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04 夜這いなのかな

微エロです。

 両親と話し合って、気持ちが落ち着いてきた。自室に下がって就寝の支度をしてもらう。


 ちょっと鬱陶(うっとう)しい義務はあるが、ボンクラに一発やらせれば、出来ちゃって、それで終わりだ。(しま)いだよね。大したことでは無い。恋愛小説をたくさん読んだけど、あれは過激すぎる。あの描写はシッチャカメッチャカだ。妄想だよね。クンズゴグレツの絡みはだいぶ盛っている……はず。現実にはサッサッと終わる。その後は女王様で、私の天下になる。ちょっとした辛抱だ。うむ、大丈夫だ。乗り切れる。


 メイドさんが温かいミルクを持ってきてくれた。あー、休まるー。ベッドに潜り込むと直ぐに(まぶた)が重くなった。


……………………………………………

……………………………………………


むっ! なんだあ?。

あっ! あれっ? 身体に誰か覆い被さっている……のかあ? 気がするだけかあ? 重さは感じない……。えっ、だれ? 両親ではないよね。メイドさん?

待ちに待ってた夜這いかな? そんなものに憧れた私が馬鹿でしたー。ロマンス小説、読み過ぎましたー。許してー。声が出ない。手足が動かない。頭も動かせない。目も明けられない。盛られたかな? あのミルクだったかな?

助けてー! 襲われてるよ! 乙女の危機だー! だれかー!!!


意識がぐちゃぐちゃで、何が何だか分からない。なんか、くちびるに触れた? なになに? くちびるなの? えーっ、キスなのー? クチビルを奪われたー! チカンか? えっ あれっ、この匂い。どこかで嗅いだ? シトラス? ベルガモット? あー、あのボケナスか。トンカチだよね。名前は何だっけ? 出てこない。頭がグルグル回る。


あっあっあっ、なになに? ほっぺ、だめー。

そんなとこにキスしちゃイヤー。

首筋だめー。耳タブだめー。

あっあっあっ、来た来た来た来たー。

だめだからダメ。ダメダメダメー。

そこんとこダメ。ダメだよ。そこダメ。

デキちゃう、できちゃう、出来ちゃう……。

イっちゃう、いっちゃう、逝っちゃう……。


……………………………………………

……………………………………………


チュンチュンチュン……。

小鳥が鳴いている……?

明るいわね。あっ、朝なのね。まさか朝チュン?

あっ、あの香り……、あの人かな。

まさか、殿下に夜這いされたってことは……、無いよね。


恐る恐る薄目を開ける。眩しーい。

恐々(こわごわ)、左へ首をひねる。誰もいない。

徐々に、右に向く。いない。ホッとする。

夜着は……ちゃんと身につけてる。

ボタンに手を伸ばすと、ちゃんと全部、掛かっている。

よかった。

そうだよね。ゆめ、ユメ、夢だったんだよね。

絶対にユメだ。ゆめだ。夢だったんだ。よかったーあ。


下履きは……!!!!

あぁ!!!! 湿ってるよーお! おもらしだよーぉ!

就寝前に変なことを想像していた罰だな。

殿下となんて、不敬よね。


ということは、夢精? そりゃ男の子ね。

愛液、媚蜜、何ていうの?

女の子も同じ? 夢で逝ったから、夢イキかあ?


 そうだ。メイドさんが来ないうちに履き替えなければ……。

 慌てて起き出し、机の上の通学カバンを開ける。中から、いつも持ち歩いている予備を取り出す。履き替える。乾いているって、清々しい。湿ってしまったものは、丸めて紙袋に入れ屑籠へ捨てる。うむ。完璧! 完璧に隠蔽だーあ!


 メイドさんがノックして入ってきた。


「お嬢様、朝ですよー」


 何食わぬ顔で、支度をしてもらう。いつもと同じ朝が始まった。


         ◆


 夕方、馬車到着の気配がした。父だ。

 直に私の部屋にやってきた。扉を半開きにして頭だけ()れ、


「アイツと話をした。忘れろ」


 えっ! それだけ? 一回目と一緒だ。本当にいいんだろうか。呆れたというか、ホッとしたというか。よく分からない。


 二日後は月に一度のお茶会だった。婚約者同士の定例の顔合わせ。王宮から何も言ってこないので中止ではないはずだ。午後三時、いつも通りに登城する。私はフリフリのドレス姿で侍女とともに馬車に乗り、騎乗姿の騎士が二人、護衛する。王太子殿下の婚約者としての格式を保つ。


 いつものように侍従がバラ庭園のガゼボへ案内してくれる。丸テーブルには既に殿下が座っていた。いつものように、カーテシーを決める。相手はピクリとも動かない。そして右斜め90度の位置に腰を下ろす。殿下は何食わぬ顔、先日の婚約破棄騒動なんて無かったと言わんばかり。私は伏し目がち。いつもは、まっすぐに正面を向いているのだけれど……。左をチラチラ見てしまう。無言で時が過ぎていく。


 私が今まで捉えていた殿下のイメージは一体、なんだったんだ。同じ人なのだ。同じ人物のはずなのだ。それなのに、今ここで感じるオーラが丸で異なる。(まぶ)しい。あーあ、辛い。


 冷たいジュースの注がれたタンブラーが結露している。思い余ってストローを差し込んで飲んでみる。オレンジの酸味が美味しい。落ち着く。あっ、噛んでしまった。母に注意されているのに……。悪い癖。それもチカラを込めて……。空になる寸でのところで止めて、潰れたところを右手の指で元に戻す。付いてしまった紅を紙ナプキンで拭く。折りたたんでコースターの下に挟む。

 えっ! 笑った? 殿下が一瞬、口角を上げたよね。ちょっと悔しい。頬の温度が上昇したような気がした。

すいません。しょーもない言葉の羅列です。我ながら貧弱な語彙力に呆れます。

来て来て来て来て、サンタモニカは、桜田淳子でした。


お読みいただきありがとうございます。

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