第13話 まるで魔王は方向音痴
こうして、俺はひとりひとりに役割を与えていった。まだカイトとケイが帰って来ない。でもそんなことよりも食事が優先だ。
スタミナゲージを回復させて次のイベントに備える。このクエストを辞退すれば自動回復んい切り替わるのだろうけど、そんなことをしたらレイが悲しむ。
ちなみに、今回俺が当てはめた担当割り振りは以下の通りだ。
・まな板と箸作成担当:ヤマト、ルグアさん
・野菜切り担当:俺、レイ、アリス、アレンさん
・火起こし担当:アリアさん、ヤサイダー
・鍋作成担当:バレンさん、フォルテさん
以上。
まあ、本当は肉担当も用意しておきたかったが、さすがに人数が足りなかった。俺は通信魔法でケイに繋げてみる。
だけど、場所が遠すぎるのか上手く繋がらない。そんな時ルグアさんが俺の肩を叩く。ゲーム内でのルグアさんはリアルと違って身長が高い。
よくこの身長差を上手く使いこなせるなと内心考えていたが、彼女にとってはこれが普通なのだとか。
「じゃあ、それぞれ作業開……」
「お待たせーー」
「「???」」
再び後ろから声が聞こえてきた。振り返るとそこにはケイとカイトの姿。俺はこの2人を肉担当にすることにした。
それぞれ行動に入り、俺はまな板組の準備が完了するまで待った。時々ヤマトたちの方へと向かい、様子を確認。
ヤマトの剣とルグアさんの剣――どこから出てきたのかは知らないが、GVさんの記憶を辿っていた時に見た紅い剣が、どんどん木を切り倒していく。
細かい調整はルグアさんが。またどこから出てきたのか分からないカンナで、板状にした素材を綺麗にならしていく。
野菜切り担当4人分のまな板は約1時間で完了した。それを受け取った俺は、急いで小屋の方へと移動する。
そこにはもうすでに机の前で立つアリアさんとアレンさん。寝起きのレイがいた。そして、鉄関係組もちょうど包丁を完成させたタイミング。
今のところ上手くいっている。だけど、寝起きのレイ包丁を持たせる訳にはいかない。俺は、最初に見本を見せることにした。
ちゃんと野菜を左手で押さえて切る。ゲーム内ではこれだけの動作で可能になる。
「ぼくも切ればいいの?」
「もちろんだ。レイ、包丁使ったことないだろ? だから、今日はその練習だ」
「が、頑張る……」
◇◇◇◇◇◇
肉担当になった僕は、カイトと一緒に森の中を歩いていた。こんなところに動物はいるのだろうか?
迷いなく進むカイト。僕はその背中を追いかけるだけ。鹿アバターは基本歩く速度が早く、早歩きしないと追いつけない。
「カイト。もっとゆっくり……」
「肉が早く欲しいなら、急いだ方がマシだぜ? 生存競争とかあったらヤベェわ。ガハハハハッ!」
「笑ってる暇ないよ。どこにいるのか分からないんだよ?」
僕はマップを見ながらカイトに指示を出す。だけど、カイトはこちらに耳を貸してくれない。自分のことしか考えてない。
バレン以上の野生児だ。指示を出しても言う事聞かないなんて、なにがあってもおかしくない。
森はどんどん深くなっていく。一部は木製アイテム作成担当が伐採したようだけど、それでも草木が茂っていた。
暗い場所はあまり得意じゃない――とはいえ、フォルテのようなお酒で恐怖を払うことはしないが――僕は、冷たい風に少し恐怖を覚えた。
なのにカイトは汗ひとつかかずに、どんどん奥の方へと進んでいく。
「カイト! そっちは道外れるよ!」
「別にいいじゃないか。俺様の道は俺様が作る。俺様だけの道ってな! ハハハハハ!」
「だから笑って済むことじゃないんだって……」
「そんなことはない。道は作るものだ。作らずして得られるものはなにがある!」
ほんと言う事聞こうとしないんだから。こんな人がカケルの学校に入ったら何が起きるか分からない。ほんと何かあってもおかしくない。
「戻った方がいいよ。僕としてはそっちに野生動物の気配はしないから」
「気配がしないだと!? 俺様は何もかんじないぞ!」
「だから言った通りなんだって……。僕ならすぐに帰れるから」
「帰りたい? もしやこの暗がりに怖気付いたのか?」
カイトと長く話していたか、彼のこの口調には慣れた。だけど、このどこかの魔王のような口調は正直苦手だった。
どこか自分の地位を無理やり上げてるような、上目遣いの話し方。どうしたらこのような話し方になるのだろうか?
彼が喜怒哀楽の怒を司ると知った時。ひとつだけ思い当たることがあった。レイとカイトが戦ってた時だ。
僕は少し見逃してた部分があったけど、アリアさんが動画を撮ってくれていて、そのデータを送って貰っていた。
そこには、人格が切り替わる少しのラグもしっかり保存されていたけど、僕が発見したことはそこじゃない。
カイトんい切り替わった時の口調の差。あそこまで大声で叫ぶ人は初めて見た。僕も大声を出すけど、それ以上の声量だった。
だからなのだろう。僕は少し負けた気がした。つまり、それで彼に強く言えなくなっている? その可能性はあると思う。
「んんんんんんんんんん?」
「カイト、どうしたのかな?」
「ケイ。なんか動物の鳴き声が聞こえないか?」
カイトに言われて耳を傾ける。すると、遠くでガサゴソという音と、少し低い声が聞こえてきた。どうやら、鍋はジビエ鍋になりそうだ。
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魔王2099読むぞーーーーーー!!!!




