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第2話 夢の中の嵐

「澪? 澪!!」

「あ、お兄ちゃん!!」

「澪。よかった。気持ち落ち着いたか?」

「うん! でも、まさかぼくもゲームできるとは思わなかったよ」


 どうやら落ち着いたらしい。あんなにもハイテンションにはしゃぎ始めたら、すぐに体力も消費しつくしてしまうだろう。だけど、今の澪には体力という概念が存在しないようで。ただ、それでも高揚感を抑えられたようでよかった。

 俺はいつに魔にか夢の中でも魔法が使えるようになっていた。何もない場所からパンと牛乳を生みだす。夢の中では一緒にパンを食べ牛乳を飲みを繰り返して談笑する。

 澪もこの時間がとても大好きらしい。平原の空は青く澄んでいて、雲ひとつない。時々雨が降ったりするが基本は晴れだ。だから、涼しい風に吹かれて食事をする。


「お兄ちゃん。実はね、お兄ちゃんがいない間にアリスちゃんとメルちゃんの3人で簡単なクエストをしたんだ。受注場所はソルダムって場所が近かったからそこで初級クエストをしたよ」

「おお。いいじゃないか。んでクリアできたのか?」

「できたよ。アリスちゃんが全体的にアシストしてくれたんだよね。あの子ものすごく頭いいよ」

「そうか」


 どうやら、ゲーム内でも上手くいってるようだ。なんだかこれからはこのような自慢が毎日続きそうだ。俺も彼の話は聞き飽きないので、逆によかったと思っている。夢の中の時間は俺が寝ている時間の間だけ。日中は基本話ができない。

 もうこんな毎日じゃなくてもっと本当の日常的なことをしたい。せっかくだから澪をいろんなギルドと交流させて、いろんな人のことを学んでほしい。この世界にはこんな人がいるんだってことをしかり覚えてほしい。

 澪が生前できなかったことは、多くの人と触れ合うこと。だからこれはいい機会にもなる。


「なぁ澪。明日、澪を俺が入ってるギルドに加入させようと思う」

「いいの?」

「もちろんだ」

「やったー」


 やっぱり、澪は俺たちのところにいさせた方がいい。本当は今すぐしたいけど、澪はこの時間を一番大切にしたい人だ。俺主導はあまりしたくない。だんだん風が強くなっていく。なんだかこれから嵐がきそうだ。

 俺は魔法で簡単な家を建てる。澪が言うには紋章を付与した時に結人さんからもらった家があるようだが、ここから少し離れた場所にあるらしい。俺の夢の中はまるでオープンワールドのような規模と化していた。

 俺と澪は建物の中に入る。さらに風が強くなる。壁が悲鳴を上げる。こんなことはこれまでになかった。澪が俺の身体にしがみつく。その腕はものすごく震えていた。澪もこの状況を経験したことがないようだ。


「お兄ちゃん。この家本当に大丈夫なの?」

「即興で作ったからわからない。一応強度を高めることは可能だけど、準備に時間がかかる」

「わかった。ぼくならどんな魔法でも省略できるから、ちょっと待ってて」


 そう言って、澪は家から出て行った。直後耳をつんざくような金属音が鳴り響く。遅れて俺が外に出ると、鋼鉄製の家が建っていた。これを澪が魔法で作った? そんなことあり得るはずがない。俺は状況を整理する。しかし、その答えが出るのはとても早かった。

 その家から澪が出てきたのだ。こんな家を作るなんて、どういう思考回路をしているんだ? 格が違い過ぎる。


「お兄ちゃん。あと3分で嵐がくるよ! 早く入って!」

「わ、わかった」


 俺は澪が作った家の中に入る。その内装もものすごく丁寧に作りこまれていた。即席の1LDK。そのままずっと生活できそうな家は、巨大な嵐を受け止める。壁に当たる風がうるさい。夢の中なのにだ。

 もしかしたら、現実と繋がってる? そんなことはないに決まってる。俺は澪に質問した。この状況がどうして起こっているのかを。だけど返ってきたのはわからないという言葉だった。この嵐は20分から30分以上続いた。

 風が落ち着き、2人で外にでる。空は快晴を取り戻していて静けさが平原を包み込んだ。


「怖かったね」

「だな」

「お兄ちゃんさっき時間見て見たんだけど。そろそろ起きる時間じゃない? たしか明日は学校が入学試験で休みなんだよね?」

「そうだ。だから、またすぐに会えるぞー?」

「うん。じゃあ、ビーストで合流したら早速出発しよ。もちろんみんなもいるんだよね?」


 澪は瞳を輝かせて俺を見つめる。それはものすごくワクワクが止まらなそうな満面の笑みだった。俺は今回ビーストで集合するメンバーを確認する。そして箇条書きするようにつぶやいた。


「えとな……。いるのは俺と澪と、バレンさんと、フォルテさん。ラミアさんにファリナさん。ケイ。アリスにメル。結人さん。うん、全員いるな。あと、ハエトリグサ戦から親交を深めているロゼッタヴィレッジのメンバーもヤサイダーが数人連れて来てくれるらしいぞ」

「ほんと!? 嬉しい! じゃ、またね。後で朝ごはんの内容教えて」

「おう!」


 だんだん意識が覚醒していく。目覚めた時にはスマホのアラームが大音量で流れていた。本当に澪との時間はあっという間だ。俺は自室から出てリビングに向かう。そして、ハムエッグとトーストを食べた。

 両親は共働きで早朝からいない。1人でログインするのが寂しくなった俺は、魔法具を使って景斗さんの家に移動する。そこには、せっせとパーティー準備をする景斗さんたちがいた。

応援よろしくお願いします!!!!!!!!!!!

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― 新着の感想 ―
色々大変ですね。これからの物語を楽しみにしています!
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