第44話 人の群れの中で
今回は微妙な終わり方です
それから、外の天候がよくなってることを見計らって俺たち7人は建物の外に出た。これからメルの外出許可を得るためにギルド案内所に戻る。
自分の本当の気持ちをはっきり言うことができたメルは、ものすごくすっきりした表情をしていた。今もアリスとずっと一緒にいられることにわくわくしているようだ。
ただ、メルを案内所という場所で生活させていた責任者が許すだろうか? 許さなかった場合、メルはどのような反応を見せるだろうか?
だけど、それはまだ考えない方がいい。その方が気が楽だ。
「メル、これでいつまでも一緒ですね」
「うん! アタシ足引っ張らないように頑張るから」
「君たちまだ決まったわけじゃないよ。責任者の説得は僕がするから」
「ケイさん。ありがとうございます」
ケイはいつも穏やかでさわやかで、『頼りにしてくれ』と言わなくても頼りたくなる。まあ、今回は相手が子供だったから、『説得します』といったのだろうけど。
街には外に出始めるエルフやオーク、そしてゴブリンにガーゴイルまでが顔を出し、雨上がりの賑わいになっていた。
一人は缶コーヒーみたいなアイテムを持ち。一人は傘を畳もうとしている人。水浸しになって落ち葉で詰まった水路を掃除する人。
まるで現実世界と全く変わらないそれどころか、高崎祭りでもしているかのような人出に少し歩きづらい。
途中メルとアリスを見失いそうになりながらも突き進む。歩きスマホならぬ歩きメニュー画面は危険かもだが、俺は目の前に表示させると、時刻は"10時20分"と書いてあった。
つまり、この街の建物はあと40分で移動する。それまでの間俺たちは人の群れに揉まれることになる。
きっと、動きだしたら住民は避難するだろう。でも、それよりも先にメルを正式メンバーにしておきたい。
「ヤマト。なんか懐かしいな」
「あの祭りのことですな。最近は屋台が増えてきたって言いますが。高校の部活で忙しくなってから行ってないですな」
「あのさぁ。できれば普通の口調で話してくれるかな?」
「むむ……」
ヤマトは俺の指摘に気に食わなさそうな顔をする。もしかしたら、これまでずっとこのキャラでやっていて癖になってるのかもしれない。
そうだったらこれ以上言うのはやめておこう。と思っていたら、今度は完全にアリスとメルを見失ってしまった。
加えて、ケイたちもいない。俺とヤマトだけが取り残されてしまったようだ。
俺はマップを拡大表示させる。星型の街はマップピンだらけになっていて、個人差はあるだろうが少し見づらい。
あのあとメルからさらに街のことを教わっていたが、情報量の多さにケイ任せにしていた。俺は素直じゃないなと思いつつも、歩いていくといつの間にか案内所を通り過ぎていたことに気づく。
しかし、人の流れから今は一方通行。引き返せそうにない。
(いやまて)
「ヤマト、ちょっといいか?」
「カケルどうされましたか?」
「一度持ち上げられるか確かめてみる」
アバターの体型上俺よりもヤマトの方が重いだろう。でも持ち上げられればこっちのもんだ。ここから華麗に跳躍して案内所前に着地する。ただそれだけのこと。
俺はヤマトの両脇に腕を入れると、上に持ち上げる動作を出力させる。なんとか浮かせることに成功させると、そのまま高く跳びあがる。真下には人の海。こういうことをするのはこれが二回目だ。
だんだん地面が近づいてくる。NPCを踏みつぶしてしまいそうな恐怖を感じながら、着地する態勢に入った。
「カケル。この状況は一体どういうことですかな?」
「説明は着地してからにして」
「承知しました」
俺は空中蹴りで着地地点を調整してできるだけ滞空していられる時間を延ばす。前回はこれをしなかったせいで、落下しロゼッタヴィレッジの幹部に捕まってしまった。
だから、今回はそれに注意して、人の大群が割れて安全に降りられる位置を探る。だけど、流れ続ける人たちは、いつしか押し合いっこになっていた。
これはかなり難しい状況。だんだん疲れてきた俺は、真下を強く蹴り案内所の建物の上に避難した。
ここで一旦待機する。そのうちケイたちも出てくるだろう。すると、誰かが通信魔法で繋げてきた。
「カケル。今どこ?」
「ケイこそ案内所の中か?」
「うん。そうだよ」
「よかった。今俺はヤマトと一緒に案内所の屋上にいる」
「了解。メルに頼んでおくから中から降りてきて」
「わかった」
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