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第16話 一日の終わりに

 ◇◇◇◇◇◇



「お兄ちゃん。こう?」

「うん。ちょっと大きめだけどいい感じかな?」


 鉄鉱石組が包丁と鍋を素早く作り、木材組も特急スピードでまな板と取り皿。箸を作成してくれたおかげで作業は捗っていた。

 無事に肉組も戻ってきて、今俺は肉を切っている。今日はイノシシ肉。つまりジビエだ。リアルで食べたいもの1位だが、最近野生の生き物が少なくなってきてるようで、狩猟制限がかなり厳格化している。

 リアルではもうジビエ料理を食べられないと言ってもいいレベルらしい。と、スマホのネットニュースでやっていた。


「ここをこう切って……」

「レイ。猫の手忘れてるぞ?」

「あ、そうだった。軽く指で押さえるようにして……」


 ――トントントン……。


「さっきより上手くなったかな?」

「うん。いい調子……」

「って、お兄ちゃん手元!」

「ッ!?」


 俺は動かしていた手を止める。よく見ると包丁が手の甲に当たるまであと数ミリで、しかも寸止めだった。

 兄としてやってはいけない悪い見本を見せてしまった。その後はお互い無言で作業に入る。

 どんどん山のようになっていく野菜と肉。ゲームなのに肉は本物の肉質に近い弾力のあるものだった。

 野菜もサクッサクッっと子気味のいい音を響かせていて、本当に本物の野菜を切ってるみたいだ。


「お兄ちゃん。人参切り終わったよ」

「おつかれ」

「レイくん。上手くなったっすね。俺も頑張らないと!」


 レイの頑張りにアレンさんが反応した。そして包丁を器用に一回転させると、作業を再開する。アレンさんはリアルでも料理をするそうで、全部同じ大きさに切り刻んでいく。

 たったの10分で大根6本分切り終えると、今度は皮むきを開始した。タイミングよく回転させて、薄くもなく厚くもなく途切れることなく、剥いていく。


「アレンさん。すごいですね……」

「そ、そうっすか? あはは、ちょっと照れるっすね……」

「そんな。もっと自信持っていいですよ。俺もまだ練習中で……。さすがに皮剥きまでできないです」

「ならコツ教えるっすよ?」

「え、いいんですか? ありがとうございます」


 俺はアレンさんの指導のもと、包丁での皮剥きのやり方を教わる。どうやら右の親指の動きが重要らしい。

 包丁の刃をを大根に差し込み切れ込みを作ると、今度は親指で上手く固定。大根を回すのと同時に、親指でゆっくり外側に引き寄せる。

 上手く連動させないと途中で途切れてしまい、最初はなかなか上手くいかなかった。

 けれども、アレンさんは教え方がとても丁寧で開始15分程でコツを掴むことができた。さすが料理経験者は凄かった。

 アリアさんも皮剥きに挑戦。しかしこちらは俺以上に苦戦していた。そこもアレンさんが的確にフォロー。

 切った皮は捨てずに短冊切りにして、鍋の具材に追加した。


「これで、具材は揃ったっすね」

「そうですね」

「その……。悪かったらあれなんすけど……。呼び捨ていいっすか?」

「え? 呼び捨てですか? べ、別にいいですけど……」

「自分のことはアレンでいいっすよ。よろしくお願いしやす! カケル!」


(アレンさんも陽気だなぁ……)


 3龍傑はみんなこんな性格なのだろうか? 三人三様でとにかく明るい。ただまだルグアさんがどういう人なのかあまりよくわかってない。

 それでも、3龍傑はこの日本を救ってくれた人たちだ。きっとまだ本気を出してないに違いない。

 それに、3人が持つ武器を一度持ってみたいという気持ちもある。彼らがそれぞれの武器を持ったところを見たのは、GVさんの過去を見た時。最後の詠唱がとにかく印象的だった。


「その……アレンさん」

「だから、アレンでいいって。ハエトリグサ戦の時みたいに言って貰えばいいっすよ」

「は、はぁ……」


 あの時はバトルのことしか考えてなかった。気づいたらみんなの名前を呼び捨てにしていた。冷静になった時に少し立場を考えられてなかったと後悔した。

 だけど、彼がそこまで呼び捨てにして欲しいというのなら――しかし俺よりも歳上のように感じる。


「アレン。ちょっと変なこと聞いてもいいですか?」

「なんすか?」

「アレンは、今幾つなんですか?」

「今……。38っすかね……。もう年齢関係なくなってるんで、全く気にしてなかったっす」

「年齢関係ない?」


 それはどういうことなのだろうか。


「俺とルグア。GV。そしてGVの奥さんはもう年齢っていう概念がないんすよ。実際は全くないって訳じゃないんすけどね」

「そうなんですね……」


 もう既に人ならざぬ者。やはり3龍傑は異次元すぎる。そんなことを話して考えるうちに、メンバーが全員揃った。

 鍋奉行担当はGVさん。アリアさんはどこから用意してきたのかわからない魚の頭を鍋の中に入れる。野菜と肉も入れて水をひたひたにさせて。火にかけた。

 そして、ゆっくりふつふつと沸いてくる鍋の中。イノシシ肉はだんだん白くなっていく。火がしっかり通っていってるようだ。

 大根は半透明になって、GVさんが箸を刺すとスっと貫通した。レイも立ち上がって見ている。彼にとっては初めての鍋料理だ。

 そして、鍋で煮込んでから約25分。GVさんが先に肉を食べて味見すると。食べ始めの号令がかかった。


「「いただきます!」」


 みんなでそういうと、速攻で具材の取り合いが始まった。みんなスタミナ切れで空腹信号が出ていたのだろう。

 具材が一気に減っていく。特にバレンさんとフォルテさん、タクの3人はみんな食べたいものが同じようで。別のを取ればいいのに毎回タクが譲っていた。

 そのせいか。タクがほとんど食べることができていない。


「鍋。いくつありますか?」


 俺はGVさんに問いかける。すると、彼はニコッと笑って。


「それなら。僕が生成魔法で作るけど」

「ならお願いします!」

「オーケー。バレン、フォルテ。余った鉄ある?」

「あるぜ!」


 フォルテが鉄をオブジェクト化させる。それをGVさんが一瞬で加工した。一瞬強く光るとそこから大きな鍋が出来上がる。

 それを幸い魚の頭も――相変わらずなんの魚なのかわからない――もうひとつあったので、それでダシを取る。

 具材を全部入れ、バレンさんの高火力の炎でぐつぐつと。すぐ肉に火が通りタクをそちらに移動させる。

 その様子を見たレイもタクの方へ移動した。どうやら一緒に食べるらしい。こうなったら俺も行こう。


「みなさんありがとうございます。ゲーム内とはいえ、しっかりした食事をするのはものすごく久しぶりというか。初めてに近かったので」

「なんのなんの。やっぱりみんなと食べるのが1番だろ?」

「うんうん。せっかく用意してもらったんだし、たくさん食べてよ」

「ほんとありがとうございます」


 タクが何度も頭を下げる。もし肉質変化要素があるのなら、硬くなりやすいイノシシ肉は食べづらくなっている。

 だけど。食事にあるつけるという幸福が優先しているタクは、次から次へと口の中に食べ物を運んでいった。


「はいはーい!」

「ヤマト?」

「俺様からミラルミにリクエスト! 『ガンバレのサイン』を歌ってください!」


(宴かよ)


「「いいですよ!」」

「ありがとうございます!」

『ガンバレのサイン』(一番のみ)


作詞:八ッ坂千鶴


ガンバレのサイン 星形描いて

キラキラ銀河をこえてゆけ

未来への一歩 さあ踏み出して

みんなでレッツファイト


できないと嘆いてたって

全然前には進めないよ

ずっと踏みとどまっていれば

次のステージに上がれない


しょげこんだっていいんだよ

やれることだけでもいいんだよ

ぐずついたって うずうずちゃんでも

僕たちが応援団


ガンバレのサイン フレフレみんな

世界中笑顔になってゆけ

一歩踏み出せば 無限大

星々の数だけ 花が開くよ

ガンバレのサイン フレフレみんな

世界中未来を変えてゆけ

前へススメ 言の葉紡いで

みんなでレッツファイト


――――――


後日フルバージョンを掲載します!!!

応援よろしくお願いします!!!!!!



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― 新着の感想 ―
フルバージョン、楽しみにしています! この場合の歌詞については後書きで書いた方が良いのでしょうか?
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