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第15話 襲いかかるライオン

 俺たちがアンデスに向かう道中。アリスの要望で、魔物狩りをすることになった。場所は、アンデスとプルーンを挟んである平原。

 特に名前はないらしい。どうやらこの平原は魔物が多く出てくるみたいで、アリスにとっては訓練場的なものらしい。


「カケル。追いかけっこする?」

「アリス……」

「嫌なの?」

「いや、別に嫌じゃないけど、俺キラービーくらいしか戦ってないぞ?」

「それでも、プレイヤーと戦おうとしてたでしょ。足が震えてたの見えたんだから」


 それははずいです。でも、ここなら戦闘能力を上げることは楽かもしれない。俺とアリスで手を組んで、平原を歩き回ることにした。

 思った以上に広くて、ところどころに針葉樹や広葉樹オブジェクトが配置されている。だけど、目当ての魔物がいない。

 とにかく探す。端から端まで探す。すると、一人のプレイヤーを見つけた。それは、ライオンの姿をしたアバターだった。

 ゲーム内効果として再現されている風の流れに鬣がユラユラ揺れている。とても勇ましそうでかっこいい。

 俺も、しくじってなければこんなアバターにしたかった。でも、再選択は不可能。俺は、最後まで兎アバターを使わなければいけない。

 と思ってる間にアリスがそのプレイヤーに話しかけていた。


「ここの魔物はもういない感じですか?」

「うむ……」

「どこに行けば魔物に会えますか?」

「それよりも、そなたこそ魔物ではないか?」

「そうですけど」


 あっさり認めてる……。どこまでアリスは素直なんだ。俺怖さ半分嬉しさ半分なんだけど……。


「そこにいる兎はこの魔物の連れか?」

「はい」

「どうやらギルドには加入済みのようだ」

「では、どこのギルドか分かりますか?」

「さあ、そなたから教えて貰いたい」


 この状況。俺がアーサーラウンダーに所属していることを伝えてもいいのだろうか? この辺のルールをしっかり確認してなかったため、どう反応すればいいのかわからない。

 でも、俺と違って迷いのないAIの彼女は、戸惑うことなく、ギルドの名称を明かしてしまう。その発言にライオンプレイヤーは目をひん剥いてこう言った。


「そなたたち、アーサーラウンダーなのか。そりゃ散々だな。あそこのギルドに入った者は周囲との能力差に負けて脱退する人が多いと聞く」

「そうなんですか?」

「でも、アーサーのみんなは優しいです。わたしに辞める気などありません」

「だな。アリス」


 どうやら俺とアリスの考えは一緒らしい。だけど、プレイヤーは俺とアリスの解答に納得がいかないらしく、両爪をギラリと光らせて、襲いかかろうとしてきた。

 プレイヤーとタイマンするのはこれが2回目。アーサーラウンダーのみんなはこのような状況にも慣れているのだろう。

 アリスが俺の後ろに隠れる。そして支援の準備をした。こうなったら俺もやるしか無い。ボクシンググローブを装備して、力強く地面を蹴った。


「ふむ。それしか装備できないのは知ってはいたが……」

「こちとら、かなり急いでいるんでね!!」


 俺は、勢い良くストレートを繰り出す。しかし、やはりゲーム内でのバランスが難しくて、ライオンの鬣を掠めるだけで終わった。

 これで焦ってはダメだ。冷静になれ俺。だが、自覚してしまうくらいに、俺の拳が不完全でぐにゃりと曲がった技になる。

 狙いが定まってない。焦点が合わない。どうすればいいのかわからない。このままでは負ける。アーサーラウンダーに泥を塗ってしまう。

 それだけは嫌だ。そう思っている時、遙か遠くから草むらを駆けてくる音がした。アリスが詠唱をやめて後ろを見る。


「カケル!! リーダーが!!」

「ケイ!?」


 俺も思わず驚いて振り返ると、白目状態――紋章を発動させた状態で暴走列車のように爆走しているケイがいた。

 どっかの巨人みたいで怖いけど、非常に怒ってるらしい。そりゃそうだ。この状況はリーダーが怒るに決まってる。

 俺とアリスは道をあける。すると、ライオンプレイヤーが立ってる位置のすぐ手前で止まった。攻撃する気はそもそもないようだ。


「君。僕の仲間に手を出そうとしてたよね?」

「そなたは誰だ?」

「ギルドアーサーラウンダー5代目団長、コードネーム全盲のケイだ。僕の仲間に手を出したら一撃で仕留めるから覚悟しておくんだね」

「やれやれ。全盲が来たんじゃ、俺様はどうしようもできないね……。俺様はヤマト。名乗らずに攻撃しようとして申し訳なかった」


 やっぱりケイはかっこいい。ライオンアバターより体格差はあるが、それでも発言がカッコよすぎる。

 ここまでイキられると、実力含めなにもできないだろう。彼のそう言い切れる源が知りたくなる。

 その後俺たちはヤマトさんをパーティメンバーに加え、魔物探しの続きをすることになった。しかし、どこにもいないのは変わらず魔物の痕跡すら見つからない。

 すると、ヤマトさんがポツリと小言を漏らした。


「そういや。ここを少し行ったところに、巨大カブトムシの根城があると聞いた。興味あるなら一緒について行くがどうだ?」

「巨大カブトムシ?」

「そうだ。どれくらい大きいかは大まかしかないが、東京タワーの展望デッキ程の大きさがあるとの噂が立ってるおる」


 これは有力情報だ。俺たちはその場所をめざすことにした。

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