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第17話 一方その頃

 ◇◇◇◇◇◇


 ――リスポーンまで、5、4、3、2、1……。


「うぅ……。ここは……」

「番長!!」


 あたしのギルドメンバーが声をかけてくる。どうしてこんな場所に? そう、あのアーサーラウンダーというギルドのギルマスに一発でやられた。

 あの右手の甲に描かれた紋章。彼は目も音もわからない状態だと言っていたが、あたしの問いかけへの解答に食い違いなどなかった。

 彼はどのようにして、あたしの言葉を理解したのか? そして、盲目の状態でなぜあたしの居場所を特定し、ダメージを与えて来たのだろうか?

 その理論すらわからないまま。あたしはアンデスにあるギルドホームの外に出る。空は暗色に包まれていて、眩いほどに照らしつけてくる月がまるで敗者を嘲笑ってるように見えた。

 こうなるはずがない。あたしは今までんい40ギルドほどギッタンギッタンに壊してきた、無敗のギルドブレイカーだ。

 あんな弱そうな狼のギルマスに負けるはずがない。負けるなんてありえない。そう、あれは夢だ。あたしは夢を見ているんだ。

 メニュー画面を見る。ゲームコインが減ってなければ、あたしの思考が有力になる。しかし、ゲーム内コインを見ると、アニマコイン(ビーストの通貨)が5000ほど減っていた。

 あたしは彼に負けて通貨をロストしたようだ。信じたくない。信じたくない現実が、何度もフラッシュバックする。


「あの紋章さえ……。紋章さえどうにかできれば……」

「番長。その点問題ございません」

「ん? それはどういうことかしら?」

「偵察犯として、ヤマトさんを向かわせました」

「ヤマト……。大和大樹のこと?」

「左様です」


 大和大樹。あたしが通ってる高校の2年生。本名に『大』が二文字あることから『ダイダイ』という愛称で呼ばれていて、陸上では最優秀生としても候補に挙がっている、体育会系男子。

 近々スカウトが来るんじゃないかとも言われていて、本人もその自覚はあるらしい。ところで、なぜ彼を起用したのか?

 その辺がさっぱりだ。


「起用した理由ですか。ヤマトさん。彼がサブで入れてる部活をご存知ですか?」

「サブで入れてる部活?」

「はい。彼は陸上の他に文芸部にも入っています。そこで、わたくしたちは考えました。彼があの紋章のことを見れば、文芸部の本に情報が書かれ、多くの在校生がアーサーラウンダーのギルマスを狙うのではないかと」


 そうか、そういうことね……。


「そのまま続行するわよ。ちなみにヤマトはギルドには?」

「無所属でございます」

「そうね。明日あたしたちのギルドにスカウトするわよ」



 ◇◇◇その頃カケルたちは◇◇◇



「これが巨大カブトムシ……」

「大きいよ。すっごーく大きい……」

「ちょ。アリス!?」


 俺は興奮するアリスを両手で抑え込む。彼がここまで興味を示すのは、巣蜜を集めた時くらい。敵がプレイヤーではないことも挙げられるだろう。


「みんな、戦闘態勢!!」

「「はい!!」」


 ヤマトさんが大剣を取りだす。俺はボクシンググローブを装備する。アリスが魔法を唱える準備をする。

 なのに、号令をしたケイが戦う準備をしない。どうして、戦闘態勢と言っておいて、戦闘態勢にならないのか?

 すると、ケイは右手の甲を見せて口をパクパクさせた。どうやら紋章の力で疲労が溜まっているようだ。


「僕は後方支援をするよ。指示を出すからみんなはその通りに動いて!!」

「「オーケー!!」」

「まずは。ヤマトさん。右前脚に重点的ダメージを与えて!!」

「おうよ!!」


 ヤマトさんが大剣をカブトムシの右前脚に叩きつける。しかし、装甲は硬く弾かれた。俺はケイから羽根を壊してくれと頼まれたので、跳躍を活かして、カブトムシの上空へ。

 ダイブパンチで強打をたたき出すが、ミシリと言っただけで傷すらつかない。どこまで硬いんだよこいつ。


「アリス。ファイアボールを連投して、虫は基本火に弱い。寄っては来るけど一部の虫しか生き残れないから」

「わかった!!」


 アリスが火の玉を大量生産してジリジリとカブトムシを焼いていく。でも、これもあまり効果がないようで、ケイは頭を抱えていた。


「ここやっぱり僕が……」

「ケイ?」

「いやなんでもないよ。でも、やっぱり僕が本気を出さないと勝てないのかな? って」

「そうかもしれないな……」


 もう既にヤマトにもバレている。今のケイの瞳は青。でも、ヤマトにつっかかって来た時のケイは白だった。

 これでは隠しようがない。しかし、ケイが紋章を頼る理由も知りたい。きっと何かがあるはずだから。


「ケイ。俺も試したいことがある。ラストの1回なんだろ? 紋章を使ってくれ」

「僕がどうなってもいいの?」

「もちろんだ。なんかあったら俺が助けてやる」

「ありがとう。君リーダーの素質あると思う」

「そうか?」

「うん」


 そうして、ケイがゆっくりと目を閉じる。次に開いた時には、瞳は純白に染まっていた。


「俺がケイに合わせるから、本気で頼む!!」

「了解!!」

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