくなんかない。何度も念じるが弟がいないつらさが真っ先に出てくる。

 でも、そんな俺を安心させてくれるのはアリスとメル。失わないように必ず守り続けたい。


「カケル。なんか怖いです……!」

「うんうん。怖い!」

「え、あすまない考えごとしてた」


 そんなに考え込む俺の表情は怖いのだろうか? 鏡がないため確認することができない。


「ところでケイ」

「何?」

「責任者との交渉はどうなったんだ?」

「ああそれね。無事許可おりたよ」


 やっぱりケイはすごい。責任者もAIなのだろうけど、絶対に勝つ。俺も見習わないとなぁって思いつつ、俺はフォルテさんのところへ向かった。


「フォルテさん。責任者とケイの様子はどうだったんですか?」

「えーとだな。終始ケイの方が優勢だったぜ」

「と言いますと」

「責任者は言い訳とかばっか言ってたんだ。ったく運営のやつも最悪のメンバーだぜ……。知り合いの作ったゲームの方がマシだ」


 フォルテさんの知り合いってゲーム制作会社で働いているのか。いつか会ってみたい。


「さて、ケイ。オレはまだここにいるが、一旦ログアウトするんだろ?」

「うん。僕もだんだん眠くなってきたからね。さすがに完徹は不味かったかも。カケルはどう??する?」

「俺はフォルテさんと残ります」

「わかった。じゃあ、先に失礼するね」


 そう言ってケイがログアウトしアバターが消える。そういえばヤマトの姿がない。俺はフォルテさんに尋ねる。


「あの、ヤマトは……?」

「ヤマトなら酔っ払ってる」

「酔っ払ってるううy?」

「ああ、ヤマトがオレに付き合うつって、ノンアル頼んだら、出てきたのがアルコール入りのやつだったみたいでさ」


 そんなことあるんだ。ヤマトもどうして飲もうとしたのだろうか。行方不明にもなるし迷惑だ。店の人も年齢確認しなかったのかな。

 フォルテさんは相変わらずで、大ジョッキにお酒をタプタプにさせて飲んでいる。酔ってる様子はなかった。

 すると、フォルテさんは突然こんなことを言い出す。


「責任者! 日本酒テイストのあるか」

『ありますよ』

「んじゃ、2杯だけ持ってきてくれ!」

『かしこまりました』


 フォルテさんが苦手としている日本酒。それをなぜか注文した。酔っ払ったフォルテさんが見れる。

 少しして、案内所の責任者がおちょこと瓶の日本酒を持ってきた。フォルテさんは慣れた動きで注ぐと1杯目を一気に飲み干す。


「このゲームの日本酒も美味いな。けど瓶1本か……」

「フォルテさん大丈夫なんですか?」

「ん? あ、ああ、日本酒のことか。オレが酔うのは本物だけだ。ゲームはあくまでもテイスト。ま、ちょっとは影響受けるけどな」


 フォルテさんはやっぱり日本酒は無理なようだ。見れば彼は日本酒テイストのお酒を飲んでから身体を左右に揺すっている。


「んじゃ、オレがこれ飲み終わったらバトル行くか」

「よろしくお願いします……! フォルテ。メルも一緒に行こ」

「はいっ! お姉ちゃん!」

応援よろしくお願いします!!!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も良かったです!また楽しみにしています!
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