第3話 これまで起きたこと成功したこと諸々祝おうパーティ!
「翔斗くんおはよう!」
「結人さんおはようございます」
「あ、そうだ。澪も目を覚ましたよ。君に会うのが楽しみみたいだから。僕の部屋に行ってみて」
「わかりました」
俺は結人さんの言葉に従って広い庭を歩く。家の中に入って真っ先に向かったのは景斗さんの部屋。亜空間からパソコンとゲーム機を取り出し、ベッドの上に置いた。そして、景斗さんの部屋の鏡を借りて身だしなみを整える。
昨晩は夢の中で大嵐が巻き起こってリアルでもかなり寝苦しかったらしく、髪の毛があらぬ方向へと跳ねていた。寝ぐせをしっかり直して、結人さんの部屋に向かう。部屋の扉の前に立った時には中から鼻歌が聞こえていた。
「ふんふんふーん♪」
「澪。入るぞ!」
「あ! お兄ちゃん!」
今日の澪は昨日以上に上機嫌だった。俺は今回行われるパーティの趣旨がいまいちわかってないが、きっと澪も関係しているのだろう。全身タキシードを着てネクタイまでつけて、さらには顔に化粧までしていた。
この時代、男性の化粧も積極的に行われるようになっている。会社でも義務づけられるくらいだ。いずれは俺も化粧の仕方を勉強しないといけない。正直そういう物には興味がないが……。
「お兄ちゃん。結人お兄さんから今日のイベント聞いた?」
「いや」
「そう……。まあ、ぼくが考えた企画だからね。結人お兄さんから聞いたけど、今日メンバーがゲームに集まるの午後からだっけ?」
「ま、まあ……」
「あ、準備整ったみたい。結人お兄さんが呼んでる。来て!」
そう言って澪は歪みの中へと入っていった。この人形は実は魔法具のひとつで、結人さんが相棒の意識を移動させるために使ってるものと同じ原理らしい。作成方法や様々な設定などは企業秘密とのことで教えてくれなかった。
俺も紋章を発動させて歪みを作り中に入る。外に出るとそこにはこの敷地に住んでいるギルドメンバー全員が集合していた。なぜか坂東先輩と一ノ瀬先輩。大樹までいる。まるでハエトリグサ戦の打ち上げだ。
これからどんな催しものがあるのかが楽しみになった。最初にマイクを取ったのは、結人さん。マイクに嫌われたようで、キーンという甲高い音が響いた。気を取り直して音頭をとる。
「えー。では、今回は"これまで起きたこと成功したこと諸々祝おうパーティ"にお集まりいただきありがとうございます。本日このパーティの進行役を務めます。GVこと藁科結人です」
その言葉に会場全体が拍手に包まれる。天候は晴れ。少し肌寒いがそれでも日差しが程よい温かさをくれる。
「まず、この企画の発起人から自己紹介とパーティの趣旨説明をお願いしたいと思います。飛鳥澪さん。お願いします」
「はい!」
澪が小走りで走って結人さんの方へと向かう。そして、マイクを受け取ると大きく深呼吸をした。
「皆さん初めまして。飛鳥翔斗の弟の飛鳥澪です。改めて"これまで起きたこと成功したこと諸々祝おうパーティ"にお越しいただきありがとうございます。お兄さん自己紹介こんな感じでいいかな?」
「うん。問題ないよ。続けて」
「わかった。ではこのパーティの趣旨説明を始めます。今回この企画を行うきっかけになったのは、ぼくが現実世界での依り代を手に入れたあと、数日の調整を経て皆さんと同じように食事ができるようになったことです。先月は全体的にいろいろなことが起きました。まずはラミアさん。ファリナさん。1月のライブ公演お疲れ様です。まさか、このギルドにお2人のファンがいるとは思いませんでしたが……」
澪が長文の言葉を言い切ったあと、視線を大樹の方へと向ける、すると大樹は赤面になってテレ顔を見せた。これには爆笑の嵐が巻き起こる。澪も狙い通りというようなどや顔をしていた。そして澪はこっちが本命というような顔で、強くマイクを握る。
これには会場もざわめいた。俺もなんのことを言わんとしているのかは大体予想ついたが、やっぱり澪がどのようにかみ砕いて話すか気になっている。そして、澪は口を大きく開いた。
「では、本題に参ります。先月は翔斗お兄ちゃんの学校に坂東美玲お姉ちゃんが一定期間通わなくなり、ビースト内で救出作戦を決行しました。無事救出に成功し、翌日神殿ボスのハエトリグサ戦を行いました。大苦戦の中無事勝利をおさめ、こうして皆さんが集まっています。では、ハエトリグサ戦でのMVPを結人お兄さんお願いします」
「オーケー。では、ハエトリグサ戦のMVPを発表します。MVPは……」
結人さんが発表前の溜めを開始する。みんなもかなりの緊張感を放出させていた。まだ言わない。まだ言わない。1分2分3分。ものすごく長い時間を置く。そして、澪が頷いた時だった。
「MVPは。飛鳥翔斗くんです!」
予想通りだった。なんせ俺はラストアタックを決めた人だ。会場全体から拍手が送られる。自分でもわかっていたことなのに、なんとなく恥ずかしい。その後俺は結人さんから表彰状をもらった。今まで表彰されたことがなかった俺は、どんな理由なのか知らず涙を流した。
このパーティはとても豪華な料理が用意されていた。澪はというと、片っ端から一口ずつへずって美味しそうに食べている。こんな満足そうに食べる澪を見たのは初めてかもしれない。やがて澪は膨れ上がったお腹を叩いて、食い倒れていた。ちょっと調子に乗りすぎたようだ。
その後みんなで食休みをして、会場の跡片付け。落ち着いたタイミングでゲームにログインした。
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