第34話 ロゼッタヴィレッジの判断①
俺はこれから話すことを整理する。ロゼッタヴィレッジがスターに行かない理由をみんなあに伝えるために。
「ロゼッタヴィレッジがスターを経由せずに第4の街に行く理由は、やっぱり場所がすぐにわからないからだと思います。通行許可証機能があるから、このゲームは街を順々に歩いて、冒険するというもの。これで合ってますよね? ケイ」
「合ってるよ。だけど、それではロゼッタは第4の街には入れない。いったいなにが目的なのかな?」
(え? これ俺にリーダー任されてる?)
「気にしなくていいよ。僕の方でも考えてみる」
「わかった、お願いします」
「ふむふむ……」
「フォルテさん?」
俺はわかる範囲のことをすべて話した。ロゼッタヴィレッジは街の場所が不確定のスターを目指すのをやめた。
代わりに常時同じ場所にある――確定では無いが――第4の街を目標とした。もしかしたら、第4の街からスターまでの道のりは同じなのかもしれないからだ。
だけど、街に入れないことは確定している。その分こっちには余裕ができたので、ある意味では好都合。そんな中で、フォルテさんの反応が気になった。
「けどさ、どうやってスターの場所を特定するんだ?」
「うっ……」
そこを突いてくるのかフォルテさん。俺はさらに考える。きっと、街を動かすための動力源があるはずだから。そして、どこかに移動した痕跡があるはず。
眠気と戦いながら、俺は考える。やっぱりアリスの手中は気持ちがいい。睡魔と思考の狭間を行ったり来たり。
それ以上に謎が多いのは、今のフォルテさんの姿だった。電光石火のごとく駆け抜ける。セミ軍団の所へ行った時よりも遥かに速い。
これができるなら最初からすればいいのにと思ってしまう。しかし、これには時間がかかるようで、少し前に俺でチェックするところから始まるようだ。
彼でも紋章を調節できないということは、ケイの親はかなり安定しているということになる。どうやってそんなことができるのだろうか?
いやまて、今はそんなことを考えてる暇はない。俺が今考えないといけないのはスターへ行く手段だ。すると、突然俺を支える手が消えた。
「カケル。あそこ地面がデコボコしてるよ」
「え。え?」
見えない。俺には目線が低すぎて見えない。それを悟ったアリスが俺を持ち上げて高い位置に移動させる。そこでやっと目視することができた。
たしかに、地面には突起した地面が広がっていた。フォルテさんにそのことを伝えると、突起物のもとへと接近する。
だんだんと距離が縮まりはっきり見えるようになると、その突起物がある幅が40キロ以上あることに気が付いた。
「通常モグラだと数センチくらいの盛り上がりができる。でも、こんな盛り上がりは初めてだ」
「フォルテさんモグラ知ってるんだ……」
「知ってるさ。けど、この規模は見たことがない」
「ねぇねぇ。カケル、フォルテ」
俺とフォルテさんの会話にアリスが割り込む。
「これって街が動いた跡だとわたしは思うんだけど……!」
「「街が動いた跡!?」」
12歳の思考はかなり斬新だ。大人になっていけばいくほど当たり前しか見えなくなる。アリスはこれが"街が動いた跡"と言った。動く街と言えばスターしかない。
「フォルテさん。この跡が消える前に辿ってもらえますか?」
「おうよ。任せとけ!」
フォルテさんは非常に頼れる。俺のことやヤマト。アリスを快く受け入れてくれなかったバレンさんとは大違いだ。
俺は少し仮眠をとることにした。さすがに眠気だらけの脳ではしっかりした判断ができない。
それからは数分ほどで眠りについた。その最中今日までに起こった出来事が次々とフラッシュバックして、なんておかしな状況下に置かれているのだろうと思った。
こんなにもファンタジーな世界があるはずがない。それどころか、俺の目の前で不可思議なことが起こりすぎだ。
まず、結人さんの魔法。どんな原理なのかは教えてもらわなかったが、それでもすごかった。ワープゲートをくぐったら別世界が広がっていた。
あんな広い空間どのようにして作ったのだろうか? そもそもケイの家の宿主の収入が知りたい。今考えればあの敷地は万博会場と同じくらいはあるだろう。
そうなると月に5000万。最大で月額が億単位以上の光熱費と土地代を支払ってるのかもしれない。そんな豪邸は日本にあっていいのだろうか?
もしかしたら、あの土地だけ別世界だとか。でも、周辺は普通の住宅街だったし。敷地内にも巨大な建物を中心に別世帯らしき家があった。
土地を貸しているのだろうか? 共同生活区のようなイメージもあって、そこにどれだけ資金を費やしてきたのかがよくわかる。
だけど、今日本はそこまでお金がないはず。今ではゲーム事業の競争が激しくなっていて、日本製のソフトよりも海外製のソフトの売れ行きが良くなっている。
日本のゲームはかなり人気が高かったが、マンネリ化も進んできていた。その分日本のレトロな世界観に感銘を受けた海外運営が勢力を増してきている状況。
大半が日本のアルファセントリア経由だけど、たしかに俺が持ってるゲームは海外産が多い。
AIにより言語の壁も完全に崩れたのも理由の一つだろう。俺のお母さん世代の頃と比べて翻訳も会話文として成立するほど。
学習速度もリアルタイムで、単語を入力すればすぐに理解・反映してくれる。もうすでに運営要らずの独立体になっていた。
それだからだろうか? アリスもすぐに理解してくれて、しかもさっきは俺に目の前で起こってることの情報提供まで。
話が大きく逸れたので戻すと、ケイの家族は日本の政府よりもお金持ちかもしれないという可能性だ。それができる理由はきっと……。
(うぅ……。思考が先行してゆっくり休めない……。それよりも明日学校あったっけ?)
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