第11話 収穫バトルの結果と成果
それから数時間俺たちはそれぞれで作業を開始した。最初は覚束なかったレイの手も、少しずつ速くなってきたのがよくわかる。
生前一緒にこうして畑仕事が出来たらというのは、もう夢物語。そんなことはもうできない。今ここで、楽しんでもらうできる限りのことで満足してくれればそれでいい。
「お兄ちゃんこんな感じ?」
「うん。傷もないし。かなり上手くなったな」
「やったーーー。これくらいの力加減でいいんだね……。ぼくもっと遠くの方行ってもいい?」
「だな。そろそろ1人でもできそうな気がするし。あまり遠くに行くなよ?」
「ありがとう」
そう言ってレイはまだ手付かずの畑へと走って行った。でも、兎アバターの俺とレイが人参を採るのは、まるで人参を盗み食いしているように見えないか?
そんなことはどうでもいい。俺は、目の前の人参をしっかり掘り起こして、抜いて、ルグアさんが作った歪みの中に入れていく。
しかもこの歪みはGVさん同様無詠唱で作ったもので、常時展開してくれている。人数分用意された歪みは俺やアリアさん、レイの後をついてきて、しっかりと収穫した人参を受け取ってくれる。
だからだろうか。いつの間にかみんなノールックで放り投げていた。唯一投げ入れていないのはアリアさんくらいか?
俺は確実に同じ角度で抜き取っていく。一度試しにやってみたことといえば。真横にしたり、勢いよく抜き取ったりして、折れ演出があるかを確認した時。
確率上では10本中1本が折れた。つまり100本を乱暴抜くと10本損するということだ。だけど、人参よりも大根の方が強度が高いから、人参は圧倒的有利なのでは?
そう思ってる時に上空からゴングのような、耳を痛めそうになるほどの甲高い音が鳴った。収穫作業の終了の合図だ。
俺たちはルグアさんの作った移動用の歪みを通って分岐点まで移動する。だけど、やっぱりレイが入れなかったので、レイの移動経路として俺が歪みを作った。
『みんなよく頑張った。これで一定期間は持ちそうだ。ただ……』
セファンさんは何やら暗い表情をして俯いた。いったい何があったのだろうか? よく見るとセファンさんの視線はカイトんお方を向いていた。
カイトが何をしたのだろうか? 初めて会った時の第一印象は熱血漢ということ。勝負事が好きということ。これは同じく勝負事好きのバレンとフォルテの2人と気が合いそうな感じだ。
ケイはというと、少し息切れしているようは様子。それなりにキャベツは重かったらしい。そりゃそうだよな。キャベツはしっかり葉が詰まっていればいるほど重いし、スカスカであればあるほど軽い。
すると、セファンさんの口元が微かに動いた。
『カイトと言ったな。良くもやらかしてくれたもんだ。一瞬で畑が荒れ地と化してしまったではないか!!』
「ひゅえ!? 俺様のせい? あれただ抜けばいいんじゃなかったのか……」
『ただ抜けばいいものではない! このバカ小僧め!! あれはいずれ商品と鳴って街に出回るのだぞ? 貴様のせいで何本無駄になったことか……』
怒り心頭のセファンさん。どうやらカイトが大量に折ってしまったらしい。そりゃセファンさんが怒るわけだ。
だけど、俺がやった確率では10本中1本ペース。正しい角度で抜けば1本も折ることなくできる。レイでも10本中2本しか折らなかったのに、どうすれば、どういう抜き方をすればそこまで折れるのだろうか?
これでこのクエストは、ただ普通にやればいいだけのクエストではないということがわかった。ルグアさん。アレンさん。GVさんの3人がそれぞれ亜空間を開く。歪みのゲートを上空に設置すると、その中から大量の野菜が出てきた。
最初に止まったのは大根だった。その次に人参。最後に巨大な山を作ったのは、ゴロゴロとこぼれ落ちて山というより丘と化したキャベツだった。だけど、物量では人参が一番多く勝利したのは俺たちAチーム。
これにはレイも大喜びで、俺も彼に満足させられて心から安堵する。
「俺様が負けた……」
「そりゃそうよ。大根を台無しにした分収穫量が減っただけ」
「そうだよカイトくん。ぼくは今日初めて畑仕事したけど。物を大事にする大切さが学べたから、乱暴はいけないってことを覚えた方がいいんじゃないかな?」
「……」
ヤサイダーとレイのごもっともな意見にカイトが黙り込む。きっと裏で監視してるタクも苦笑していることだろう。
俺も2人の意見には賛成で、他のみんなも頷いている。カイトの味方は誰もいなくなった。だけど、この状況を絶対見捨てない人が約1名。それはケイだった。
「片翼様と冷酷様は大根畑で収穫と整地をお願いします。他のみんなは一旦休憩。セファンさんについて行って。ただカイトは僕と一緒にここに残って。話したいことがある」
「俺様になんの御用が? 大根畑でしか悪いことはしてないのだが……」
「それ以外の話。じゃあ行動開始!」
「「はい!!」」
そうしてみんな散らばっていった。俺は疲れ果てたレイを抱えて、セファンさんについていく。セーブポイントとなる宿泊施設はとても広く。近くには調理場を兼ねた小屋があった。
やっぱり野菜を大量消費できるのは鍋だろうか? レイは病気の関係で熱いものが食べられなかったが、今の彼なら食べることが可能だろう。
生前もみんなと熱いおでんを囲んでみんなでハフハフ冷ましながら食べたいと、夢を語っていた。このことを知ったのもつい最近だ。
家でも少し冷ました味気ないものばかりだったというのは俺も覚えている。俺の家族は味もかなり薄味なので、いつかはしっかり味の濃いはっきりと美味しいと言える料理を食べたいと思っていた。
そう考えるとやっぱり学校の給食は味がはっきりしていて美味しかった。病院食はやはり味気ないものばかりだったんだろうなと、レイが思い描く夢がそれなりに想像できる。
「お兄ちゃん。カイトくん大丈夫かな? ケイお兄ちゃんに怒られてなければいいんだけど……」
「きっと大丈夫だ。ケイはそうすぐに怒る人じゃない、誰でも平等に接する優しい人だ」
「そう? ならいいんだけど……。なんだろ……。もうお腹ペコペコだよ……」
「急に話題変わったな。たしかに俺もお腹が空いている。今日のゲーム内での料理は鍋にするか? 野菜の切り方を教えてやる」
「いいの? お兄ちゃんありがとう」
「まあ、俺もあんま料理得意じゃないんだけどな」
応援よろしくお願いします!!!!!!!!!
あと少しで前作リアゼノンのブクマ数を超えます!!!!!!(2025年1月現在)
残り30件!!!!!!!
そして、近日この作品で私が書いた作詞あ登場します!!!!
フルバージョンはまだ未完成ですが、1番は完成していますので、お楽しみに!!!!!!




