第41話 集合
カウンターに立つメル。なんかこれも雰囲気が違う。いつの間にか服装も変わっていた。見た目はあまり差はないが、オーバーオールではなく、下にしっかりとしたズボンを着てエプロン姿になっている。
「では、手続きを始めますね。まずはこちらの入力欄にギルド名と団長の名前を書いてください」
「一つ質問です。副団長が書く場合は……」
「団長名記入欄に代理と入れて書いてください。代理という名前は副団長にしか使えない仕様になっていますので「ありがとうメル」
「いえいえ。これでもまだまだですよ」
そんなことを言うメル。まだまだということは修行中の身ということか。でも、伝えないといけないことをしっかり言ってくれるし。そこまで下に見なくてもいい気がするけど。
そういうのは置いといて、俺はギルド拠点契約書と呼ばれる書類にギルドメンバーの名前を含め、スター内の
拠点を全確保しておく。メルにはこの理由をしっかりと説明した。
俺たちはロゼッタヴィレッジのようなことはしない。むしろ、ロゼッタヴィレッジ以外のギルドにだけ貸す予定だ。
そうすれば、ロゼッタヴィレッジの活動拠点がかなり減って、勢力拡大を抑えることができる。後は、彼女らの幹部を少しでも削って、アンデスのギルド案内所内フロアで縮こまった人たちを安全に移動できるようにしなくてはならない。
これが一番の救済だと思ってる俺だがまだ慣れてないことが多い。そもそも、ケイ自身がギルドがどういう団体なのか曖昧な状況だ。
きっと先代が指名して任命したからだろうけど、こんな不完全なギルドになってしまった――予想だが――のは、新規で入った俺もなんか理解しがたい。
「ここの街のギルド拠点対応施設を全て管理するのですね。了解しました。ロゼッタヴィレッジが来たら上司に頼んで対応してもらいますね」
「助かるよ。ところで、なんでメルはアリスとスターに残りたいんだ?」
「そ、それは……」
メルが冷や汗でもかいているような表情をする。やっぱり思い出不足なのだろうか? 経緯は違えど俺と少し重なる部分がある。
まだメルの方がマシだ。俺にはもう弟がいないのだから。だから、俺も会わせてあげたい気持ちはある。
「その……アタシとアリスは姉妹ですけど、まだ一度も会ったことがないんです」
「それはどうして」
「アタシが生まれたときに強制的にスターに連れてこられて。姉がいることを知らずに育ってきました。だから、会いたいんです。会えなくてもいたという証さえ見せてくれれば」
「なら少し待ってもらいたい」
「え?」
メルのおかげでフォルテさんたちがいる店の場所は把握済み。だからいつでも連れてこれる。
まだメルの方がマシだ。アリスは俺たちのギルドで面倒を見ている。会わせたい気持ちはもちろんある。
そんな中カウンターの通路に置かれている関係が揺れた時だった。
「カケルやっと見つけた。ほんとこの街はわかりづらいね」
「それにしても早かったなケイ」
「そうでもないよ。カケルが詳細のマップを作ってくれなかったら、僕はここにはたどり着けなかった」
「えーと、カケルさんこの人たちは?」
無事ギルド案内所に集まったメンバー――フォルテさんとアリスは不在だが――におどおどするメル。この状況にケイが詳しく説明すると彼女は納得した表情を見せる。
「そういえばフォルテとアリスは?」
「そうだった。フォルテさんにメール送ったから大丈夫。そのうち来ると思う」
「ならよかった。でも、まさかアリスに妹がいたなんてね。メルだっけ?」
「何ですか? ケイさん」
「呼んだだけだよ」
「そうですか。失礼しました」
メルにもメルなりの可愛さがある。名前を呼ぶとすぐにリアクションしてくれるところや、アリスよりも大人びているところ。受付嬢としての一面もある。
それを踏まえると、褒めることができることも豊富だ。
俺は空を見上げる、ゲーム世界の空は粉塵のようなものは飛んでおらず、とても見晴らしのいい真っ青に澄んだ空が広がっていた。
障害物もほとんどない。いやほぼない。現実世界も電柱を地面に埋め込む作業が進んでいるが、まだここまで見やすいところまではいっていなかった。
俺の高校周辺も住宅がたくさん建っているが、やっぱり電柱が景観を悪くしているように感じている。
すると、後ろから誰かの話し声が聞こえてきた。
「ここがギルド案内所かー。待たせてすまなかった」
「大丈夫。僕たちもついさっき着いたばかりだから。フォルテ。アリスもいるよね?」
「もちろん連れてきたから安心してくれ。
「よかった」
そう安堵を漏らすケイ。とても仲間想いのところに好感度が上がる。アリスはというと、フォルテさんにおんぶされていた。
「でもカケルほんと助かった。あんな明細書みたいに細かいマップは初めて見たぜ」
「それもメルのおかげですよ、フォルテさん」
「たしか、アリスの妹だったな」
そう言ってフォルテさんがアリスを降ろすと、彼女はメルの方へ駆けていった。
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