第24話 紋章の噂
前半 坂東目線 後半 翔斗目線
◇◇◇◇◇◇
『ねぇねぇ。知ってる?』
『何?』
『ビースト・オンラインってゲームで、変な模様を手の甲につけたプレイヤーがいるんだって』
『変な模様?』
『うん。坂東先輩が言ってた』
『私もその人に会ってみたい』
(作戦は上々ね……。これならギルド狩りも楽しくなる)
大和大樹を利用した紋章の噂拡散作戦は失敗した。そこであたしは作戦を変更し、全教室分のビースト新聞を作成。各クラスに飾ってもらった。
そのおかげか、アーサーラウンダーの頭領ケイの情報を、たくさん広めることができた。
こうすれば、アーサーラウンダーの価値は上がるが、あたしのギルド"ロゼッタヴィレッジ"のメンバーも増やせる。
ゲーム恐怖症の人を増やして、かの異次元女性プロゲーマーが築いてきた世界を壊す。あたしはゲームが好きでやってる訳ではない。
本当のことを言えばゲームは嫌いだ。だから、この世界からゲームを消す。いつかの誰かさんが達成できなかったという、それを成功させる。
今、そのプロゲーマーはこの世界にはいないらしい。噂によれば、年間10万タイトルを遊ぶ人との事。
少し前に引退したようだけど、彼女の処理能力は誰も真似できないと、樋上中央病院という東京にある病院の研究者が論文で話していた。
それは、大手ゲーム会社アルファセントリアの初代取締役社長・寺山悟が手掛けた、スーパーコンピュータを負かすほどだったという。
しかし、あたしのような通常の人間の脳内処理能力では不可能。絶対ありえないことだと思っていた。たしかに人の脳は一日に何万もの些細な思考を繰り返している。
だけど、それをゲーム一つに絞るのはゲームを仕事としている。かつ、かなりのゲーム厨でないとできない。
けれども、彼女は趣味程度で遊んでたそうで、1ゲームのクリアタイムはタイムアタックで出禁になるほど早いらしい。
『坂東先輩!! 例の変な模様をつけたプレイヤーの名前ってなんて名前なんですか?』
「ケイだったはずよ。ただ気をつけた方がいいわ。あの強さはキチガイすぎるもの」
『ありがとうございますっ! 後でビースト・オンライン買います!』
(これで大丈夫。さて、プレイヤー狩りの始まりよ……)
◇◇◇◇◇◇
「翔斗。なんか学校内ざわついてないか?」
「そうだな……。ん?」
俺は教室に入った時違和感を感じた。教室の壁に、見た事のない張り紙が貼ってある。そこには、"ビースト・オンラインに、謎の模様をつけた人物現る"と書かれていた。
そして、ケイが昨日ヤサイダーに向けて言った言葉の一部始終まで掲載されている。
「これ、団長のことだよな」
「ああ。一体誰がこんなことを……。きっと作成者の名前が書かれているはず」
俺と大樹は張り紙をしっかり読む。そこには、坂東美玲先輩の名前が。ヤサイダー=坂東美玲は大当たりだったようだ。
だけど、これは大事件だ。一ノ瀬先輩はゲーム内のアリスのことをスッキリさっぱり忘れてたので良いとして、坂東先輩はまだアリスを狙っている。
「大樹。パソコンはノーパソか?」
「ノーパソだが……」
「んじゃ、それぞれでダイブギアとノーパソを持って行こう」
「団長の家でログインするってことか。わかった、乗ってやる」
「頼む。顧問の先生には俺から部活休むってこと伝えとくから」
「助かるよ、翔斗」
「まあな」
俺は顧問の先生のところへ行く。顧問の齋藤先生は、過去にオリンピックに出たことがあり、引退後俺の学校の教師になった。
男女問わず厳しく優しい先生で、下級の入部率を押し上げる火付け役の一人。それもあってか、陸上部の生徒は60人から80人はいる。
職員室に着くと、扉をコンコンと2回ノックして開く。
「2年12組の飛鳥翔斗です。齋藤先生はいらっしゃいますか?」
「はい。いますよ」
「ありがとうございます」
俺は職員室の中に入って齋藤先生を探す。齋藤先生は最中陸上部部員のレポートを書いてたところだった。
「齋藤先生。今大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですが……」
「今日大和大樹と俺は部活休んでもいいでしょうか?」
「いいですが……。なにか理由はありますか?」
「それは……」
どう説明しようか悩む。俺と大樹はゲームで休むことになってる。だが、それは正当な理由にはならない。
俺は考える。できるだけ最もらしいことを。しかし、齋藤先生は直感がすごいせいで……。
「もしかして、ゲーム内の友達間になにかあったんですか?」
と言ってきた。
「はい」
そう答えるしかない俺。
「かなり表情に強ばりと緊張が見えますね。わかりました。仲間を大事することはとても必要なことです。ですが、ライバルも必ずいます。飛鳥さんと大和さんのように。友達以上の仲間を大切にしてあげてください」
「ありがとうございます。齋藤先生」
(よし。大樹に報告だ……)
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