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第19話 俺が生徒会長!?

 朝目が覚めて鏡を見ると、激しいくらいの寝癖がついていた。普段は使わない櫛で梳かし、できるだけ綺麗に見えるようにする。

 やっぱり夢で最悪な状況ある時は、寝苦しさを感じているのだろうか? 夢を見るというものが澪と会うということになった俺は、どうも呑み込むことができなかった。

 これで寝癖を作るのは2回目か? もうこれ以上作りたくない。身嗜みと整えるのがめんどくさい。

 俺はパジャマを脱いで綺麗に畳むと制服に着替えた。そしてリビングに向かい朝ごはんを食べる。相変わらず母さんたちはいない。もう仕事に行ったようだ。

 のんびりとしつつも忙しい朝はあっという間に終わる。高校用の大きなリュックを背負い、玄関の扉を開く。

 そこには登校を開始している同級生や下級生。上級生が歩いていた。もちろん小学生や中学生も歩いてるくらいの混み具合。

 家の鍵をかけると、学校に向けて歩き出す。今日は快晴。夢の中の豪雨とは正反対だ。地面も雪に覆われていて、道全体が純白に染まっている。


『ねぇ聞いた? 坂東さんと一ノ瀬さんのこと』

『うん知ってる。たしか2年の大和さんと飛鳥さんもだよね』

『そうそう。その4人。坂東さんが校長に直談判して高校1年からやり直すらしいよ』 

「は?」


 偶然入ってきた情報。半ば無理やり聞かされた感じだったが、目の前を横切る女子高生の発言に耳を疑った。

 俺が高校1年からやり直す? せっかく進級できてあと1年というのに、またやり直し? そんなのありえない。これはただの噂で戯言だと考え頭の片隅に置くことにした。

 しかし、それ以上に衝撃だったこと。


『あと、今の生徒会長降板だって』

『そうなの?』

『うん。前生徒会長が新しく指名したらしいよ』

『今の生徒会長可哀想……。ところで新しい生徒会長は誰なの?』

『それがさ。今度1年からやり直すっていう飛鳥さんらしいよ。あのあまり目立たないタイプの人』


(俺が生徒会長!? そんなの無理)


 俺はこれも嘘だと首を横に振る。そして両手で頬を強く叩いた。痛みはある。これは本当に現実だ。

 それから、いつものように授業を受けた。しかし、今朝のやり取りが気になって集中できない。まともに内容を理解できないままお昼の時間になる。

 こうなったら本人に聞くしかない。そう思い3年の教室に向かった。そこには坂東先輩と一ノ瀬先輩が会話している最中だった。


「あの……。坂東先輩。今大丈夫ですか?」

「ええ、いいわよ……ちょっと待って頂戴」

「わかりました」


 俺は坂東先輩が出てくるまで、クラスラインを開き未読メッセージを確認する。そこでも、俺や大樹が1年からやり直すという話題で盛り上がっていた。

 どうやら、勉強熱心さのイメージがついたらしい。これは実際の俺とは真逆で、しっかり受け入れることができなかった。


「お待たせ。それで話って何かしら?」

「その……。俺と大樹。あと坂東先輩と一ノ瀬先輩が1年からやり直すって本当ですか?」

「なるほどね。噂を流す作戦は成功したみたいね」


 坂東先輩がニヤリと笑う。


「あれは事実よ。昨日校長の家と副校長の家に行って提案してきたわ」

「じゃ、じゃあ俺が生徒会長になるっていうのも?」

「もちろん。それを含めてに決まってるじゃない」


 なんてことをしてくれたんだ。今朝聞いた話は事実だったようだ。彼女の考えが読めない。きっと景斗さんや明理さんならもう既に悟ってるだろうけど、俺にはそんな能力がない。

 俺は一ノ瀬先輩を呼ぶ。するとすぐに来てくれた。


「一ノ瀬先輩。一ノ瀬先輩は1年生からやり直すことをどう思っているんだ?」

「仕方ないことかな? って感じ? お姉ちゃん最初私に相談してきたから」

「え?」

「お姉ちゃん。実は1人で決断するのに時間がかかるタイプで。あの一件が済んでから色々相談してくるんだよね」


 そうだったんだ。しかし、どうしてそんなことになったのかが一番の謎だ。俺は坂東先輩の方に向き直る。


「坂東先輩。きっとこの行動を起こしたのにはそれなりの理由があるんじゃないですか? 詳しく聞かせてください」

「わかった。あたしが行動起こした理由。それはタク……。いいえここは主人格の本名で言った方がいいわね……。雷道咲魔を護るためよ」

「雷道……咲魔……」

「他にも色々考えたのだけれど、納得できる方法がこれしかなかった。どう?」

「なるほどです……。だけど、俺生徒会長なんてできないですよ」


 俺は部活やクラブ活動のリーダーになったことがない。俺がいつも足を引っ張っていたくらいだ。しっかり仲間と活動しようと思ったのは、ビースト・オンラインにログインして以降。

 まだギルドの副団長という立場に慣れてない上、状況把握がものすごく苦手だ。


「やっぱり。俺にはできないです」

「ふーん。じゃ、これ見て」


 坂東先輩は制服の胸ポケットから2枚の紙を取り出すと、それを開いて俺に突きつけてくる。

 そこには承諾書と書かれていた。項目には俺たち4人の1年生からやり直す許可と、現生徒会長を降板させて、俺を生徒会長に任命する許可の内容。

 そしてそこにはたしかに校長先生と副校長先生の押印と学校の押印がされてあった。これで俺の逃げ道はもうない。


「わかりました……」

「それでいいわ。それにこれは飛鳥さんにしかできない仕事よ。せいぜい頑張るのね」

「はい……」


 その後俺は校長先生に呼び出され、生徒会室のスペアキーを受け取った。

応援よろしくお願いします!!!!


また前回16話にて掲載した歌詞のフルバージョンは、この作品内では掲載しません。

別作品として掲載しますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
生徒会長は辛いですね。頑張ってください。
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