第20話 突然の呼び出し
学校からの帰り道。俺は自分のスマホで解離性障害の情報を調べていた。だけど、その中の内容には生まれつきのものは存在しないと書かれていた。
澪が嘘を言った? しかし澪は決して嘘をつくような人ではない。俺はさらに調べる
だんだんと理解していくうちに、タクがどんな
ストレスやショックを受けてきたのか? が気になってくる。
もう少しで自宅に到着する。制服のポケットには生徒会室のスペアキー。今度からこの鍵で部屋を管理する。
でもほんとにこれで良かったのだろうか? すると俺のスマホに一通のメールが届く。送り主は結人さんからだった。
"翔斗くんに紹介したい人がいるから今すぐ来て貰えるかな?"
「紹介したい人?」
俺は景斗さんの家に向かう魔法具で移動する。そこには結人さんに景斗さん。明理さんに亜蓮さんと、ものすごくほっそりとした見慣れない青年がいた。
だけど、その青年は顔を俯かせたままこっちを見ない。初対面にしてはオドオドしすぎだ。俺は音を立てて驚かせないようにゆっくり近づく。
距離を取って3メートルから4メートルほど離れた場所に立つと、軽く顔を覗いた。顔立ちに違和感はない。顔のコンプレックスというわけではないようだ。
ただ30秒見たところで彼はそっぽを向いた。
「咲魔くん。君が今度通う高校の先輩だよ」
「せ、せん……せせ……」
「ちょっと緊張してるみたいだね。無理はないよ」
「え、あ、そ、、その……。よ、よろ……。よろし……く。お、おね……がい……しま……す。ら、らいどう……さくま……です……」
「あ、あはは……」
非常に緊張しているのか、言葉が途切れ途切れだ。これではまともに話せる気がしない。この人が今度俺の学校に来るとなると、余計に緊張させてしまいそうだ。
「えーと。結人さん、さくまってどう書くんですか?」
「咲くに魔法の魔だよ」
「ってことは、坂東先輩が言ってた人ってことか……」
「坂東さんから聞いてたんだね」
苦笑する結人さん。それに明理さんが優しく微笑む。すると、咲魔の表情が強ばった顔からシャキッとした顔に変化した。深呼吸すると、俺の方に歩み寄ってくる。
「ごめんね」
「……!?」
声が違う……。さっきの震えるようなか細い声ではなく、ハキハキとした男性の声に変わっていた。
「キミが翔斗君で合ってる? 結人さんから聞いたよ」
「え、えーと……」
「あはは、まだ戸惑ってる。あと、ほんとさっきはごめん。咲魔は初対面の人だとああなっちゃうんだ。改めてボクはタク。正確には拓斗かな?」
タク改め拓斗は俺の肩を叩いてくる。力加減がちょうどいい。強くもなく弱くもなく。風に撫でられているような具合だ。
拓斗は少し下がるとにっかり笑う。そしてこう言った。
「咲魔はね……。人が怖いんだ。だからボクたちが代わりに雑談したりとかしてる。今回はキミが来てくれるって聞いたから。無理やり起こして表に出て貰ったけど……。ちょっと本人も納得できてないみたいだよ」
「拓斗さん。そんなこともわかるんですね……」
「うん。ボクは最古参だから、咲魔のことは全部知ってるつもりだよ。咲魔や海斗、未来が起きてる時はできるだけ監視してる。と言っても咲魔は普段からずっと寝てるけど……」
咲魔がずっと寝てる? ということは今日は……。なんか、拓斗さんがやばい行動をしている気がして、不安な気持ちが込み上げる。
無理やり起こしていたのだとすると、本人にとってえらい迷惑だ。俺も緊急地震速報とかで無理やり起こされるといい気がしない。
「じゃ。じゃあ、咲魔さんは……」
「あ、起こしたのはボクじゃないよ」
「え?」
「咲魔を起こしたのは海斗の方。ボクはそんな強引なことはしないよ。だけど、今日はもう咲魔は出てこないかな? 澪君の時は大丈夫なのになんでだろうね」
咲魔さん。もう澪と会話したんだ。だけど、なんで俺より澪なんだろう?
「澪君はキミの弟君だっけ? どうやら咲魔。澪君に親近感があるらしくて」
「そうなんだ。まあ澪は意識だけの存在だし。身体は仮のもの。俺もあれが本当に自分の弟なのか疑ってるくらいだしな」
「自分の弟を疑ってる? 自分の弟なのに何故?」
「あ、ああ。俺もあまり澪と話してなかったから、どこまで彼が知識を持ってるのかわからなかった。だけど、拓斗さんのような解離性同一性障害のことを知っていた。ただ……」
俺はここに来る前に抱いた疑問について思い出してみる。たしかに解離性同一性障害という障害は実在する。だけど、先天性は存在しない。
なのに、澪は先天性も存在するような解説をしていた。ここが一番の疑問だった。
「解離性同一性障害に生まれつきの人が存在するのか? その知識がどこから出てきたのかが疑問だった」
「生まれつきの?」
「はい。拓斗さん。いや。咲魔さんの障害は生まれた後に誕生したってことで間違いないですよね?」
「うんそうだよ。ボクが咲魔の中に生まれたのは記憶だと4歳の頃かな?」
「やっぱりそうだよな……」
その会話に結人さんが口を開く。どうやら心当たりがあるようで、
「その翔斗くんが言ってる解離性同一性障害者。もしかしたら、船岸楓さんのことかな?」
「船岸……楓……?」
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