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Vivid・Memory〜彼らの巡礼譚〜  作者: 末広 オリン
一章「聖母と紺碧な空の下」
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第11話「四属性の攻略」


「なら四方向、別魔法ならどう対処する?」


 昼下がりの日差しが気持ちいい時間。

ご飯も終え、旅の話も一段落した直後、始まったのは魔法師との対人戦の復習と応用。

その後方でアルマは旅の準備のため、イソイソとテント周りを走っている。


「四元素は一つとして特徴が類似していない。

火は揺蕩い、水は流れ、風は漂い、土は留まる。

特徴を掴め、それぞれに沿った魔素の流れを理解して、それを打ち消す流れを作れ」


 無茶なことを言う。

火に関しては、嫌と言うほどやってきたから出来るけど、そのお陰で『揺蕩う』という印象が他の元素にまでこびり付いてくる。


 試しに打ってくるお婆さんの魔法を火のように打ち消そうとするも、水は形が変わるだけで絶対量は変わらず、風は流れを変えるだけで、土は何も変わらない。


「…どうやって打ち消すんですか、これ?」


 全くわからない。だからこそ咄嗟に聞いてしまった。するとお婆さんは端的に答えた。


「水は流れを切る、風は掻き消す、土は()く」


 間髪入れずに再度、四つの魔法を放つ。

それぞれの元素魔法はそれぞれ違う速度で、違う威力でこちらへやってくる。

 とりあえず直線的な火を掻き消す。

残った水、風、土なんだけど…観察するために火が来た方向へ足を動かした。


 解決策がサッと出てこないから、まずは直線的だった土と風は身体で躱し、残った一元素へと集中する。

最初に水。水は空中をウネウネ動きながらこちらにやってきた。まるで『ヘビ』のようなそれとお婆さんの言葉から想像できる法則は…

  

「なるほど、だから切るんですね」


 そう言って自分の視野を水そのものからその周囲、もっと言えばお婆さんと魔法の距離を見る。

 目を凝らせば、魔法を放ったお婆さんと水魔法は繋がっており、その流れは火を飛ばす時のような『加速』を付与する物ではない。


 それは水の向きを常に『調整』していた。となれば簡単、その調整している流れを根本から切るだけだ。

 火魔法を掻き消す特訓の中で、魔素の流れというのは異なる流れを置くと、流れの方向が変えることは上書きでわかった。


 それと同じ法則なら、『一の手順』もしくは側面から魔素の流れで切るのみだと思う。

ただ、僕は未だ発動条件がわからないそれを頼らずに、確信がないまま側面へと流れを作り出す。


 自分の憶測を信じる。


「まぁ正解だよ。んじゃ次のは威力をあげようか」


 操作性が無くなった水はそのまま地面に落ち、シミへと変わっていった。

水は操っている質量が変わらないからこそ、火のような有限性を配慮する必要がない。水魔法はもっとも自由な魔法だと感じる。


 そんなことを見ていると次は、何かに皮膚を切り裂かれた。


ーーー


 飛んできた何かは明確な殺傷能力を有していた。腕を掠めたそれは、いつの間にか四方八方からやってきた。

 数が少ないからそれを無理矢理躱すけど、第二波がさらに押し寄せてくる。こちらの逃げ道を潰すように。


「逃げ続けても死ぬ時は、呆気なく死ぬよ」


 お婆さんの声が耳に入ってくる。

茶化してるとも、心配してるとも取れる微妙な声色で話しかけてくるけど、それに応える時間がない。なんせお婆さん本人に追い詰められてるんだから。


「風は…掻き消す」


 教授されたその言葉を思い返す。

火とも水とも違うその特徴を、わざわざそう表現したことに熟考し、仮説を立てる。

 火は魔素の流れによる間接的操作、水は魔素の流れを常に自分と繋げる直接操作。


 なら今回は?

火は百近くまで作ることは可能だけど、百を優に超えているこの数は出来ない。

水も同じように作成や操作も出来るのだろうけど、直接操作を前提に置くと、この数を操作するのは流石にあり得ないと思う。


 思考しながら、なんとか第二波を超えるも身体が切り傷だらけになっていた。

そして、間髪開けずに第三波がやってきたのを他の魔法を思い返しながら凝視してやっと理解する。


「…わかりやすい表現ですね」


 その言葉を呟き、お婆さんが僕の火の魔法を打ち消したように、水の魔法を新しい流れで操作出来なくしたように、僕は目の前に魔素の流れを作る。

 ただ、第三波の数へと対応しなくてはいけないから、魔素の流れはその数と同等になり、自分の身体を包むほどだった。


「いいね、よく気づいた」


 その正体は魔素の流れを作り、そこへ自然と集まった空気をさらに圧縮して殺傷能力を付与しただけ。

 魔素の流れにより生まれた副産物だ。

多分、本気の風魔法は初見だと対応出来ない上に、緻密に作らなくてはすぐさま空気に戻ってしまう複雑な魔法だと思う。


「んじゃ最後だ」


 こちらがそう考えていたら、お婆さんが声をかけてきたと同時に死角から岩が飛んできた。


ーーー


 解決した火と水、そして風はどれも操作方法にちょっとした差があることがわかった。

それを踏まえて、咄嗟に躱したそれを再度分析しようとするが… 

 先程までは圧縮された土だったのに、今のは確実に岩だった。土だったらそのまま圧縮を解けばいいだけ、けどこの岩は自然に存在する。


 お婆さんの『()く』と言う言葉が、さらにわかんなくなった。

 解くというのは、土そのものを固めていた魔素の流れだと思ってたけど、今は全く必要なく流れの意図が読めなくなった。


 そうして身構えていると、ボコッと音がすると振り返ると頭上に浮かぶ岩の数が増えた。二つの岩は上下、前後、左右を自由に飛び回り、こちらの隙を伺っている。


 僕が火の魔法を放って岩そのものを壊すという手もあるけど、それは絶対、お婆さんは求めてる答えじゃない。なら魔法を扱う側の視点から、一から紐解くしか方法が残らなかった。


「あっぶな!」


 回避しながら、取り敢えずは冷静に状況把握する必要がある。

 まず第一に、岩は他のような作り上げる物ではなく、自然に存在して物体そのものを魔法で利用している。

と言うことは、岩そのものは魔法の力ではない仮説が前提になった。

 次に岩が操られている点、これは魔法的な操作だと思う。なら直接か間接かの2択なんだけど…


 一つは鞭のような複雑な軌道を描き、一つは直線を結ぶようにジグザグと移動する単調な挙動をしている。結論としては前者は直接、後者は間接だと思う。

 ならどちらも解除すればいい。

ただその回答は甘く、どちらかを止めたとしてもお婆さんは再度違う岩を操作することが出来ると思う。


 …なんなら今、振り下ろした岩をダガーナイフで砕くと適当に交換するように、そこら辺の岩を再度浮遊させることで目の前で立証してくれた。

そうすると出せる結論は、岩そのものを同時破壊。しかもズレれが生じたら、別の岩を操作する恐れがあるから、操作させながら破壊しなければならない。

 と言うことは。


「…()くってそういうことですか」


 この場合の解くは、魔素の流れではなくて、魔法師の意図に対する事。そんな単純な事実をわかれば、次に動く行動は決定した。


 間接操作の岩の進行方向の先に突っ立っていればいい。当たれば確実に殺せる、そんな死線の上に身を置けばいいだけだ。

 ただ一つ小細工をするのであれば、直接的に岩を操っているお婆さんが見ても、確実に殺せる位置にいること。


 そうなれば、二つは同じ物を狙ってるからこそ衝突して消滅する。

粉々になった岩を見届けながら、魔法を放った人の思い描く物を忠実に再現するのはとても自在な魔法だと、そう思った。

 ただ、とりあえず答えを出したのでご本人に聞いてみないといけない。


「これが正解ですか?」


 引き抜いたままだった刃物をお婆さんの首元に当て付け、そう問う。


「正解だ」


 ニヤッと笑い、手でナイフの刃を握り、そのまま力尽ぐでへし折ろうとするお婆さんを全力で止め

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